入金情報の管理が煩雑、月末の作業量が多い、特定の経理担当者に負担が偏る——経理部門の業務のなかでも、多くの課題を抱える入金消込。手作業で行う場合は、データ改ざんのリスクもはらんでいる。

12月2日に開催されたTECH+スペシャルセミナー「バックオフィス業務のデジタル適応法〜バックオフィスからDXの礎をつくる〜」では、複数の銀行口座の入出金データを自社システムに連携し、入金消込作業を自動化するマネーツリーの技術とサービスについて、同社 ビジネスディベロップメント ディレクター 山口賢造氏が事例も交えながら解説した。

  • マネーツリー ビジネスディベロップメント ディレクター 山口賢造氏

入金消込作業が抱える3つの課題とその解決策

入金消込作業では一般的に、相手先から入金があった場合、経理担当者がインターネットバンキングへの入金情報と請求書の金額とに相違がないか照らし合わせて確認する。複数口座がある場合は、口座ごとにこの作業を行う必要がある。また、インターネットバンキングの出力情報を自社のデータベースに取り込む場合、形式の統一などの煩雑な業務が発生するだけでなく、入金情報に手作業で変更を加えることができるため、データ改ざんのリスクもある。たとえ故意ではなかったとしても、大きな問題につながってしまう。

山口氏はこうした入金消込作業の実態について「間違いのないように神経をすり減らしながら細かい作業を進めると膨大な時間が掛かる。入金金額の突合作業は、正確性と速さが求められ、目視で行う場合、属人的なスキルをもった担当者に負担が掛かってしまう。重要ではあるが作業量が多いというのが現実」と説明したうえで、入金消込作業が抱える課題を以下の3つに整理する。

  1. インターネットバンキングからデータをダウンロードすることで入金情報の加工が可能になってしまう
  2. 作業効率が担当者の事務能力に依存する
  3. 手作業で行う量が膨大でリソースが追いつかない

そして、これら3つの課題は、入金データを自動で取り込むことで解決できるという。特に、卸売業、資金移動業、暗号資産交換業など、毎月の入金件数が多い場合は、大きな導入効果が期待できる。また、複数の口座をまとめて管理できるため、不動産業や全国に支社がある企業など、複数の口座や支店を利用している場合にも有効だ。さらに、入金データの自動取り込みによって実現できることは、経理業務の効率化にとどまらないという。

「手作業が発生しないため、改ざんや漏洩のリスクを減らせるほか、二重請求や請求ミスなどといった人的ミスも防止できる。さらに、未回収金などをいち早く把握することで、会社のキャッシュフロー改善の準備を迅速に行えるようになる。また、データを活用することで、迅速な経営データの見える化にもつながる」(山口氏)

入金消込作業のペインポイントを解決するマネーツリーの技術

これを実現するマネーツリーのテクノロジーが、「Moneytree LINK」だ。Moneytree LINKは、2500以上の銀行口座(個人・法人)、クレジットカード、電子マネー、ポイントカード・マイル、証券口座の取引明細が1つに集約された金融データプラットフォーム。さまざまな業界の個人・法人で活用が進んでおり、経理業務においては、個人・法人の明細データの自動取り込みなどを企業のシステムに提供する。

「銀行のデータを取得するには電子決済等代行業として登録する必要がある。当社は2018年に登録済。電子決済等代行業者のマネーツリーが事業者と金融機関のあいだに入ることで、事業者に対して金融機関の残高などのデータを提供することが可能。事業者が金融機関のデータを取得し利用しようとすると、個別に全国の銀行一社一社とAPIの仕様確認や金額の合意を行わなければならず、複雑な業務が伴う。

しかし、Moneytree LINKを利用するだけで、各銀行との個別交渉は不要になり、さまざまな金融機関の明細データも、集約された1つのAPIで提供される。セキュリティが担保され、追加の契約もない状態で、自社サービスの開発に専念することが可能。これがMoneytree LINKを活用するメリット」(山口氏)

さらに、マネーツリーは、企業の入金管理や入金消込に特化した自社利用専用のAPIとして「LINK API Private」を提供している。LINK API Privateを通じて全国の銀行の個人・法人口座から明細データが取得できるので、これらを自社システムに連携すれば、複数ある口座のデータを自動で取得して、日付、金額、取引内容に含まれる振込人名義などで請求データと自動突合できる。24時間、365日の稼働が可能となることもポイントだ。

「従来は、複数口座に入金があった場合、その都度突合・消込をしていたと思うが、LINK API Privateを活用することで、この確認作業がなくなり、ロジックを組めば自社システム内で入金消込も自動で行われる。担当者は、消込されたデータを確認するだけでよいので、APIに接続するだけで、手作業を大幅に削減することが可能」(山口氏)

特殊なフローにも対応、入金確認から消込に掛かる時間を1/3に

続いて山口氏は、Moneytree LINKおよびLINK API Privateの導入事例を紹介した。

請求代行業務を手掛けているある企業では以前、月に6000ほどの入金確認を行い、3500の請求書と突合していた。一部デジタル化はしていたものの、既存システムではデータの取り込みに限度があったり、銀行の形式に対応していなかったりと、手作業による対応が発生していたという。

そこで、基幹システムの自社開発プロジェクトが発足した際、自動経理システムの導入も合わせて検討することとなった。しかし、同社特有のフローが存在したために、既存の入金管理システムには合致するものがなかった。そうしたなかでたどり着いたのが、LINK API Privateだった。

同社では、取引先ごとに振り込み用のバーチャル口座を設定し、同社の銀行口座に振替している。この銀行がLINK API Privateを介して入金管理システムに連携されている形だ。以前は、2名の経理担当者が手作業で確認していたが、LINK API Privateの導入後は、自動で突合されるようになり、経理担当者の手作業は、請求金額に対して入金金額がマッチしないときなどの不備対応のみとなった。

山口氏は「事業に伴う特殊な請求フローが原因となり自動化が難しかった部分に、LINK API Privateがお手伝いさせていただいた形。入金確認から消込に掛かる時間は1/3になった」と、その効果について説明する。現在同社では、業務効率化によって新たに生み出された時間を活用し、営業部門と連携した入金・請求後のアクション強化、未回収金に対するリスク・マネジメント強化を進めている。なお、同社がAPI連携に要した時間は約1カ月ほどだったという。

入金消し込みの自動化から経理DXの第一歩を

今回の講演内容を踏まえ山口氏は、「経理DXの第一歩を入金消込の自動化から始めてみては」とアドバイス。「担当者の事務能力に依存する手作業を減らし、経理業務の質を高めるため、入金消込の自動化をお手伝いしたい」とメッセージを送った。

なお、LINK API Privateを利用するには、まず専用サイトから、技術概要が確認できるパートナーサイトへのアクセスをリクエストしてほしい。見積りを希望する場合などには、コンサルタントによるミーティングを実施することも可能となっている。

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