テクノロジーの進化によりこれまでになかったデータを収集・分析可能になった。そしてこの結果、ビジネスのかたちは大きく変わり始めている。データの利活用により製品やサービスの在り方が再定義される中、企業は何を検討し、どのような行動を起こすべきだろうか。2019年12月13日にマイナビニュースが開催した「マイナビニュースフォーラム2019 Winter for データ活用」では、この問いに対するヒントを語れるスピーカーが集結した。本稿ではおよそ400名が来場した同イベントより、顧客とのタッチポイントについて再定義したMacbee Planetのセッションをダイジェストでお届けする。
解約理由には、サービスの抱える課題が凝縮されている
ビッグデータとテクノロジーを取り入れたコンサルティング ソリューションを武器に、企業のマーケティングや事業を支援するMacbee Planet。同社は、2016年から2019年にかけた3年間で売上成長率551%という飛躍的な成長を遂げており、注目のベンチャー企業として話題を集めている。
そんな同社のセッションでは、Macbee Planetのエバンジェリストである佐野 敏哉 氏が登壇。「サブスクの解約理由から見る、解約者の驚愕の真実」と題し、「解約 : Cancel」というタッチポイントの重要性を説いた。
新聞や保険、サブスクリプション型のITサービスなどを利用する中で、誰しも一度は、契約を解約したことがあるだろう。この解約は、サービス提供側からすれば顧客との最後の接点となる。佐野氏は講演の冒頭、「解約理由にはサービスの抱える課題が凝縮されています。」と述べ、この解約というタッチポイントを強化することが、サービスのスケールには欠かせないと語った。
同氏が言う「強化」は、大きく2つの目的を持っている。1つは、顧客理解の深化だ。顧客一人あたりの「生涯にわたって得られる利益」であるLTV(Life Time Value: 顧客生涯価値)が重要視される今日において、顧客に選ばれ続けるかどうかは、サービスのサステナビリティ(持続可能性)を大きく左右する。顧客が解約する、あるいは競合サービスに流れてしまうならば、しっかりその理由を突き止めてサービスへ反映せねばならない。そのために必要なデータを、解約というタッチポイントを強化して収集するわけだ。
もう1つは、解約ページにおける"解約防止率の向上"である。「解約者」や「解約ページに訪れたが解約しなかった顧客」の傾向を明確にできれば、1人ひとりの解約理由に合わせて、継続利用したくなるような情報を提示することができる。
佐野氏は、「最近では、新規顧客やシェアを"獲得"するための取り組みではなく解約者の理解に基づいたサービス改善や解約ページの改善にリソースを注いだ方が、利益上では高効率だという調査結果が出始めています。」と述べ、「獲得」と同等かそれ以上に「解約」というタッチポイントを重視すべきだと強調した。
人らしさのあるチャットボットが、解約者の気持ちを吸い上げる
先に挙げた2つの目的を達する上では、顧客の情報を引き出すための仕組みが解約ページに必要だ。ここでMacbee Planetが提案するのが、同社のWeb接客ツール「Robee」が用意するチャットボットの実装である。
「Robee」では、わずか数行のコードを設置するだけで、解約ページ上にチャットボットの仕組みを実装することが可能。このチャットボットは、後述する技術により、まるで人と接しているような対話体験を顧客へ提供することができる。
「世の中にある解約ページは、多くがアンケート形式と呼ばれる静的なページ設計を採っています。これを対話形式に変えるだけで、アンケート形式と比べて驚くほどに有効回答率を引き上げることができるのです。当社では、クライアント様の許諾を得ることで、チャットボットを設置頂いている全ページのユーザー動向をデータとして集積しています。この膨大なデータに基づいて常に新たな対話シナリオを開発する、そしてこれを常にチャットボットへ反映する。このサイクルによって、ユニークな回答を行う顧客に対しても、チャットボットが適切に受け答えできるようになっています。」(佐野氏)
佐野氏が触れた「適切な受け答え」は、チャットボットの効果を左右する重要な要素だ。チャットボットによる営業活動の成果を検証した米国テンプル大学の実証実験では、対話する相手がロボットだと把握された場合(=人間ではないと把握された場合)、そうでなかった時と比べて79.7%も営業成果がダウンすることが示されている。
「当社では"人らしさ"に重きを置いてチャットボットを開発しています。一般的なチャットボットではAIとチャットボットの間で言語をやり取りして回答を出力するのですが、翻訳の過程でどうしても不自然な日本語となってしまいます。我々のチャットボットは、先述した膨大なシナリオに沿った回答をパラメーターとして設定しています。シナリオに無いもののみ翻訳を介する仕組みにすることで、回答内容から受ける日本語の違和感を最小化しているのです。また、応答速度についても、まるで人間が手入力しているかのような時間差で回答を行うIntelligence Responseという独自機能を実装しています。」(佐野氏)
分析結果に基づいたPDCAを支援
Macbee Planetは、ここまで触れた「Robee」やチャットボットをツールとして活用して、企業のマーケティング活動を支援している。同社の飛躍的な成長から、市場において大きな支持を得ていることは明白だろう。では、具体的にどのようなソリューションを提供するのだろうか。
佐野氏は、「単にデータを収集するだけでは、成果には繋がりません。正しい分析を行うこと、これにより洞察を得ることが、意味のあるアクションを生むのです。当社では、リテンションマーケティングにおいて必須となるデータの収集、分析、改善点の洗い出しまでを、一貫して提供します。」と説明。解約防止を挙げて具体例を続けた。
「"毎日よく使う" "たまに使う"などのサービスの利用状況に応じて顧客をセグメント化し、解約との因果関係を導き出すクラスタ分析。ここで切り分けたセグメント内、セグメント間での属性について分析するコホート分析。どの競合へ乗り換えたのか、その理由は何かを分析するチャーンイン・チャーンアウト分析など、様々な軸から、お客様の解約ページ上で発生した会話データを分析します。そうして得た洞察を、解約理由やサービスの課題など体系化した形式にてクライアントへレポートとして提出。並行してチャットボットのシナリオ改善も行うことで、サービス水準と解約防止率の双方を、お客様と並走して引き上げていきます。」(佐野氏)
終わりに佐野氏は、「当社のチャットボットを設置しているページの解約防止率は、全体として11.69%となっています。ひと月に解約しようと思った人が10,000人いるとしてその内の1,000人以上が解約するのを止めているわけですから、かなりの高水準だと言えるでしょう。同じ規模の人数を新規に獲得しようと思うと大変なコスト、工数がかかるはずです。サービスを担当する方にはぜひ、サービスの継続性や利益を高めるための重要なタッチポイントとして、解約という場を捉えて頂きたいですね。」と述べ、講演を締めくくった。
[PR]提供:Macbee Planet