教育サービス事業、教育コンテンツ事業、教育ソリューション事業、医療福祉サービス事業などを幅広く展開している学研グループ。その中にあって、物流・倉庫業務を手がけているのが(株)学研ロジスティクス (以下、GLG)です。1992年の創業以来培ってきた経験とノウハウを活かし、現在ではグループ以外にも300社以上にロジスティクスサービスを提供しています。同社では2017年から、主に夜間の倉庫業務のコスト削減を目的にCTCシステムマネジメント(株) (以下、CTCS)のリモート運用サービスを採用しました。委託されたCTCSでは業務の品質向上のため、RPA(ロボットによる業務の自動化)を導入し、繁忙期にも対応できる体制を整えています。

リモート運用サービスは、システムの監視・障害対応などのオペレーションや、インシデント管理・ドキュメント管理などのシステム運用を、CTCSがネットワーク経由で24時間365日代行するサービスです。GLG以外にも、様々な企業がシステム運用のアウトソーシング先として利用しています。

リモート運用サービス導入の背景

●物流業務の事前準備として、夜間のデータ処理が必要

●夜間専任スタッフの体制・人件費を見直したい



リモート運用サービス導入効果

●夜間スタッフが不要になり、30%の人件費削減

●夜間専任だったスタッフの労働力を、別業務へ割り振り

CTCSのRPA導入目的

●リモート運用サービスの業務効率化により、より高品質なサービス提供を目指す

【課題】夜間業務に欠かせない習熟度と人件費削減というジレンマ

GLGでは2007年、物流業務の効率化にあたってWMS(倉庫管理システム)を導入しました。これは販売店および代理店から入った注文データに基づいて、同社が有する4つの倉庫から在庫を引き当て、納品書や送付状を準備したり、倉庫の作業者向けに自動でピッキングリストを作成したりするもので、スピーディかつ正確な在庫管理・商品の入出庫には欠かせないシステムです。

学研グループから営業時間外に入ってくる出荷オーダーに対しても迅速な対応を取れるよう、同社では19時~翌朝7時まで、夜間スタッフ2名を配し24時間体制を敷いていました。夜間に入ってきた出荷オーダーの取り込み・引き当てなどの処理を行って帳票を印刷し、翌朝すぐに出荷作業が始められるようにする準備作業の他、当日の出荷実績データや在庫データのバックアップといった一日を締めくくる保守作業などが、夜間の主な業務です。

4名の専任スタッフがローテーションで担当していましたが、この人員体制を見直し、より生産性向上につながる業務にシフトできないかというのが、ひとつの課題となっていました。しかし商品によって、あるいは倉庫によっては引き当て処理のパターンが異なっているものもあるため、業務に習熟したスタッフを簡単に異動できないというジレンマが生じていました。

この問題を解決するため、同社が注目したのがリモート運用サービスの導入でした。

【検討・選定】「業務を習得してから運用に落とし込む」安心感・信頼感が選定の決め手

GLG ソリューション本部 システム部部長の乙訓 公雄氏は、リモート運用サービスのパートナーとしてCTCSを選んだ理由を、次のように語ります。

株式会社学研ロジスティクス ソリューション本部
システム部 部長 乙訓公雄 氏

「社内の都合でリモート運用の開始まで3ヶ月ほどしかなかったため、円滑かつ確実に業務を移行する必要がありました。しかし移行対象の業務を鑑みると物流業の専門性もあり、容易ではないと考えていたのですが、 CTCSに問い合わせたところ、担当者からは『リモート運用を行う部門に一定期間常駐して業務を習得したうえで、自社の運用担当者に手順を落とし込んでいきます』と、当社が抱いていた不安を払拭してくれるような回答が得られました。しかも常駐することは初期メニューに組み込まれているということでした。現場に足を運び、我々の業務を理解してくれることを前提としている 、というのは安心感がありましたね。確実・円滑な移行・運用に向けての提案も具体的で手厚く、CTCSを委託先として決定しました」

【導入と効果】約30%の人件費の抑制に成功効率アップで労働力の有効化も実現

リモート運用サービスの準備は、2017年6月から始まりました。CTCSからは、担当となったサービス開発本部 運用サービス部 部長代行の鈴村 健太氏が現場を訪れ、実際に夜間勤務を体験しながら業務フローを記録・整理していきました。

「まずシステムの画面1枚1枚をキャプチャし、Excelに落とし込んで従来の手順を整理しました。そして何度か夜勤に入って実務を経験しながら、それが実際の運用にきちんと当てはまるかを確認し、手順の精度を上げていきました」

運用がスムーズ に流れるようにするため、作業手順の入れ替えを提案したり、WMSの画面からリモート運用では使用しないボタンを削除した専用インターフェイスを用意してもらったりするなど、従来のプロセスやシステムを「リモート運用」という視点から客観的に見直す作業は、GLGの協力を仰ぎながら進められました。 こうした準備作業はリモート運用開始の直前まで続き、同年2017年9月、いよいよCTCSへ業務が移行されました。GLG ソリューション本部 システム部 運用管理課課長の島﨑 康裕氏は次のように説明します。

  • (左)CTC システムマネジメント株式会社 サービス開発部 運用サービス部
    部長代行 鈴村健太 氏
    (右)株式会社学研ロジスティクス ソリューション本部 システム部 運用管理課
    課長 島﨑康裕 氏

「夜間業務が廃止されたことにより、その分売上につながる業務に時間と労働力を割り当てられるようになっています。人件費も約30%抑えることができました。 今回の実績を踏まえ、他の業務についてもリモート運用を選択肢の一つとして捉えられそうです。アウトソーシングで効率化が進めば、弊社が本来なすべき業務に、さらに集中できるのではないかと思っています」

【RPAの導入】積極的にRPAの導入を進め、迅速でミスのないサービスを目指す

リモート運用サービスの提供開始は、CTCSにとって、次なるゴールへのスタート地点となりました。そのゴールとは、委託された運用業務にRPAを採り入れ、サービス品質のさらなる向上をはかることです。

CTCS サービス開発本部 運用サービス部 第5課 課長の塩見 直行氏は、自社が受託業務のRPA化に取り組む意義を、こう説明します。

CTCシステムマネジメント株式会社 サービス開発部
運用サービス部
第5課 課長 塩見直行 氏

「当社では長年、数十社のお客様に様々なかたちでリモート運用サービスを提供しており、業務手順のベストプラクティスをつくる知見・ノウハウを蓄積しています。それをRPAのフローづくりやプログラミングに活用することで、運用をお任せいただいているお客様によりスピーディかつミスのないサービスをお届けすることができると考えています 」

GLGから受託した業務のRPA化には、人間がGUIで行った動作を覚えて踏襲する記録式ツールの簡便さと、シナリオ設定で複雑な分岐にも対応できる柔軟さを兼ね備えた国産のRPAツール「パトロールロボコン」(開発:コムスクエア)を採用しています。移行作業は引き続き鈴村が担当し、ここでも現場での実務経験を活かしています。どの作業がRPAに向いているか、どの作業が簡単に移行できるかは、その作業を実際にやったことがないと判断できないことなので、現場での実務経験は必要不可欠でした」

【効果と今後】RPAで作業工数を85%削減、ツールや人を適切に使う「オーケストレーション」が重要

CTCSが関与する前には、一晩で700回あったシステムのGUI操作回数は、リモート運用のためのプロセス見直しを進める中で大幅に削減されていましたが、RPA化によりさらに抑制することに成功、CTCSが携わる操作回数はリモート運用開始時の400回と比較して85%減の60回にまで減らすことができました。その操作内容も主にRPAで処理されたデータを確認して「OK」ボタンをクリックするだけというレベルにまで簡素化されています。ヒューマンエラーの可能性や、万が一、プログラムに不具合があった場合のことを考えれば、現時点ではこうした人間とRPAの組み合わせが最適だと、塩見は言います。

「これまで人間がやってきた業務をRPAだけで完結させることは難しく、人間による確認作業も他のツールも、まだまだ必要とされています。当社ではそういったものすべてを上手く『オーケストレーション』し、パッケージ化された高品質ソリューションとして提供することで、お客様の業務効率化やコスト削減に貢献していきたいと思っています」

こうしたCTCSの姿勢を、GLGの乙訓部長は次のように評価しています。「堅実な運用力とRPAをはじめとする新しい技術への取り組み続けるCTCSと、今後もよきビジネスパートナーとして共にチャレンジしていきたいです」

あらゆる判断をAIに委ねる日がくるとしても、それはまだしばらく先のことでしょう。それまでCTCSは、最新技術への知見を深め、ノウハウを蓄えつつも、常に人間の目線から考え、信頼を得られるパートナーでありたいと考えています。

当事例の動画はこちら


関連リンク:ソフトウェアロボットソリューション

※本記事は2018 年2 月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。

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