携帯用のMy Passport Studio、据置用のMy Book Studio Editionとウエスタンデジタルの外付けハードディスクで快適なMac環境を手に入れた私の次の課題は、ビデオ編集で使用するハードディスクの高速化です。RAID機能を搭載したモデルを使用すれば、セミナーや大学の講義で愛用しているMacBook Proでも本格的なビデオ編集ができそうですが、Macに最適なRAID対応の外付けハードディスクはあるのでしょうか?
ビデオ編集作業を快適に行うためには?
大学の授業では、映像関係の講義を行うことがあります。私のMacBook Pro(2.4GHz Intel Core 2 Duo)でもPhotoshopなどを利用した静止画処理であれば十分に作業を行うことができますが、ビデオデータをストレスなく処理するには少し無理があります。これを改善するためには、データへのアクセスを速くすることが必要です。データを保存するハードディスクをできるだけ高速なものにすれば、ビデオ編集作業を快適に行うことができるからです。しかし、MacBook Proは内蔵ハードディスクの増設ができませんので外付けハードディスクを高速化するしかありません。方法としては、RAIDシステムの導入や高速インタフェースの使用があげられます。
My Book Studio Edition IIならRAIDの導入も簡単
一般的にRAIDというとデータの保護やシステムダウンの防止を目的に導入されるイメージがあると思いますが、RAID 0(ストライピング)というモードがあり、複数台のハードディスクにデータを分散して書き込むことにより高速化を実現できます。しかしRAIDシステムの導入となると躊躇してしまう方が多いのではないでしょうか。タワー型のMacProであれば内蔵ハードディスクの増設も簡単でRAID設定もそれほど難しくありませんが、MacBook ProでRAID環境を利用するとなると、外付けハードディスクに頼らざるを得ないためかなりハードルが高く、私自身もついつい後回しにしてきました。しかし、サブマシンであったはずのMacBook Proがメインマシンのようになりつつあり、MacBook Proでなんとか手軽にRAID環境を利用したいと考えるようになりました。
そんな時、My Book Studio Edition IIのリリースは既にMy Book Studio Editionを活用していた私にとってタイムリーな朗報でした。2台のハードディスクを内蔵してRAID 0モードを搭載し、かつMacと調和が取れたデザインは、まさに私の希望にぴったりの製品だったのです。
My Book Studio Edition IIが優れているのは、初期設定で既にRAID 0に設定されており、かつはじめからMac用としてフォーマットされている点です。RAIDの設定がよく分からないという方にとって、パッケージを開けてMacに接続するだけで使える簡単さは、うれしい仕様といえましょう。余計なことを考えずにすぐに高速な環境が使えるというのは、内蔵ハードディスクの増設が不可能なMacBook Proユーザーには本当に助かります。
もちろん内蔵ドライブでRAIDを構成するのとは異なり、状況に合わせてデータを異なる環境に接続して利用するといった可能性が出てきます。従来の外付けハードディスクの利便性にRAID機能が加わったことで、映像関係ばかりでなく3Dや大量の静止画処理などに威力を発揮するのではないでしょうか。いや、これからの外付けハードディスクは大容量のRAIDシステムが主流になるのではないかと私は確信しています。
ちなみにMy Book Studio Edition IIは、データ保護を目的として2台のハードディスクに同じデータを書き込むRAID 1 (ミラーリング) に設定することも可能です。
Macとの接続は高速インタフェースで
次にインタフェースですが、RAID 0の高速性能を活かすためには、超高速のeSATAまたはFireWire 800での接続が理想的です。FireWire 400やUSB 2.0では、本来の性能を活かすことができません。それぞれのインタフェースの最大データ転送レートを比較しただけでも、スピードの違いは一目瞭然です。
■インタフェースの最大データ転送レート
eSATA | 3Gbps(理論値) |
FireWire 800(IEEE1394b) | 800Mbps(理論値) |
FireWire 400(IEEE1394a) | 400Mbps(理論値) |
USB 2.0(USB 2.0 High-Speed) | 480Mbps(理論値) |
My Book Studio Edition IIは、一般的なFireWire 400とUSB 2.0に加えてeSATAとFireWire 800にも対応していますので、私のMacBook Proの場合はFireWire 800でそのまま接続することができます。なお、ExpressCardのeSATAカードが販売されていますので、eSATA 接続によりRAIDシステムの性能を極限まで使い切ることもできます。
このように、4種類のインタフェースに対応したMy Book Studio Edition IIは、多くの外付けハードディスクがUSB 2.0のみ対応している中にあって、大変重要なポジションにある製品といえます。
ストレスの無いビデオ編集を実現
実際にMacBook Proに接続し、Final Cut Proでビデオ編集をしてみたところ、結果は想像以上でした。FireWire 800経由でMacBook Proに接続したMy Book Studio Edition IIのパワーは絶大で、MacBook Pro単体での編集作業には戻れなくなりました。Apple Motion 3で凝ったパーティクルやフィルタ処理を組み合わせても、ストレスはありませんでした。接続インタフェースが自由に選べる上にMacに接続してすぐにスムーズなビデオ編集、および複雑な3Dオブジェクトや特殊効果のレンダリングが可能な点は、非常に満足しています。容量も2TBありますので、通常の処理で困ることはありません。これで今期からの授業では、映像関係の講義をスムーズに行うことができそうです。また、ビデオ編集用だけではなく、多くのアプリケーションがキャッシュエリアを指定できますので、作業用エリアとしてこの高速外付けハードディスクを積極的に指定することでパフォーマンスを向上させることができます。
最後に、ハードディスクという性質上、逃れることができない発熱問題に関して触れておきましょう。これまでクリエイター向けのハードディスクは大容量で高速だけれど発熱が多く冷却ファンの音がうるさいといった製品がほとんどでした。ハードディスクは高速になればなるほど熱を発生しやすくなり、負荷の高い作業が続くとトラブルが起きやすくなるので仕方がありません。しかし、My Book Studio Edition IIは、低発熱/静音が特長のウエスタンデジタルのGreen Powerドライブを搭載しており、ケースもドライブに合わせて専用で設計しているのでRAIDタイプにもかかわらず冷却ファンを装備していません。そのため、一般的なドライブと比べて少ない電力で静かに運用できる環境に優しいハードディスクになっています。
My Book Studio Edition IIは、高速なインタフェースとRAID機能、低発熱ドライブ、専用ケースを組み合わせることによって従来の問題を解消したクリエイター(特に個人の)にとって理想的な製品と言えるでしょう。おそらく、搭載するドライブの特徴を完全に把握し、かつそれを安定して供給することができる製造元のメーカーでなければこのような製品は生み出すことができなかったのではないでしょうか? My Book Studio Edition IIは、単にデザインの良いRAIDタイプの外付けハードディスクというだけではなく、これまでとは異なったコンセプトの製品であり、さまざまな意味でクリエイターに快適な作業環境を提供してくれるはずです。