前回は、ヤマハルータに搭載されている「LANマップ」機能を紹介しました。ネットワーク構築後の保守フェーズでは、トラブルによるネットワーク停止は、たとえ一瞬でも避けなければなりません。そのためには、トラブルの発生を予見するとともに、万が一トラブルが発生したとしても、早期に検知し対処することが重要です。日々のネットワーク状態の把握や、トラブルの早期発見には、LANマップをはじめとした「ネットワークを見える化」することは、強力な武器となることでしょう。
今回からは、これまで取り上げてきたヤマハルータ「RTX830」に、ヤマハのシンプルL2スイッチ「SWX2100」を接続して、どのようなことができるかを見ていきましょう。まずは、「SWX2100-5PoE」の特徴を紹介します。
L2スイッチとL3スイッチ
そもそもスイッチは、その機能によって、L2スイッチとL3スイッチに分類されます。L2、L3はそれぞれ「レイヤ2」「レイヤ3」のことであり、OSI参照モデルに基づいて階層化されたレイヤを指しています。
「レイヤ2 = データリンク層」における通信単位は、「フレーム」と呼ばれるデータ列です。一般的に、ネットワーク上を流れるデータ列のことを「パケット」と呼びますが、フレームは、「データリンク層を流れるパケット」のことを言います。フレームには、送信元と送信先のアドレス情報が含まれており、これらの情報を使うと、端末同士の相互接続が可能となります。
現状では、データリンク層といえばイーサネットのことを指し、イーサネットでやりとりされるデータの最小単位を「イーサネットフレーム」と呼んでいます。イーサネットフレームには、MACアドレスという識別子が含まれており、そのMACアドレスを使用して相互接続が行われます。つまり、L2スイッチは、データリンク層(レイヤ2)において、フレームに含まれるアドレス情報を基に送信先を判断して転送を行う装置のことです。
一方、「レイヤ3 = ネットワーク層」においては、各端末にレイヤ3用のアドレスが割り当てられ、相互に接続されているネットワーク内において、各端末を識別可能な状態とすることができます。この、「レイヤ3用のアドレス」で、現在、最も普及しているのはIPアドレスです。
つまり、L3スイッチとは、IPアドレスを用いたルーティングを行える装置となります。さらに、L3スイッチにはVLANを設定することが可能で、L3スイッチではVLAN間通信を行うことも可能です。
SWX2100-5PoE
さて、シンプルL2スイッチ「SWX2100-5PoE」は、L2スイッチとしては基本的な機能を備えています。5ポートですので、比較的、小規模なネットワーク向けの製品と言えます。2017年1月に発売されました。
このL2スイッチの主な特徴は以下の4つです。
IEEE 802.3at対応
「IEEE 802.3at」とは、ネットワーク接続されている機器に電力を供給する技術の標準規格です。特にIEEE 802.3atは、消費電力が大きな機器を想定して、1ポート当たり最大30Wの電力供給ができます。SWX2100-5PoEでは、1個のアップリンクポートを除くすべてのポートでIEEE 802.3atに対応しています。
IPカメラネットワークに最適なPoEスイッチ
IPカメラネットワークとの接続を想定して、ポートから電源供給を行うことができます。さらに、ヤマハルータと組み合わせると、遠隔地からのネットワーク監視や給電状態の見える化を実現でき、遠隔からPoE給電の操作により受電機器を復旧させることも可能になります。
「LANマップ」機能に対応
LANマップに対応しているRTX830などのヤマハルータと組み合わせると、LANマップ機能を使用することができます。LAN内のネットワーク構成をわかりやすくグラフィカルに表示するもので、これはもうおなじみの機能ですね。
RTX830のWebGUIにログインして、LANマップを開くと、以下のように表示されます。「スイッチの設定表示と保守」というボタンがあることからも、RTX830からSWX2100の保守ができることがわかります。
CONFIGスイッチによる簡易設定
本体前面にあるCONFIGスイッチで、起動時の動作を指定できます。指定できるのは次の5つです。
- L2MS(Layer2 Management Service)機能
- フロー制御
- Auto MDI/MDI-X
- ループ検出機能
- 低消費電力モード
例えば、CONFIGスイッチが以下のようになっている場合は、「ループ検出機能」と「低消費電力モード」をONで起動します。
今回は、ヤマハのシンプルL2スイッチ「SWX2100-5PoE」の特徴を紹介しました。次回も引き続き、ルータRTX830とL2スイッチ「SWX2100」を接続したネットワークを使い、RTX830からSWX2100を保守する方法を解説します。さらに、このネットワークへのVPN接続も試してみたいと思います。