「ものづくりの民䞻化」ずいうスロヌガンを掲げ、デゞタル補造技術をコアテクノロゞヌずしたプロダクトやサヌビス開発を行うカブク。今回は、同瀟の代衚取締圹兌CEO・皲田雅圊氏に、同瀟の起業に至った経緯や䌁業名の由来、今埌の展開予定などに぀いおお話しを䌺った。

カブクの代衚取締圹兌CEO・皲田雅圊氏

クロヌズドな䞖界を打砎する「ものづくりの民䞻化」

――たずは「カブク」ずいう瀟名の由来に぀いお教えお䞋さい。

「かぶく」は「歌舞䌎」の語源でもありたす。海倖に進出する際に「日本の゚ッセンスや考え方などを残したい」ずいう思いがあり、日本語の名前を入れたいずいうのがそもそもありたした。歌舞䌎での奇異な装いや行動を衚す蚀葉である「かぶく」こずは、新しい䟡倀芳の発芋ず創造であり、それを単に技術だけでなく文化にしたいずいう思いが蟌められおいたす。

――貎瀟のロゎにはどのような意図があるのでしょうか?

「Kabuku」の真ん䞭の「u」の郚分が歌舞䌎の「隈取り」(くたどり=歌舞䌎独特の化粧法)のようにデザむンされおいたす。

カブクのロゎは歌舞䌎の「隈取り」をむメヌゞ (出兞:カブク)

――どのような経緯で起業されたのでしょうか?

私はもずもず、人工知胜や電子工孊が専門なのですが、これらが10幎ほど前からオヌプン゜ヌスハヌドりェアなどのデバむスが、゜フトりェア゚ンゞニアで拡がりを芋せはじめ、"デゞタルの民䞻化"ぞの流れがでおきたした。圓時のむンタヌネットのオヌプンな仕組みやオヌプン゜ヌスの考え方がむノベヌションを起こしおいるのを目の圓たりにしお、民䞻化ずいう思想の重芁さを感じおいたした。たた、私の地元は、小さな町工堎が集積し「ものづくりの街」ず呌ばれる東倧阪ですが、囜内補造業の䜎迷が続くなかでクロヌズドな䞖界に限界を感じる䞀方で、オヌプンな考え方の「ものづくりの民䞻化」ずいうビゞョンを掲げ、デゞタルものづくりのためのむンフラを䜜るために起業したした。

――人工知胜の考え方ずいうのは、ものづくりの䞖界以倖でも起きおいるかず思いたすが、ものづくりに着目された理由はなんでしょうか?

私のルヌツがものづくりの街(東倧阪)ずいうこずもありたすが、圓時ちょうどむンダストリヌ4.0によっおIoT領域の拡がりが芋え始めおいたしたし、家庭甚3Dプリンタが急激に普及したこずや産業3Dプリンタによる補造・生産の時代ぞの過枡期であるこずなど倖郚環境に倉化が起きおいたこずも倧きいです。

皲田氏が生たれ育った、ものづくりの街・東倧阪 (写真:photokuma / PIXTA(ピクスタ))

――「ものづくりの民䞻化」に぀いおもう少し䌺いたす。埓来はクロヌズドなむノベヌションでもうたく進んでいた郚分があるかず思うのですが、民䞻化が必芁になった芁因ずいうのはなんでしょう?

プロダクトのラむフサむクルはすべおの業皮でどんどん短くなっおいたすが、ものづくりのサむクルは金型の制玄やデゞタル化の進展の遅さなどもあっお䞭々進化の速床が遅いです。゜フトりェアの䞖界はここ十数幎で急激に進化し、業界党䜓で倧きなむノベヌションを起こしたのですが、「ものづくりの民䞻化」によっお「GoPro」のようにハヌドりェアの䞖界でも䞀郚起きおきおいたす。これたで倧䌁業がしおきたようなこずを、23人で起ち䞊げるこずが可胜になるんですね。

カブクがスロヌガンに掲げる「ものづくりの民䞻化」(出兞:カブク)

――「民䞻化」は倚数掟ず少数掟を生むシステムですが、「少数掟は淘汰されおも構わない」ずいう考え方なのでしょうか?

ニュアンスは非垞にセンシティブですが、私が携わっおいた進化論的な人工知胜は、硬盎的な環境より柔軟性ずスピヌド感がある環境で、倱敗を繰り返すこずで党䜓ずしお賢くなっおいきたす。倱敗を恐れないこずが重芁ですので、倱敗に察しおリスクヘッゞやフォロヌの仕組みを敎えおどんどん倱敗できる環境を䜜るこずが、党䜓ずしお良い結果を生み出せるず思っおいたす。

――ダむナミックな環境を敎えるこずが倧切ずいうわけですね。

はい。日本っお別に起業に倱敗したからずいっお、死刑にされたり垂䞭匕き回しの刑にあうわけではないですからね(笑)。それに、スタヌトアップは「連垯保蚌で借金をする」ずいったシステムじゃなくおも、ベンチャヌキャピタルなどを掻甚したスタヌトアップファむナンスのやり方がありたすので、そうしたこずからも日本でもスタヌトアップをしやすい環境がようやく敎っおきたように感じおいたす。

あくたで3Dプリンタは「デゞタル補造技術のひず぀」

――それでは、ビゞネスに぀いおお䌺いしたす。貎瀟は3Dプリンタを䞭心ずした事業を展開されおいたすが、3Dプリンタの魅力や課題に぀いおお教えください。

我々にずっおの3Dプリンタはあくたでも「デゞタル補造技術のひず぀」であっお、我々が目指しおいるのは「ワンクリックで䜕でも䜜るこずのできる補造プラットフォヌム」です。産業甚3Dプリンタの基本特蚱切れずいう倧きな環境倉化ず、高床なノりハりなしでモノを補造できる産業3Dプリンタから掻甚するこずで、ものづくりデヌタを流通させ、䞖界䞭の補造工堎をネットワヌク化するこずで、ものづくりを誰もが行える䞖界を䜜ろうずしおいたす。

目指すずころはむンダストリヌ4.0の範囲にも近く、単玔にマッチングするだけではなく、3Dデヌタを自動生成する゚ンゞンや3Dデヌタを解析・倉換する゚ンゞン、あるいは補造したい3Dデヌタや玠材、埌凊理などから最適なデゞタル補造工堎および3Dプリンタを遞び出す仕組みを甚いるずずもに、補造工堎をIoT化するクラりドサヌビスを提䟛するなど、メヌカヌず補造工堎を効率的に぀なぐプラットフォヌムを提䟛しおいたす。

産業3Dプリンタによる倧量生産の時代ぞ (出兞:カブク)

䟋えば、トペタさんの事䟋では、3Dプリンタでマスカスタマむれヌションする「OPEN ROAD PROJECT」においお、デゞタル補造サヌビスやデゞタル補造システム含むマス・カスタマむれヌションの゜リュヌションを提䟛しおいたす。たた、オリンパスさんぞは、オヌプンプラットフォヌムカメラ「OLYMPUS AIR」のデゞタルCMFプロダクトを共同開発したり、あるいはゲヌム䞊から3Dキャラクタヌを盎接3Dプリンタで補造するサヌビスなど、さたざたな業皮に察しお提䟛しおいたす。さらに、30カ囜以䞊の補造工堎が分散するネットワヌクを構築し、自動芋積もりや3Dデヌタのチェック・修正、補造管理、決枈、請求曞・玍品曞の自動生成などの工堎をIoT化するクラりドサヌビスも展開しおいたす。

――B2Bだけでなく、C2C事業展開もされおいるようですね。

はい。圓瀟が運営するWeb䞊でのデゞタルものづくりマヌケットプレむス「Rinkak Marketplace」では、個人メヌカヌの方々が党䞖界ぞプロダクトを販売できるデゞタルものづくりマヌケットプレむスも提䟛しおいたす。同サむトには䞖界䞭の人がデザむンしたアむテムが販売されおいお、誰かがWeb䞊で賌入するずその人の居䜏囜にあるデゞタル工堎で䜜られお配送されるずいう仕組みになっおいお、物流の面でも最適化されおいたす。販売者は3Dデヌタをアップロヌドするだけで、圚庫を抱える必芁がありたせんし、金型も䞀切芁りたせん。プロダクトを販売する堎合、埓来の方法なら「数千䞇単䜍」の最小ロットが必芁で、初期費甚は数千䞇ほど掛かりたすが、この「Rinkak Marketplace」ずいうサヌビスを䜿えば、3Dデヌタをアップロヌドするだけで自分の䜜品を党䞖界に向けお手軜に販売できるのです。登録料も無料ですので、個人が䜎コストでプロダクトを販売したり起業したりできる環境ずなっおいたす。わかりやすく䟋えるなら、「ダフオク」や「メルカリ」にデゞタル補造サヌビスが远加されたような感じでしょうか。これこそが「ものづくりの民䞻化」だず思いたす。

3Dプリントプロダクトのマヌケットプレむス「rinkak」 (出兞:カブク)

――「Rinkak Marketplace」のナヌザヌは党䞖界にいらっしゃるんですか?

はい。海倖も含めおアゞア最倧のマヌケットプレむスになっおいたす。利甚者の23割は海倖の方が占めおいお、ドむツやアメリカ、むタリアなど䞖界䞭のデザむナヌから利甚されおいたす。

――30カ囜以䞊に提携工堎があるずのこずですが、具䜓的な数字はどれくらいでしょうか

具䜓的な数字は非公開なのですが、「数癟工堎」ず申し䞊げおおきたす。

䞖界䞭の3Dデザむナヌが「rinkak」に登録 (出兞:カブク)

――工堎がこのプラットフォヌムに参加するためにはどういった手順を螏むわけですか?

たずはパヌトナヌプログラムに登録しおいただき、圓瀟で審査をさせお頂きたす。どの工堎に䜕を䜜っおいただくかずいうのは先ほどお話しした、圓瀟の「最適なデゞタル補造工堎を遞び出す゚ンゞン」を䜿っお発泚される仕組みになっおいたす。

――こうした゚ンゞンは、皲田CEOの専門分野である「人工知胜」の技術が圹立っおいるわけですね?

たさに補造工堎のマッチングに関しおは「最適化問題を解く」のず同じなので、人工知胜の領域ですね。ちょうど今、経産省さんが䞻催する"日本版むンダストリヌ4.0"のような「IoT掚進のための瀟䌚システム掚進事業(スマヌト工堎実蚌事業)」に参加させお頂いおいるのですが、これはたさに人工知胜やビッグデヌタ解析をいかに補造業に適応しおいくかずいう領域なので、我々のようなIoT領域のノりハりが掻かせる領域だず考えおいたす。

侖界30カ囜の補造工堎が3Dプリンティングパヌトナヌプログラムを導入 (出兞:カブク)

――数倚くのコラボレヌションプロゞェクトを手がけられおいるこずも特城ですが、珟代のものづくりにおける「コラボレヌションの意矩」に぀いおはどのようにお考えでしょうか。

我々はオヌプンむノベヌションを期埅しおおり、適切な䌁業の方々ずコラボレヌションしお スピヌド感をもっお倧きな山を登っおいくのが倧前提です。コラボレヌションをあえお意識せず、瀟内・瀟倖にもずらわれず、いかに倧きな山を登れるかが重芁だず思っおいたす。それらを"盞互乗り入れ"するように぀なげおいくのが、我々のプラットフォヌムなのです。

――「ものづくりにおけるコラボレヌション」は、CAD・PLMベンダヌなども掚進しおいたすが、すでに独自システムを所有しおいる倧䌁業ず貎瀟のプロゞェクトがコラボレヌションしたら、新しいものが生たれるのではないかず想像しおしたいたす。倧䌁業のシステムず貎瀟のプラットフォヌムずのコラボレヌションはいかがでしょうか?

そのあたりはこれからですね。むンダストリヌ4.0的な話ずしおも非垞に倧きな課題ずなっおいお、業界自䜓が「これから」ずいった颚調です。

3Dデヌタを流通させ、䞖界䞭の補造工堎をネットワヌク化しお、誰でもものづくりができる䞖界(出兞:カブク)

今はただ1~2合目

――「これから」ずいうお話しが出おきたしたが、貎瀟のプラットフォヌムが珟圚抱えおいる課題はありたすか?たた、それをどのように克服しおいくのでしょうか?

今埌ぱコシステムができおいくこずが予想され、䞖界的には我々が携わる領域においおも法人䌁業、個人を含むメヌカヌやハヌドりェア、゜フトりェアが融合する圢で゚コシステム化が圢成され぀぀ある状況です。さたざたな䌁業が跋扈し始めおいる状況で、我々もこれからは倚様なプレむダヌず倧きな山を登る必芁があるず考えおいたす。我々には、補造装眮拡匵や、アセンブリや、回路などやるべきこずがただ沢山残っおいたすし、か぀経産省ずのスマヌト工堎実蚌事業や自動車、電気関係など倚様なプロゞェクトが残っおいたすので、「ワンクリックで䜕でも䜜れるプラットフォヌム䜜り」をゎヌルずするならば、珟状はただ12合目付近を登っおいる段階だず蚀えたす。

「ワンクリックで䜕でも䜜れる」プラットフォヌム䜜りを目指す皲田氏

――日本で培った知財がガラパゎス化しおしたうのではないかずいう懞念もあるのではないかず思いたす。貎瀟が芋据えるグロヌバルな展開を螏たえおもやはり日本流でやっおいくこずは重芁なのでしょうか?

日本のものづくり資産は誇るべきものだず思いたす。米囜の有名䌁業ずコラボした補造工堎が盞手から厳栌な制玄条件や関係を突き぀けられたこずで、自瀟補品も数段階ブラッシュアップされたずいう話もありたたす。ただし、そこに最適化し過ぎるず、日本のみでしか適甚できないガラパゎス技術になっおしたいたすので、そうならないための最倧公玄数を芋極めながら、䞖界に進出するずいう意識が必芁だず思っおいたす。

――それを芋極められるのはフラットな立堎にいるカブクならではですね。

はい。珟圚は日本ず䞖界をフラットで芋られおいるので、ありがたい環境だず思いたす。日本だけを芋おいるずどこたで最適化しおいるのかわかりづらいですが、我々は䞖界で動いおるので、そういう意味では良いポゞションにいるのではないかず思っおいたす。

――最埌に、皲田CEOが泚目しおいる補造技術を挙げお頂けたすか?

「ゞェネレむティブ・デザむン(Generative Design)(デザむンの自動生成)」は比范的クラシックな技術で、以前私が人工知胜を研究しおいたずきも研究ずしおは倚数ありたしたが、圓時は金型や補䜜機械では実珟できない圢状でした。しかし今は3Dプリンタヌの基本特蚱が切れたのず、装眮が高床化しお実珟できるようになり、コンピュヌタヌ生成による「デザむン」がようやく珟実的になっおきたした。これにより、CGの人たちも参入できるようになり、より倚様性を生んできおいるずいうのは非垞に面癜いず思いたす。私がやっおきた人工知胜や機械孊習が、ここたで䞖の䞭に受け容れられるようになったずいうのは、10幎前には考えられなかったこずなので、ずおも嬉しいです。

――ありがずうございたした。