近年、持続可能な社会の実現に向けて、世界中の企業がSDGs(Sustainable Development Goals)を企業経営に取り込んでいる。そんなさなか、イノベーションの実現を促すための国際標準規格として2019年6月、ISO56002として採択されたのが「イノベーション・マネジメントシステム(IMS)」だ。
7月14日~16日にオンライン開催された「TECH+ EXPO 2021 Summer for データ活用」では、沖電気工業(以下、OKI)執行役員 イノベーション責任者 兼 技術責任者 藤原雄彦氏が登壇。「OKIのイノベーション・マネジメントシステム”Yume Pro”の取り組み紹介」と題し、OKIのIMS「Yume Pro」が生まれた経緯とその概要について、事例を交えて解説した。
“全員参加型”でイノベーションに向けて始動
2017年の経営会議においてIMSの導入を決定したOKIでは、藤原氏ら5名によるイノベーション推進プロジェクトチームを発足した。翌2018年4月にはイノベーション推進部が発足し、OKIのIMS「Yume Pro」が始動。2020年4月には、イノベーション推進センターが設立された。
そして同年12月、代表取締役社長を務める鎌上信也氏が”全員参加型のイノベーション”を宣言する。
藤原氏は、「『全員参加型のイノベーション』というのは他社ではあまり見ない珍しいコンセプトだと自認している」と見解を示す。
「IMSを全社レベルで構築し、業務システムに取り込もうという取り組みです。これによって社員全員が新しいイノベーションを起こせるようになることを目指しています」(藤原氏)
OKIがYume Proを通じてSDGsにフォーカスするのはなぜなのか。藤原氏は「地球温暖化や自然災害の増加をはじめ、社会が複雑化していくなかにあって、社会課題に対してどうアプローチするのかを考えたとき、顧客、さらにその先のエンドユーザーが何に困っているのかに着目することが大事だと考えた」と説明する。
「エンドユーザー目線」とは、すなわち「市民/消費者目線」であり、そこで課題を見極めて解決していくのが大切――これが、OKIがSDGsに取り組む大きな理由というわけだ。そこで2021年1月27日、同社は2030年までの「イノベーション戦略」を発表し、全員参加型のイノベーションによって中長期の事業創出を目指すロードマップを策定したのである。