商品を手に取ってタッチパネルの前に立ち、キャッシュレスで無人決済――そんな”次世代お買い物体験”が可能なサービスを手掛けるTOUCH TO GO。JR東日本スタートアップとサインポストの合弁会社として2019年7月に設立され、2020年3月には、高輪ゲートウェイ駅で第1号店をスタートさせた。

同社 代表取締役社長/JR東日本スタートアップ マネージャー 阿久津智紀氏は、今後、どのような展開を考えているだろうか。2月12日に開催されたリテールガイド × マイナビニュース共催セミナー「リテールDX 2021 どのようにデジタル活用して『事業変革を進める』べきか?」にて、ロコガイド「リテールガイド」編集長/リテール総合研究所 代表取締役 竹下浩一郎氏を聞き手に語った。

講師

左から、ロコガイド「リテールガイド」編集長/リテール総合研究所 代表取締役 竹下浩一郎氏、TOUCH TO GO 代表取締役社長/JR東日本スタートアップ マネージャー 阿久津智紀氏

ターゲットは自動販売機とコンビニの「間」

TOUCH TO GOが開発する無人決済店舗システム「TTG-SENSE」では、カメラや商品認識センサの情報によって入店した顧客と手に取った商品がリアルタイムに認識され、決済エリアに顧客が立つとタッチパネルに商品と購入金額が表示される。顧客は商品を手に取り、店の出口でタッチパネルの表示内容を確認して支払いをするだけで買い物が完了となる。決済方法は現在、クレジットカード/交通系電子マネー/現金から選ぶことができる。

自動販売機とコンビニの間のような店舗をイメージしていただけると良いだろう。阿久津氏によると、ターゲットは「マイクロマーケット」だ。

「飲料自販機は1日1台あたり2000円売れれば良いほうです。しかし、食品が売れないなどのデメリットがあります。一方で、コンビニは1日あたり50万円を売り上げなければ採算が取れないと言われています。TTG-SENSEでは、この中間にあるような市場を狙い、店舗の省人化を目指していきたいと考えています」(阿久津氏)

TTG-SENSEの導入第1号店となる高輪ゲートウェイ店では、コンビニで売られているような食料品をメインに約600アイテムを販売。平日約800人、祝日/休日約1200人が利用する。子どもを抱っこしていると人の識別が難しくなるなどの課題は残るものの、決済の正解率は90~95%程度に達しているという。

1日の売上が30~50万円程度の店舗では、だいたい2~3人のスタッフが必要になるが、同店舗は1人のスタッフで運用することができる。酒類の販売管理者が必要となるためスタッフを常駐させていると言うが、人による作業は品出し/発注/検品程度で、店頭の顧客対応は一切不要。仕組み上はほとんど無人でオペレーションすることが可能だ。

小売店がこうしたシステムを導入する際には、どうしても初期費用がネックになるが、阿久津氏は「人件費の削減分相当でシステムを導入して採算が取れるくらいの価格帯で提供する」と説明する。TTG-SENSEを利用するのに必要な初期費用はカメラの設置およびレイアウトの変更費用のみ。導入後は、月額サブスクリプションのサービスとして50~80万円程度の利用料を支払うかたちとなる。

TTG-SENSE

「TTG-SENSE」イメージ