エネルギー業界の在り方を変えるような革新的な取り組みを続ける日本瓦斯(ニチガス)。同社代表取締役社長 執行役員 和田眞治氏は、2005年に社長就任後、LPガス事業の物流システムの抜本的な改革や業務のフルクラウド化を実施するなど、積極的にDXを推進してきた。7月29日に開催されたマイナビニューススペシャルセミナー「失敗と挑戦から導くDX促進の方法論」では、この和田氏が自社の事例を踏まえながら、DX促進のための考え方などについて語った。

日本瓦斯 代表取締役社長 執行役員 和田眞治氏

日本瓦斯 代表取締役社長 執行役員 和田眞治氏

従来型のレガシーシステムで本当に良いのか?

さまざまな分野で第4次産業革命によるDXが進み、これまでにないスピードと規模で大きなパラダイムシフトが起きている。和田氏は「新たなテクノロジーに法律/会計基準/経営を合わせていかなければならない。しかし、現在どんなパラダイムシフトが起こり、どのように第4次産業革命が起こっているのかということを論理的に理解して言語化できている人は少ない」と現状に対する自身の見解を述べた上で、現在のパラダイムシフトで起きている動きを表した概念図を紹介した。

現在のパラダイムシフトで起きている動き

「これまでは物理空間の制約を受けて、経済の非対称が利益となる時代でした。さらに国家のような中央管理型の組織によって社会システムが管理されていました。しかし、これからは中央管理組織が必要とされない社会システムが動き出す時代となります。仮想通貨やブロックチェーンはその代表的な仕組みの一つです。国家と国民の関係は、コトの価値/個人の価値/プライベートコミュニティの価値へと置き換わります。こうした時代に、従来型のコンサバシステムやレガシーシステムで本当に良いのか考えてみていただきたいと思います」(和田氏)

X-Roadとブロックチェーンを商用に実装

トップダウンでDXを推し進めてきたニチガス。ビッグデータ、IoT、AIをいかにしてDXの実装につなげてきたのだろうか。和田氏はまず、エネルギー業界に特化したニチガスのクラウド業務システム「雲の宇宙船」を紹介した。

雲の宇宙船

雲の宇宙船の中核を担うのは、データの収集統合基盤「ニチガスストリーム」だ。同基盤において、現場業務用のスマートフォンをはじめさまざまなデバイスから集まるビッグデータが世界標準に規格統一され、AIによるデータ解析を経てそれぞれのシステムに反映されていく。

ニチガスストリームについて、和田氏は「データの特性に応じてどういう通信技術で運用するかはIoT技術の重要な部分。LTE、Sigfox、4G、5Gといった各通信規格は、通信距離/消費電力/周波数帯などに違いがある。そのため、データによって静的解析、動的解析、リアルタイム解析を使い分ける必要があるほか、通信技術をどう構成するか、センサやデバイスから双方向での通信が必要なのか否か、常時接続が必要なのかなど、さまざまな事項を検討しなければならない」と説明する。

こうした課題を解決するためニチガスは、IoT通信プラットフォームを提供するソラコムと協業。データ通信に関わる費用を最小化する技術を開発し、ニチガスストリームへと実装している。

ニチガスストリーム