「もっとおもしろくできる」を理念に、レンタルサーバー「ロリポップ!」やハンドメイドマーケット「minne」など、インターネット関連サービスを提供するGMOペパボ。インターネット黎明期であった2003年にpaperboy&co.として立ち上げた後は、グローバルメディアオンライン(現在のGMOインターネット)による子会社化、ジャスダック証券取引所上場などを経験しながら、着実に成長を遂げてきた。

GMOペパボ 代表取締役社長 佐藤健太郎氏

企業としてのステージが移り変わっていくなかで、どのようなかたちでユーザーや従業員へ想いを伝えてきたのだろうか。創業メンバーでもある代表取締役社長 佐藤健太郎氏に聞いた。

<理念>
もっとおもしろくできる

<ミッション> インターネットで可能性をつなげる、ひろげる

「俺らがやったほうがおもしろくない?」という会話がそのまま理念に

paperboy&co.の設立自体は2003年だが、主力サービスであるロリポップ!は2001年より提供されてきた。佐藤氏は会社化のタイミングで当時の代表だった家入一真氏に誘われ入社。事業運営から経営企画、広報など幅広い業務を担当してきた。

「もっとおもしろくできる」という理念は、2008年のジャスダック証券取引所上場のタイミングで明文化された。佐藤氏によると、当時の社内カルチャーをそのまま言葉に落とし込む形で決まったものだという。

「ホスティングやメディア関連の他社サービスを見ながら、『これって俺らがやったほうがおもしろくない?』という会話をよくしていたんです。ロリポップ!も、レンタルサーバーというサービスをもっとおもしろくできないかと考えてできたサービスです。

『おもしろい』という言葉は、笑いの面はもちろん、かっこいい、かわいいといったビジュアルの面も含んでいます。真面目すぎるものではなく、おもしろみを感じてもらえるようなサービスをつくりたいという雰囲気が創業当時から社内にありました。だったらそれを企業理念として定めちゃおう、と」(佐藤氏)

この理念は、2009年に家入氏から佐藤氏へ代表権が移り、2014年にGMOペパボへと商号が変わっても変わらず受け継がれてきている。

たとえば、近年の新卒採用説明会では、「就活はもっとおもしろくできる」という考えのもと、社長をはじめパートナー(GMOペパボでは社員のことをパートナーと呼んでいる)自らがヒーローショーやヘヴィメタルバンドのライブ、ゾンビダンスを行うなど、他の企業ではなかなか考えられないような企画を実施してきている。この様子を収めた動画はYouTubeにアップされているのでぜひご覧いただきたい。

新卒採用2017 GMOペパボ会社説明会の様子(YouTube)

新卒採用2018 GMOペパボ 会社説明会の様子(YouTube)

新卒採用2019 GMOペパボ 会社説明会の様子(YouTube)

ビジネスの拡大に合わせてコーポレートミッションを刷新

「もっとおもしろくできる」という思いは創業時から一貫している一方で、ビジネスの拡大に伴い、コーポレートミッションは2013年に「より多くの人に情報発信するよろこびを提供する」から現在の「インターネットで可能性をつなげる、ひろげる」へと変更されている。

これは、2010年に電子書籍作成・販売プラットフォーム『パブー』、2012年にCtoCハンドメイドマーケット『minne』を公開するなど、個人向けのサービスからプラットフォーム型のサービスにシフトしはじめた時期であったことが関係しているという。

佐藤氏はミッション刷新の経緯について「従来のミッションは、インターネットの中に閉じているような表現になっていて、それだけでは可能性は広がっていかないのではという課題を感じていました。また、法人ユーザーが増えてきたこともあり、個人ユーザーのみにフォーカスして定めたミッションが当時の状況とちぐはぐな形になってしまっていたんです。変更後のミッションには、ユーザーの叶えたい夢を開花させるためのサービスとしての思想と、インターネット自体の可能性を広げるという意味を込めています」と説明する。

社長の「大切にしてほしいこと」がパートナーの「大切にしていること」へ

さらにGMOペパボでは、「わたしたちが大切にしている3つのこと」というパートナーの行動指針となる下記の言葉を採用サイトに掲載している。

<わたしたちが大切にしている3つのこと> みんなと仲良くすること
ファンを増やすこと
アウトプットすること

これらはもともと佐藤氏が「大切にしてほしいこと」として2010年頃よりパートナーに伝えてきた言葉だというが、実際に大切であるという認識が浸透してきたため、昨年「大切にしていること」という表現に変えてはどうかという提案が社内からあがったのだという。

「社内の共通点をピックアップしていくと、まずはブログなどで発信して楽しんでいる人たちが多かったことが『アウトプット』という言葉につながっています。

また当社では、社内のコミュニケーションを重視しています。なあなあになってしまうデメリットもあるかもしれませんが、仲が悪くてプロジェクトが動かないという状態は、社内にとっても経営者にとっても無駄でしかありません。労務問題やハラスメントにもつながりますので、『仲が良い』ということは尊重されるべきだと考えています。

あとは、天邪鬼な会社だと自分で思っていたことが『ファンを増やす』という言葉につながっています。天邪鬼というのは、こっそり勝手に尖ったことをするというイメージです。そこには、主張したり強引にやったりするというよりも、好かれたいという思いや謙虚な態度があります」(佐藤氏)

大切にしていることを体現したものとして、GMOペパボでは10年以上前から毎年「お産合宿」と名付けた開発合宿を行っている。お産合宿は、パートナー同士で仲良くアウトプットする場でもあり、またその過程をブログや動画などで社外に発信することでファンづくりにもつながる。「お産合宿中に24時間テレビを真似て、自宅から開発会場まで走って動画で中継したこともあります(笑)」と佐藤氏が言うように、ここでもやはり「もっとおもしろくできる」の精神を欠かすことはないようだ。

「規模が大きくなっても、今のカルチャーを継続させていきたい」

個人向けのサービスからプラットフォーム型のサービスへとシフトしていくことで、さらなる成長を目指すGMOペパボ。ビジネスや組織の規模と企業理念とのギャップに悩んだり苦しんだりすることはないのだろうか。佐藤氏は、「規模が大きくなってもおもしろくできるということは評価されると思いますし、それ自体をおもしろがってもらえると考えています。今の状態が長く続いていくことが理想ですね」と、今後も現在のカルチャーを継続させていきたい考えだ。