IDC Japanは9月5日、年次イベント「IDC AI and IoT Vision Japan 2018」を東京コンファレンスセンター・品川にて開催した。

「DNE(デジタルネイティブ企業)のデータエコシステムを考える」をテーマに掲げた同イベントでは、AIやIoTのトレンドおよびそれらの活用によって実現されるDX(デジタルトランスフォーメーション)や、DNEの今後の展望について、IDC Japanのアナリストらが解説を繰り広げた。

知ってもらえなければ営業が呼ばれることすらない

「AIのパーベイシブ化によるデジタルネイティブ企業への変革」と題された基調講演には、IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ/ITスペンディング グループディレクター、眞鍋敬氏が登壇。同氏は、デジタルネイティブ企業へと変革するために必要となるAI活用の在り方について、ユーザー企業調査の結果を交えつつ考察していった。

IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ/ITスペンディング グループディレクター 眞鍋敬氏

近年IDCでは、グローバルで「DNE(Digital Native Enterprise)」という言葉が頻繁に使われている。DNEとは、「全ての企業幹部や従業員が考え、行動する様式として、DXを最優先にする企業」のことを指す。ただし、「単にデジタル化すればいいというわけではない」(眞鍋氏)のだという。

また、ここで言うDXとは、「企業が外部(顧客/市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部(組織/文化/従業員)の変革を推進すること。そして、新しい製品やサービス、ビジネスモデルを通じ、ネットとリアルの両面から顧客体験を変革して価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」だ。

「(DXとは)平たく言えば、デジタルを使って顧客体験を創出していくことです。今企業には、『いかにデジタルを上手に使って顧客に最高の体験をしてもらうかを最優先に考える企業(DNE)』へと変わることが求められています」(真鍋氏)

DXの進展により消費者は大きく変わってきている。一方、B2Bの買い手側はどうだろうか。IDCの調査によると、実に6割近くのビジネスバイヤーが、営業担当者を呼ぶ前の時点で既に何を購入するかを決めているという。

眞鍋氏は「これはかなり恐ろしい話です」と警鐘を鳴らす。

「最初の段階で製品やサービスが引っかからなければ、購入どころか営業が呼ばれもしないということです。そうならぬよう、いかに自分たちの製品/サービスを知ってもらうのか、あるいはいかに製品/サービスを理解してもらい、体験してもらうか──それがDXの根幹となります。そしてDNEとは、デジタルを使って最高の顧客体験を提供する企業だと考えて間違いありません」(真鍋氏)