製品設計で必ず設定される「公差」は製造過程で重要な要素です。しかし、多くの設計現場でこの公差を決めるのに適切な計算・検討を行わず、過去の設計の値をそのまま使用したり勘や経験を基に適用しているのが現状です。
SOLIDWORKSに搭載されている「TolAnalyst」なら、公差による製品への影響を評価しながらコストと品質に配慮した適切な設定を導き出すことができます。
そもそも公差とは?
設計で作成される3次元モデルや図面は製品の正確な形状を表現しますが、加工工程では必ず形状に誤差(バラツキ)が生じます。このバラツキが許容される差を「公差」といい、公差を設定することで部品の不良率を抑えることにつながります。
公差を厳しくすれば部品レベルの製造コストが増大し、公差を緩くすればアセンブリレベルで組み立ての品質低下やコスト増大を招くため、製造・組み立てのバランスを考慮した公差設定が重要になります。
公差解析に適したSOLIDWORKS搭載のTolAnalyst
各構成部品の公差からバラツキの累積を計算し、実際に製造できるかを評価することを「公差解析」といいます。手計算で行う場合、非常に複雑な計算が必要になります。 SOLIDWORKSに搭載されたTolAnalystなら部品レベルに付加された3Dアノテートアイテムを基に関連部品の公差の累積を評価するため、容易に立体的な形状を評価・検証することができます。
TolAnalystにおけるバラツキの評価方法
TolAnalystでは「ワーストケース」と「RSS(2乗根和)」による累積の最大値・最小値を計算します。
ワーストケースとは
ワーストケースは関連する公差の最大/最小許容差の累積を計算し、発生し得る最も大きいバラツキ。
右図、三つの部品の幅寸法をそれぞれ10±0.1、10±0.2、10±0.3mmと定義した場合…
- 公差部分:±(0.1)+(0.2)+(0.3)=±0.6
- ノミナル値:10+10+10=30と併せて
- ワーストケースの最大:30.6
- ワーストケースの最小:29.4
RSS(2乗根和)とは
RSS(2乗根和)は「発生するバラツキは正規分布する」と仮定することで、ワーストケースの組み合わせが発生する確率は非常に低くなると評価します。そのため、ワーストケースよりも緩い公差を設定できます。
下図、三つの部品の幅寸法をそれぞれ10±0.1、10±0.2、10±0.3mmと定義した場合…
- 公差部分:±√{(0.1)^2+(0.2)^2+(0.3)^2}=±0.374
- ノミナル値:10+10+10=30と併せて
- RSS最大=30.374(=30+0.374)
- RSS最小=29.626(=30-0.374)
寄与率とは
これら二つの計算結果は製品の形状や部品点数により使い分けて公差の適正を評価します。
その他、計算結果から各寸法の影響度を計る「寄与率」を算出し、公差の修正作業に役立てます。寄与率は数値が高いほど計算結果に大きく影響している寸法であることを示します。
(本稿はCAD Japan.comより提供を受けた記事を編集したものです。)