Hewlett-Packard、Apple、そしてGoogleも、最初はシリコンバレーのガレージで二人の青年が立ち上げた小さな会社だった。アイディアを武器に小さな会社が、既存の市場を破壊するようなインパクトをもたらした。ところが、今やかつてのシリコンバレーのガレージスタートアップを含むテクノロジー大手によって、スモールビジネスが成功をつかむチャンスの芽がつまれている……そのように主張する以下の4社の経営者が「独占禁止法、商法および行政法に関する下院小委員会」の公聴会でテクノロジー大手の圧力について語った。

Sonos:ホームサウンドシステムを開発・販売するSonosは、同社製品でGoogle Play MusicやGoogleアシスタントやをサポートするのを目的とした提携にもかかわらず、GoogleがSonosの知的財産をスマートスピーカーやスマートフォンに使用していると主張。

Tile:紛失防止のBluetoothタグのTileは、Appleのプライバシー強化に伴うセットアッププロセスの変更でデバイスユーザーに警戒感を持たれるようになり、ロケーショントラッキングの「常に許可」をユーザーに認めてもらうのが困難になった。

Basecamp:プロジェクト管理ツールを提供するBasecampは、Googleで「basecamp」と検索した際に、同社のWebサイトの前に競合の有料検索広告が配置されると指摘。それを避けるには自らキーワードを購入せざるを得ないことから、CTOのDavid Heinemeier Hansson氏は「Googleは検索エンジンではない、広告エンジンだ」としている。

PopSockets:スマホ用落下防止アイテムのPopSocketsはAmazonに製品を卸していたが、Amazonの模倣商品対策が徹底しておらず、また価格やキャンペーンをAmazonに強いられる不自由さから、Amazonでの販売をiServeというディストリビューター経由に切り替えた。それに対して、AmazonはPopSocketsと関係のある業者を通じた販売は規約違反であると通告。Amazonに卸さざるを得ない状況に追い込まれたとしている。

  • AmazonのPopSocketsストア、Amazonとの関係が悪化する不利益を危惧しながらも、発展的な結果を求めてこれまでの関係の公表に踏み切った。

    AmazonのPopSocketsストア、Amazonとの関係が悪化する不利益を危惧しながらも、発展的な結果を求めてこれまでの関係の公表に踏み切った。

この公聴会は、デジタル市場が拡大する中でいくつかの米IT大手に力が集中する問題に関する調査の一環だ。Web検索、モバイルアプリ配信、オンラインショップ市場にはいくつかの主要企業しか存在しない。Google、Apple、Amazonが強い力を持っているのは明らかである。

では、反トラスト法違反を問えるかというと、競争が減ることによる消費者の不利益を判断するためにこれまで用いられてきたものさしは「値上げ」だった。しかし、GoogleやFacebookは無料で提供されている。代わりに利用者のプライバシーが侵害される懸念が高まるが、AppleのApp Storeの場合、iOSアプリを配信する唯一の存在であることで利用者のプライバシー保護と安全が保たれている。Amazonにしても、スモールビジネスの多くにとってAmazonはより多くの顧客を獲得できるチャンスを得られるマーケットであり、それが消費者の利益につながってる面が大きい。

テクノロジー大手側の反論も紹介すると、GoogleはSonosの知的財産侵害を否定。Basecampの問題については、検索広告のキーワードが制限されると利用者の選択の幅が狭まって利用者の不利益につながるとし、ただし商標については所有者からの要求に応じてブロックする対策を用意している。Appleはデバイスメーカーとのパートナーシップを通じて、安全に遂行できることが確認できた場合、セットアップ時から「常に許可」を認めるオプションを用意する計画だという。Amazonは公聴会の前に、International Data Corpに委託したAmazonを利用するスモールビジネスのビジネス機会に関する調査結果(回答:350社)を公表した。それによると、Amazonで販売している会社の81%が複数のデジタル販売チャンネルを利用している。90%がAmazonをオンライン販売チャンネルまたはテクノロジーパートナーとして信頼する。Amazonで販売し始めることで売上高を下げたのはわずか3%、売上高が前年比25%以上の増加となる可能性が2.5倍というデータになっている。

米司法省は拡大するデジタル市場に合わせて、反トラスト法をより柔軟に適用できるように解釈の拡大に取り組んでいる。価格の適正だけを重視せず、競争が伴うプライバシー保護を促し、そしてイノベーションを阻害するような行為も消費者の不利益につながると見なす。だから、消費者の被害を防ぐための反トラスト法の公聴会で、保護の主な対象ではない中小企業のビジネスへの影響に関する聞き取りを行った。

ただ、中小ビジネスが米政府による介入を望んでいるかというと、過去をふり返ると検索やSNS、オンラインショップは緩やかな規制の下で新たなチャンスをつかんできた。政府による過度な介入が逆にそうした成長を妨げる可能性も考えられる。PopSocketsの創業者のDavid Barnett氏はAxiosの取材に対して「議会や司法省が介入してくる前に、Amazonのためにも、Amazonが誠実にこれらの問題に対応することを望みます」と述べている。