この連載では、ストレージの基礎的な解説をはじめ、実際のIT現場で役立つ、押さえておくべき実践のポイントを近年のストレージ動向なども交えながら解説します。IT領域の編集部1年生の私がさまざまな専門家のもとで勉強します。みなさんも一緒に学んでいきましょう。
連載の第8回目となる今回は前回に引き続き、日立製作所(以下、日立)のITプロダクツ統括本部 ソリューションストラテジー本部でハイブリッドクラウドビジネス推進部の主任技師を務める松井礼生氏に、アプライアンスストレージとSDS(Software-Defined Storage)の違いについてより詳しく教わりました。
--アプライアンスストレージとSDSのそれぞれのメリットを教えてください
松井氏:前回のおさらいになりますが、アプライアンス製品はどこか特定の1社がハードウェアもOSも提供している製品です。ハード面もソフト面も導入から保守やサポートまですべて1社が対応するので信頼性が高く、不具合が起きた場合には責任をもって迅速に対応できます。また、必要な要件に合わせて適切なカスタマイズにも対応します。
一方のSDSは、ハードウェアに汎用的x86サーバを利用できるため導入面でコストメリットがあると言われています。また、スケールアウトする製品ですので、導入前の事前検討にそれほど時間をかけずにまずはスピーディに導入し、必要に応じてリソースを拡張するなどシステムの柔軟性が高いのもSDSの特長です。
そのほかに、パブリッククラウド上で稼働するSDSもあります。近年はGoogle CloudやMicrosoft Azure、AWS(Amazon Web Services)など、パブリッククラウドに自社システムを移行する企業が増えています。そのような場合にはやはりスピーディーさが求められますので、SDSが適しているはずです。
--SDSはどのように提供されているのですか
松井氏:複数のパターンがあります。お客様が汎用のハードウェアとSDSのOSをそれぞれ購入して自分で組み立てる場合もあれば、ハードウェアとソフトウェアを同じ企業から購入する場合もあります。
ほかにも、各ベンダーの販売パートナー企業がハードウェアを用意し、SDS ソフトウェアをベンダーから提供して、両者が協力して販売している例もあります。
過去を振り返ってみると、例えばHDDよりもサイズが小さく高性能なSSDが世に出てきた時には、これをサーバと一緒にしてしまえばストレージが不要になると考えられました。しかし、サーバの負荷が大きくなるので、データを保護する際に業務アプリケーションに影響が出るような場面も見られ始めたのです。そうしますとやっぱりサーバとストレージを分けた方がいいのではないかといった意見も出ますよね。
歴史的に、ITシステムの提供の仕方は何度も変化しています。性能を優先的に求める場合や容量を優先的に求める場合など、ユーザーの要望も変化しますので、単純に提供形態の良し悪しを比較するのではなく、お客様の用途に合ったシステムをご提案することが重要だと考えています。
松井氏:日立はこれまで50年以上ストレージベンダーとして製品開発に取り込んでいます。 2021年に販売を開始した当社のSDS「Hitachi Virtual Storage Software Block (VSS Block)」は、これまでの日立のストレージ技術を基に開発されていますので、従来型のアプライアンスストレージとの連携のしやすさが特徴だと思っています。また、近年はパブリッククラウドとのデータ連携技術も磨きをかけています。
SDSは汎用のハードウェアを使用する性質上、サーバやスイッチは複数のメーカーの製品が組み合わされて使われることもあります。このような場合でも、日立では独自のデータ保護技術を活用してお客様のデータを護れる機能を製品に取り込んでいます。
--最後に、今回の連載の読者となる1年目から2年目のエンジニアの方にアドバイスをください
エンジニアになりたての方が複数企業のカタログやHPを見て、すぐに「これが優れている」や「これはイマイチ」などと見分けるのは難しいかもしれません。少しずつでも良いので、まずは自分で製品を触ってみて、先輩に意見をもらいながら興味のある分野を勉強してみてください。
参考・関連サイト
日立のアプライアンスストレージ
日立のソフトウェア・デファインド・ストレージ