この連載では、ストレージの基礎的な解説をはじめ、実際のIT現場で役立つ、押さえておくべき実践のポイントを近年のストレージ動向なども交えながら解説します。IT領域の編集部1年生の私がさまざまな専門家のもとで勉強します。みなさんも一緒に学んでいきましょう。

連載の第9回目となる今回は、デル・テクノロジーズで、製造SE部のアドバイザリー ソリューション アーキテクトを務める前田健次氏に、ブロックストレージ、ファイルストレージ、オブジェクトストレージの違いについて教わりました。

  • デル・テクノロジーズ システムズ エンジニアリング統括本部 産業SE第一統括部 製造SE部 アドバイザリー ソリューション アーキテクト 前田健次氏

    デル・テクノロジーズ システムズ エンジニアリング統括本部 産業SE第一統括部 製造SE部 アドバイザリー ソリューション アーキテクト 前田健次氏

--ブロックストレージ、ファイルストレージ、オブジェクトストレージの違いを教えてください

前田氏:3種類はそれぞれ、データにアクセスするときの単位が違います。つまり、ブロック単位、ファイル単位、オブジェクト単位でアクセスするということです。まずはアクセスの単位が違うことを押さえておいてください。

実はそれぞれのストレージは見かけ上は同じです。HDDとSSDをどちらも使えます。例えば、データを読み書きする性能を求めたければSSDを使えば良いですし、性能よりも低コストを重視する場合はHDDを使えば良いです。

3種類のストレージは基本的にプロトコル自体が異なります。後ほど詳しく説明しますが、各ストレージのプロトコルが違うのでサーバからのアクセスの仕方が違います。また、ブロックストレージとファイルストレージはWindowsやLinuxなどOS(Operating System)に依存しますが、オブジェクトストレージはOSに依存せずに接続できます。

  • ストレージのアクセス方式

    ストレージのアクセス方式

--ブロックストレージについて教えてください

前田氏:ブロックストレージはその名の通りブロック単位でデータにアクセスします。ブロック単位のアクセスはレスポンス(応答)が速いという特徴があります。レスポンスタイム(応答時間)に優れているので、主な利用環境としてはデータベースや仮想環境、基幹業務システムなど、いわゆるミッションクリティカルな領域における、トランザクション処理や、リアルタイムの更新処理に向いています。

ストレージの中には「論理ボリューム」と呼ばれる、データをためるための器のようなものがあります。この論理ボリュームが固定長のサイズ、つまり「ブロック」に分けられており、データはファイルシステムによりブロックに分割されて書き込まれます。このブロック単位でデータにアクセスするため、ブロックストレージと呼ばれます。

各ブロックの1つ1つにはアドレスが振られていて、「論理ボリューム○○番のブロックアドレス○○番」のように管理されています。どのブロックにデータを配置するのかは、基本的にはファイルシステム(OS)が管理しています。また、主なプロトコルはFC、iSCSIなどです。

--ファイルストレージについて教えてください

前田氏:ファイルストレージは、ファイル単位でデータにアクセスします。主にファイルサーバや仮想環境、データファイルのアーカイブなどをはじめ、汎用的にさまざまな場面で使われます。みなさんに最もなじみがあるのは、ファイルサーバとして組織ごとにファイルを共有する場面ではないでしょうか。

ブロックストレージの場合はファイルシステムがサーバ側にありましたが、ファイルストレージはファイルシステムがストレージ側にあります。このストレージ上のファイルシステムをネットワーク越しにクライアントに対して見せているのですが、クライアントとしてはこのファイルシステムがあたかもローカルにあるように扱えます。これを「ネットワークファイルシステム」と呼びます。複数のクライアントが同時にこのファイルシステムをマウントすることで、ファイルを容易に共有できます。

「ネットワークファイルシステムへのファイルの保存」という操作は、実際にはクライアントがストレージにファイルを送り、ストレージがファイルを受け取ると、ストレージ上にあるファイルシステムがそのデータをブロックに分割して論理ボリュームに保存する仕組みになっています。

また、ファイルストレージではフォルダやディレクトリを利用した階層構造でデータを管理するという特徴があります。

  • デル・テクノロジーズ 前田健次氏

--オブジェクトストレージについて教えてください

前田氏:オブジェクトストレージは、オブジェクト単位でデータにアクセスします。デジタルコンテンツの保存やデータのアーカイブ、オンラインストレージサービス、動画配信や音楽配信などの大容量データの取り扱いに優れています。

オブジェクトストレージは各データに「オブジェクトID」と呼ばれる一意のIDを付与して管理しており、データにアクセスする際もオブジェクトIDを参照します。

その他、多くのメタデータを付与する点も特徴的です。メタデータとは、そのファイルの名前やファイルの拡張子(.pdf .pptなど)、いつ作られたデータか、といったデータです。オブジェクトストレージはデータを保存する際に、関係するいろいろなメタデータを付与できるのが強みです。反面、高いレスポンスが求められる処理や更新頻度が高いデータの処理は苦手としています。

  • ストレージのアクセス方式による比較

    ストレージのアクセス方式による比較

次回からはそれぞれのストレージの違いについてもう少し詳しくお伝えします。