まず、そもそも「何のためにソーシャルメディアを使うのか」という目的を考え、使い始める前にソーシャルメディアポリシーを用意しましょう。同時に、夏頃から多く見られた「炎上」などを防止する方法を知り、事前に準備しておきましょう。

目的・ターゲット・KPIを設定しよう

ソーシャルメディアを「流行っているから」と言って取り入れるのはお勧めできません。何となく使い始めてしまうと、どう運用すればいいか分からない上、結局、何の成果も上げられないことになりかねません。途中で運用を放棄すれば、せっかく「いいね!」やフォローしてくれた顧客に対して無責任であり、かえってマイナスの影響を与えてしまう可能性もあります。

目的は企業や店舗などによって様々なものになるでしょう。たとえば、

  • 顧客とコミュニケーションを通して関係性を築きたい
  • 商品やサービスに関してユーザーの意見を聞いて改善したい
  • 自社のブランド力や認知度を高めたい
  • 店舗の認知度を高め、来店率を高めたい
  • 就活生における認知度を高め、優秀な学生に関心をもってもらいたい

など、自社に合った目的を設定しましょう。この時、既存客か新規顧客か、年齢層・性別などの具体的なターゲット層も決めておくことも重要です。

それに合わせて、KPI(重要業績評価指標 : Key Performance Indicator)も設定しましょう。KPIの設定方法はたとえば、競合店・競合会社などのFacebookページの「いいね!」数を目安として目標とする「いいね!」数を定めたり、投稿に対する「いいね!」やコメント・リツイートなどのエンゲージメント率、資料請求や来店率などのコンバージョンレートの目標を設定することで、目指すべき目安が分かりやすくなります。定期的に目標を達成できているかどうかを調べ、達成できていない場合は対策を考えましょう。

ソーシャルメディアポリシーを用意しよう

ソーシャルメディアポリシーは、一般従業員、アルバイトなど、自社で働くすべての従業員に対し、ソーシャルメディアでするべきこととすべきでないことを明らかにし、ルール付けするものです。近年は、個人でのソーシャルメディア利用が原因で炎上や企業が謝罪しなければならない羽目に陥ることがあるため、予め作成しておくことはとても重要です。

ソーシャルメディアポリシーは、企業全体の行動規範に沿ったものを作成しましょう。その際、具体的な発言例やなぜ問題なのかといった点をまとめておくことで、理解しやすくなります。

具体的には、仕事上知り得た機密情報やクライアント・顧客などの情報について守秘義務を守ること、法令を遵守すること、企業イメージを損なう発言をしないこと、誹謗中傷などをしないこと、発言の責任は個人にあると明記することなどが挙げられるでしょう。

同時に、ソーシャルメディア担当者向けのガイドラインを用意しておくことで、担当者の裁量任せではない安定した運用ができるようになります。業務フローやマニュアル、禁止される発言例などをまとめておくといいでしょう。

多くの企業が自社のソーシャルメディアポリシーを公開しています。また、自社向けにカスタマイズして利用できるテンプレートを用意しているところもあります。これから作成する企業は、ぜひ参考にしてみてください。

インテル・ソーシャルメディア・ガイドライン

NECグループ ソーシャルメディアポリシー

コカ・コーラシステム ソーシャルメディアの利用に関する行動指針

炎上の起きる3つのパターン

インターネット上で起こる企業に関する炎上は、主に、

  1. ソーシャルメディア担当者が起こす炎上
  2. 従業員やアルバイトが起こす炎上
  3. 顧客など第三者が起こす炎上

という3パターンに分けられます。

CMや新聞広告、ソーシャルメディアなどで築き上げてきたブランドも、たったひとつの炎上で簡単に崩れることがあります。炎上の売上に対するマイナス効果は計り知れません。どうすればこの炎上を防止することができるのでしょうか。また、起きてしまった炎上に、どのように対処すればいいのでしょうか。

炎上対策に成功した「チロルチョコ」

企業にとっては、前述のようにソーシャルメディアポリシーを作成し、教育の徹底を繰り返し行っていくことが重要です。しかし、やれるだけのことをやっても、今年の夏に頻発したコンビニで従業員が冷蔵庫に入った写真を投稿するといったタイプの炎上が起きることがあります。今は、誰でもケータイやスマホで手軽に発信できる時代です。炎上の芽を素早くキャッチするため、自社や自社商品・サービスなどで常にエゴサーチを行っておくことも必要でしょう。

炎上が実際に起きてしまった場合は、ソーシャルメディアでは1日の遅れが命取りとなります。そして、マーケティング担当者だけでなく、問題を全社で共有できる仕組みを用意し、実際に起きてしまった時にはどうするかという、有事に素早く対応できるようなフローを決めておきましょう。

大切なのは、ユーザーの声に耳を傾け、現状を把握し、情報を収集し、ソーシャルメディアアカウントで現状などを報告することです。そして、できるだけ早く正式にリリースを出すこと。この一連の流れをできるだけ素早く行うのが重要です。

たとえばチロルチョコ株式会社では、ユーザーによってチョコに芋虫が入っていたという写真がTwitterで公開されたことがあります。大騒ぎになりましたが、わずか3時間後に同社の公式アカウントは、写真に掲載された商品の最終出荷日は半年前だが芋虫は推定生後30~40日であり、工場で入ったのではなく家庭で入ったと推測されることを冷静に説明、炎上を沈静化させたのです。公式アカウントの存在と素早い適切な対応の重要性がよく分かる例です。

こんな例もあります。虚構しか報道しない「虚構新聞」というWebサイトで、森永チョコ(森永製菓)が「ダース」の新製品として144個入りの「グロス」を発売するという記事が出ました。この「ネタ」を受けて森永チョコの公式アカウントは、わずか5日後に本当に「グロス」を発売するとツイートし、虚構を現実にしてみせたのです。

このユーモアあるやりとりはユーザーに2千回もリツイートされました。炎上ではありませんが、Twitterでのやりとりの成功事例と言えるでしょう。

炎上は恐れすぎることはありません。素早い適切な対応によって、炎上を最小限に食い止めることができ、むしろ評価を上げることさえ可能なのです。参考にして、自社で活用してみましょう。

144個入りの「グロス」を報じた虚構新聞