日本オラクル セールスコンサルティング統括本部 Fusion Middleware SC本部 テクノロジーエバンジェリスト 佐藤直生氏

大手ソフトウェア企業の日本オラクルには、海外拠点ともやりとりができるグローバルな社内SNSと、日本オラクル社員のみが利用する社内ブログがあるという。それぞれどのようなサービスで、どのように使い分けられているのだろうか。同社セールスコンサルティング統括本部 Fusion Middleware SC本部 テクノロジーエバンジェリスト 佐藤直生氏に話を聞いた。

Oracle Connect - グローバルな多言語対応SNS

オラクルの社内SNSの名称は「Oracle Connect(オラクルコネクト)」という。7万人を超える世界中の全社員が使えるという巨大社内SNSだ。2007年8月にサービスインした。アクティブ数は数万人に上り、そのうち日本オラクル社員は数百人となる。

UI(ユーザーインタフェース)は英語だが、多言語対応しており日本語で書き込むことも可能だ。オラクルのオフィスは世界各国の主要都市にあるため、さまざまな言語で書き込まれており、英語、日本語の他、中国語、ヨーロッパ系の言語なども見かけるという。

オラクルの社内システムでは、社員ひとりひとりに与えられた単一のユーザーアカウントで一度ログインするだけで複数のシステムにアクセスできるSSO(シングルサインオン)が実現されており、この社内SNSもSSOに対応済みである。このSSOは、自社のアイデンティティ管理製品群「Oracle Identity Management」を利用して実装されている。

「Oracle Connect」の標準UIは英語だが、グローバル企業らしく、日本語対応を含む多言語対応も行われている。こちらは佐藤氏のプロフィール画面

自発的に生まれたツール

Oracle Connectには、フレンドリンク"People"、コミュニティ機能"Groups"、アイデアの提案やそれに対する投票やコメントができる"Ideas"、質問とそれに対する回答ができる"Q&A"などの機能がある。それぞれの情報にはタグが付けることができ、全文検索だけでなくタグによる検索も可能だ。

この社内SNSは、米国のオラクル社員4名から成る「AppsLab」というチームが自発的に開発した。Oracle ConnectはRuby on Railsで書かれており、最初のリリースは、1人の開発者がわずか5 - 6週間ほどで開発したものだそうだ。ちなみに、実行環境はOracle Application Server上で動くJRubyである。「オラクルではソフトウェア製品ごとに開発メンバーが割り当てられていますが、新しいアイデアがあれば社員が自発的に作ることも可能です。これもそのひとつ。イノベーションに関しては受け入れる間口が広い会社ですね」(佐藤氏)

グローバルに拡がる"オラクル社員つながり"

コミュニティの数は約500ほどあり、600人以上が参加している巨大コミュニティもある。基本的には英語でのやりとりが多いが、日本語コミュニティもいくつかある。"Ideas"や"Q&A"で出てきた製品に関する新しいアイデアやリクエストが実際に製品開発に反映されたり、業務を行うグループ (特定製品の開発チームなど) がプライベートの"Group" を使ってコミュニケーションしたりもしている。このように直接業務につながる場合もあるが、コミュニティの内容が「業務に特化してなければいけない」という縛りはない。

佐藤氏自身はどんな使い方をしているのかというと……「仕事で知り合った日本人や海外の人とのつながりをキープしたり、新しい情報を得たりするのに使っています。メールだけでは顔がわかりませんが、これがあると顔や人となりがわかるのがいいですね。また、電話と違って時差が気にならないところもいい。フェイストゥーフェイスで会ったことがなかったのに、SNSで知り合って交流をもった人もいます」

オラクルでは、Oracle Applicationsによって世界中の全社員の社員情報や組織情報はただ1つの人事アプリケーションで統合管理されており、それらはLDAPサーバ経由でもアクセス可能だ。社内SNSでは、人事アプリケーションからこれらの情報を取得することで、CEOのLarry Ellison氏も含む全社員の最新の組織階層や社員情報(メールアドレスや電話番号など)に簡単にアクセスできる。社員検索システムとしても使えるというわけだ。「今後もオラクルは買収戦略を進めていくので、こういうツールがあると便利ですね。米国だと、営業拠点も数多くあり、国内でのコミュニケーションを図るのも大変なので、こういうシステムが必要だったのでは」と佐藤氏は推測する。

世界中のオラクル社員が登録されている佐藤氏の"People"画面

社外向けユーザには"Oracle Mix"

オラクルは、ほぼ同じUIで社外向けに「Oracle Mix(オラクルミックス)」というSNSも公開している。顧客、パートナー、オラクル社員の間でやりとりができるようになっているという。Oracle.comで登録すれば、そのメールアドレスとパスワードを利用してログインできるようになる仕組みだ。こちらもUIは英語だが、日本語にも対応しており、今後UIも日本語対応しようという話があるという。赤い「O」マークがついているのがオラクル社員、ないものが社外の人となっている。

社外のパートナーや顧客とオラクル社員の交流の場「Oracle Mix」は、Oracle Coneectとほぼ同じUIを使用。オラクル社員には赤いOマークが表示されている

開発者に質問することも可能だが、不適切な書き込みがあったら通報、削除対応するなど、社内SNSとは多少違う運用をしている。「日本オラクルでも、Oracle Mixを使ったインタラクティブなコミュニケーションを目指していて、技術者向けWebサイト「OTN Japan」や、2009年4月に開催するイベント「Oracle OpenWorld Tokyo」などのグループを開設しています。オラクルでは幸いなことに社内向けでも社外向けでもグローバルで利用可能なサービスがすでにあるので、うまくこれらを活用していきたいですね」(佐藤氏)

後編では、日本オラクルで展開されている社内ブログと、その効果について紹介する。

基本データ

特徴: グローバルな社内SNS、国内用の社内ブログ
使用製品: 自作
開始時期: 社内SNS(2007年8月)、社内ブログ(2006年3月)
利用者: 社内SNS: 数万人(Oracle全社員は7万人以上) / 社内ブログ: 250ID(日本オラクル社員3,000人)
ファシリテータ: 社内SNS: あり / 社内ブログ: あり
参加方法: 社内SNS: 1人1ID / 社内ブログ: 登録制
アクティブ率: 社内ブログ: 約10エントリ/日、約1,000アクセス/日