睡眠データを読めるようになろう

Apple Watchには、簡単な睡眠トラッキング機能が搭載されている。Appleがデフォルトで提供している機能は睡眠の長さを測定するといった最低限のものだが、サードパーティ製アプリを使えば、詳しく睡眠トラッキングを行うことができる。

睡眠トラッキング機能とは、睡眠時の体の動きや心拍の変化などを計測し、睡眠の状態を推測して記録する機能のことだ。睡眠を可視化し、ちゃんと回復する睡眠が取れているのか、睡眠に問題がないかなどを知ることができる重要な機能なのだ。

スポーツタイプやライフログタイプのスマートウォッチは、睡眠トラッキング機能が充実している。睡眠のステージまで計測し、睡眠の量と質まで教えてくれる。

  • 睡眠トラッキングのサンプル - 総合値(Polar Vantage V2)

    睡眠トラッキングのサンプル - 総合値(Polar Vantage V2)

  • 睡眠トラッキングのサンプル - 自律神経回復具合(Polar Vantage V2)

    睡眠トラッキングのサンプル - 自律神経回復具合(Polar Vantage V2)

  • 睡眠トラッキングのサンプル - 睡眠ステージ回復具合(Polar Vantage V2)

    睡眠トラッキングのサンプル - 睡眠ステージ回復具合(Polar Vantage V2)

  • 睡眠トラッキングのサンプル - 睡眠ステージ詳細データ(Polar Vantage V2)

    睡眠トラッキングのサンプル - 睡眠ステージ詳細データ(Polar Vantage V2)

計測した睡眠トラッキングデータは、スマートフォンアプリやWebブラウザから見たほうが詳しいデータを確認できることが多い。

  • Polar Flowアプリで睡眠ステージや睡眠ステータスを確認

    Polar Flowアプリで睡眠ステージや睡眠ステータスを確認

  • WebブラウザぁらPolar Flowクラウドで睡眠データを確認

    WebブラウザからPolar Flowクラウドで睡眠データを確認

初めて睡眠トラッキング機能を使って睡眠を記録すると、その記録をみて「おぉ」と思うのではないだろうか。最初は珍しさもあって何度か使うのだが、日常化するとチェックもしなくなる。最初にグラフを見て、なんとなくわかった気になったらもうあとは何もしない。それでは、意味がないのだ。

睡眠トラッキング機能を搭載しているスマートウォッチは多いが、睡眠の質を評価して数値化するものは少ない。睡眠データは人それぞれなので数値化が難しいというのがあるのだろう。記録された睡眠データは、本人が内容を理解して読み解く必要があるのだ。今回はその方法を簡単に紹介する。

睡眠にはいくつかのステージがある

まず、睡眠とは同じ状態が続くわけではなく、いくつかのステージを行ったり来たりしている、ということを知る必要がある。睡眠をどのようなステージ分けするかはいくつかの方法があるが、多くのスマートウォッチがステージを次の3つに分けている。

  • 深い睡眠
  • 浅い睡眠
  • レム睡眠

これに短時間の覚醒(睡眠の中断)を含めて4つと考えることもある。そしてステージごとに回復対象が異なるということを知る必要がある。それぞれを次に見ていこう。

深い睡眠

目を覚ますことが難しい状態が「深い睡眠」と呼ばれる。深い睡眠には次の特徴があると言われている。

  • 睡眠の前半に発生する。
  • 身体を回復させる。
  • 免疫システムをサポートする。
  • 筋肉の発達に影響する。
  • 記憶力や学習能力にも影響があると考えられている。

深い睡眠は身体の回復に強い関係があるステージと考えられている。寝始めに深い睡眠が長めに発生することが多い。

浅い睡眠

覚醒している状態と深い睡眠の間の状態が「浅い睡眠」と呼ばれる。より詳しく見ると、深い睡眠とレム睡眠の間の睡眠が「浅い睡眠」だ。浅い睡眠には次の特徴があると言われている。

  • 環境刺激に対する応答性が高く、容易に起きることができる。
  • 身体の回復を促す。
  • 精神の回復を促す。

「浅い睡眠」も身体および精神の双方に関与しているが、効果は「深い睡眠」と「レム睡眠」のほうがそれぞれ重要と考えられている。

レム睡眠

骨格筋はリラックスして休息しつつも、脳は活動して覚醒状態にあり、眼球が休息に運動している状態が「レム睡眠」と呼ばれる。レム睡眠には次の特徴があると言われている。

  • 睡眠の後半に発生する
  • 心的な回復を促す
  • 記憶力を伸ばす効果がある
  • 学習能力を伸ばす効果がある

筋肉はリラックスしているが、頭は活発に動いている状態だ。この状態は心的な回復に関与すると考えられている。

このように睡眠にはステージがあり、そのステージを行ったり来たりするといったことが睡眠中には起こっている。

睡眠ステージにはサイクルがある

寝ている時の「深い睡眠」「浅い睡眠」「レム睡眠」には一定のサイクルがある。

寝始めは「浅い睡眠」から「深い睡眠」へ移っていき、しばらく「深い睡眠」を経るとその後は「浅い睡眠」を経て「レム睡眠」へ至る。そのあとはこのサイクルを一晩で4回ないしは5回ほど繰り返す。繰り返しの中で、前半ほど「深い睡眠」が長く、後半ほど「レム睡眠」が長くなる。

  • 筆者のある晩の睡眠トラッキングデータ - ステージのサイクルを確認

    筆者のある晩の睡眠トラッキングデータ - ステージのサイクルを確認

上記のスクリーンショットは筆者のある晩の睡眠トラッキングデータだ。前述したサイクルが5回発生している。寝始めに深い睡眠(紫色)が長めに発生し、後半に行くほどレム睡眠が増えている。典型的な睡眠サイクルパターンを示している。

睡眠には「安定性」がある

気が付かない方も多いと思うが、睡眠中は毎日のように頻繁に睡眠の中断が発生している。中断していたことを覚えてないことが多く、朝まで寝続けていると感じることが多い。90秒を超える睡眠の中断の合計値は一晩あたり平均で15分ほどになると言われている。先程のスクリーンショットだと、橙色のバーが睡眠の中断だ。結構頻繁に中断が発生していることがわかる。

睡眠の中断がなく、実際の睡眠時間割合が長いほど質の良い睡眠(安定した睡眠)となる。成人の平均値では睡眠時間から中断した時間を差し引いた場合、その割合は93%になると言われている。中断している時間が短く、この値が100%に近づくほど質がよく安定した睡眠と判断される。

大切なのは「深い睡眠」「レム睡眠」「睡眠の中断」の割合

ここまで来ると、睡眠トラッキングログの読み方がだいぶわかってきただろう。そして最後にこのデータがどうなっていれば「良い睡眠」なのかを知る必要がある。重要なのは前述したようにサイクルを描き、前半に深い睡眠、後半にレム睡眠がそれぞれ長めに発生し、そして睡眠全体におけるそれぞれの割合がある値に近いかどうかで判断できるとされている。それぞれ次のとおりだ。

【深い睡眠】 成人は平均で睡眠時間の約15%が「深い睡眠」になると言われている。この値が17%になるともっともスコアが高くなる(Polarの場合)。17%以上になってもスコアは伸びない。

【レム睡眠】 成人は平均で睡眠時間の約21%が「レム睡眠」になると言われている。この値が25%になるともっともスコアが高くなる(Polarの場合)。25%以上になるとスコアは低くなる。

【睡眠の中断】 長く中断のない睡眠が質のよい睡眠(安定した睡眠)と言われている。睡眠中の中断回数と中断のパターンで判断される。比較は過去のデータとの比較で評価されるべきだが、回数が少なく中断の合計時間が短いほど良い睡眠とされている。

自分の睡眠を読んで分析してみよう

中には、睡眠トラッキングデータを過去の自分の睡眠トラッキングデータと比較し、睡眠を数値化してくれるものがある。こうした機能は特にPolarのスマートウォッチに搭載されている機能が優秀だ。過去28日間の自分の睡眠データと統計データを用いて睡眠を数値化してくれる。次のスクリーンショットは数値化された睡眠トラッキングデータだ。

  • Polar Flowアプリによる睡眠トラッキングデータのスコアチェック

    Polar Flowアプリによる睡眠トラッキングデータのスコアチェック

  • Polar Flowアプリによる睡眠トラッキングデータのスコアチェック

    Polar Flowアプリによる睡眠トラッキングデータのスコアチェック

このデータを見ると、この晩の睡眠は次のような状態だったことがわかる。

  • 深い睡眠が十分あり、身体の回復が進んだ
  • レム睡眠が若干少なく、心的な回復が弱
  • 睡眠の安定性が低く、何度か目が覚めている
  • 睡眠時間がいつもより長い

上記のPolarの分析では、総合値(睡眠スコア)は70だ。Polarの睡眠スコアは典型的には70~85になるとされており、だいたい典型的な睡眠の範囲内だったことになる。まずは、このように自分の睡眠トラッキングデータを読めるようになることが大切だ。目安となる割合はわかっているので、睡眠サイクルの状況とそれぞれの割合から内容を読み解くことができる。

次は改善につなげる

睡眠トラッキングデータがある程度読めるようになったら、次のステップとして、読み取った内容を睡眠の質の向上へ結びつける段階に入る。これに関しては、別の回で詳しく取り上げるが、スマートウォッチを使い出したらぜひこの「睡眠の質を向上させる」ことに取り組んでもらえればと思う。優れた睡眠は優れた仕事に直結する。ぜひとも取り組んでもらいたいところなのだ。

例えば、本稿で一番最初に取り上げたFlow Appアプリのスクリーンショットには次の睡眠トラッキングデータが掲載されていた。

  • ある晩の睡眠トラッキングデータ

    ある晩の睡眠トラッキングデータ

睡眠サイクルは5回、前半に深い睡眠、後半のレム睡眠は伸びずに短い、といったことがわかる。このグラフから、前の晩に飲みすぎたことがわかる。睡眠データは個人に依存するが、それでも大枠の傾向はこれまでの計測から明らかになっており、上記のような睡眠サイクルを描く時は寝る前に泥酔していた可能性があることがわかっており、実際よく飲んでいた。レム睡眠をもっとしっかり取りたければ、もうちょっとお酒の量を控える必要がある、ということがわかるのだ。

しかし、改善へ結びつけるには、それなりにデータを積む必要がある。まず、睡眠トラッキング機能を使い出したら前の晩の睡眠がどんな具合だったのかを読む習慣をつけるところからやってもらえればと思う。

なお、今回まとめたデータの多くは「Sleep Plus Stages睡眠状態のトラッキング | Polar Japan」の内容に基づいている。Polarのスマートウォッチが搭載している睡眠トラッキング機能について説明したページだが、睡眠そのものに関しても、要点が簡潔にまとめられておりわかりやすい。より詳しい内容はこちらのページを参考にしてもらえればと思う。

参考

;;link;; https://news.mynavi.jp/article/smartwatch-for-business-4/ https://news.mynavi.jp/article/smartwatch-for-business-3/ https://news.mynavi.jp/article/smartwatch-for-business-2/ https://news.mynavi.jp/article/smartwatch-for-business-1/