生活する上で必要なものにくっつける

電車通勤の一部を徒歩に変えることは、健康維持のテクニックとして挙げられることが多い。しかし、朝は時間がないし、帰りはもう歩く気力がない人も多いだろう。「早く帰りたい」「飲み屋に寄っていきたい」と思うのが人情であって、そうした中で歩く気力というのはなかなか出てこないものだ。

しかも、新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークが普及したこともあり、出社が大幅に減っている。そうなると通勤を徒歩に置き換えるという戦術はそもそも成り立たないのだ。

方法はなんでもよいのだが、最も大切なのは運動を定期的に続けることであり、日常の一部として習慣化できるかどうかにかかっている。運動といっても身構えることはなく、まずはウォーキングに挑戦しよう。無理やり言葉に落とし込むなら「大切なことは当たり前のように毎日歩くこと」だ。このことを生活の一部として、考えなくても毎日やっている状態にすることが望ましい。

それには生活する上で必須なこと、生きていくために毎日やっていることにウォーキングをくっつけると続きやすいように思う。

食事や食料に結びつける

生きていく上で食事は欠かせない。もし、「食料を配達で入手している」「食事をほとんど外食や出前でとっている」、そして移動はすべて自動車やバイクといった生活をしているなら、以下のように変更してみよう。次のような感じで考えるとよいと思う。

  • 歩いて買い物へ行く
  • 歩いて外食へ行く

外食は朝食、昼食、夕食と時間がある程度決まっているはずだ。買い物は、生活のなかでルーティーン化してしまうとよいだろう。例えば、「昼食を食べたら腹ごなしがてら買い物へ行く」「夕食前に買い物へ行く」「帰宅途中に買い物へ行く」といった感じだ。時間を決めてルーティーン化しておくと続きやすい。

スーパーマーケットはトレーや牛乳パック、ペットボトルの回収を行っているところも多い。使って出てきたトレーや牛乳パックを回収ボックスに入れるために毎日スーパーマーケットへ通う習慣をつけてもよい。手段はどうあれ、毎日行う生活に必須な行動にウォーキングを結びつけていこう。

減らしたい脂肪量でお店を選ぶ

ここからがスマートウォッチの出番だ。歩く距離が長ければそれだけ消費される脂肪も増える。体重が多い、または増加傾向が続いているなら、お店までの距離を長くして消費される脂肪を増やせばよい。実際に計測して、どのお店をターゲットにしておけばいい具合に燃焼が進むかを設計しておこう。

筆者は、次の4つのお店へ実際にウォーキングして消費カロリーを計測してみた。

場所 状況
コンビニA 徒歩20~30秒ほどのすごく近くのコンビニエンスストア
コンビニB 徒歩10分ほどのちょっと遠くのコンビニエンスストア
スーパーA 徒歩10分ほどのちょっと遠くのスーパーマーケット
スーパーB 徒歩25分ほどの小高い丘の上にあるスーパーマーケット

計測結果は次のとおりだ(計測にはPolar Vantage V2を使用)。

  • コンビニA - 近くのコンビニ

    コンビニA - 近くのコンビニ

  • コンビニB - ちょっと遠くのコンビニ

    コンビニB - ちょっと遠くのコンビニ

  • スーパーA - 近くのスーパーマーケット

    スーパーA - 近くのスーパーマーケット

  • スーバーB - ちょっと遠くのスーパーマーケット

    スーバーB - ちょっと遠くのスーパーマーケット

一番近いコンビニは20メートルも歩けば着く。その次のコンビニが片道700メートルほどで、一番遠いスーパーが片道1.8kmといったところだ。当たり前だが、距離が遠くなればなるほど、時間もかかり消費カロリーも増えている。どのお店が自分の目的に合っているか、計測データから計算してみよう。

1年間でどれだけ脂肪が燃えるかを計算しよう

まず、計測結果を整理してみたい。上記の結果の場合、次のようなデータになる。なお、安静時の消費カロリーは自分の基礎代謝が2300kcalほどなので、これを基に計算した。

実際の安静状態をスマートウォッチで計測して、安静時の消費カロリーを出してもよいだろう(脂肪消費割合を掲載したが、脂肪消費割合が表示されないタイプのスマートウォッチはこの項目はなくてもよい)。

場所 時間 消費カロリー 脂肪消費割合
(安静時) 60:00 96kcal 80%
コンビニA 3:20 12kcal 80%
コンビニB 20:33 102kcal 72%
スーパーA 24:32 108kcal 75%
スーパーB 54:50 308kcal 69%

比較しやすいように、それぞれのデータを1時間分にそろえる。例えば、コンビニAの場合なら、3分20秒はコンビニAに行って買い物をした時の消費で、残りの56分40秒は安静にしていたものとして計算して1時間分とする。脂肪は1gで9kcalとされているので、消費カロリーのうち脂肪燃焼分をグラムに換算したものを追加してある。次のようになる。当然だが、遠いお店ほど消費カロリーが多い。

場所 時間 消費カロリー 推定燃焼脂肪量
(安静時) 60:00 96kcal 8.5g
コンビニA+安静 60:00 103kcal 9.1g
コンビニB+安静 60:00 165kcal 13.8g
スーパーA+安静 60:00 165kcal 14.0g
スーバーB+安静 60:00 316kcal 24.3g

上記データの推定燃焼脂肪量は、消費カロリーのうち脂肪が使われたという割合も加えて計算してある。しかし、消費カロリーのうち脂肪燃焼割合がどの程度が表示されないスマートウォッチも多い。あくまでも参考値なので消費カロリー(kcal)をそのまま9で割ってグラムに換算してもよいと思うし、安静時またはチンタラウォーキング時の脂肪が使われる割合が8割から7割くらいなので、消費カロリーに0.8から0.7あたりを積算してそれを9で割って脂肪のグラムを出してもよいと思う。

毎日同じスーパーへ買い物に行く、または毎日同じお店で外食をすると考えて、上記データを365日分に置き換えると次のようになる。

場所 365回分の推定消費脂肪量 安静時との差分
(安静時) 3.1kg
コンビニA+安静 3.3kg 200g
コンビニB+安静 5.0kg 1.9kg
スーパーA+安静 5.1kg 2.0kg
スーバーB+安静 8.9kg 5.8kg

1年間で安静時1時間が3.1kgの脂肪消費になっている。コンビニAに通った場合は3.3kgだ。年間で200gだけ消費脂肪量が増えることになる。コンビニAではなくコンビニBにすれば年間で1.9kg追加で脂肪が使われることになり、これをスーパーBに置き換えると年間で5.8kg追加で脂肪が使われることになる。

仮に最近年に1kgペースで太っている(脂肪が増えている)のであれば、利用するコンビニをコンビニAからコンビニBへ変えるだけで、年間で900gの除脂肪が期待できることになる。

もちろんこれはあくまでも参考値だ。実際にこの計算のように体脂肪が落ちるわけではないと思うが、指針としてはわかりやすい。1年間で減らしたい脂肪の量を定め、それを1回当たりのウォーキングで消費したい脂肪量へ換算し、それを満たすお店を選ぶ。あとは毎日の習慣としてそのお店へ歩いて通えば、計算通りならその分だけ除脂肪が進むことになる。

重要なのは実際に測ってみること

前回も触れたが、重要なのは実際に歩いて測ってみることだ。それぞれ筋肉量や脂肪量、代謝などさまざまな要素が異なるので、実際に測ってみないとわからないことが多い。スマートウォッチを持っているなら、他人の値を使うのではなく自分の値を使ったほうが得策だ。

それにウォーキングは気分や歩きやすさ、雰囲気も大切な要素になる。毎日歩くのに楽しい道、季節ごとに雰囲気が変わる道、街灯の雰囲気がよい道、桜がきれいな道、自動車量が多くて危ない道、狭くて危ない道、信号機が多い道、これは実際に歩いてみないとわからないことが多い。

好みの雰囲気の道が見つかったらもうけものだ。毎日の買い物や外食もそれだけで楽しみが増えるというものだし、気持ちがよいものだ。スマートウォッチをお持ちの方はぜひ実際に計測して計算してもらえればと思う。