話を戻して、画像29で紹介している4ジャンルのロボットの内、人間共存型産業用ロボットを除いた、移動作業型ロボット(防災ロボットはまた別)、人間装着型ロボット、搭乗型ロボットが生活支援ロボット実用化プロジェクトの対象のロボットとなる。移動作業型は移動中心と自律中心の2種類に分かれるので、画像27のように4ジャンルとなるわけだ。

そしてサービスロボットを含めた各種機械に関する国際安全規格体系について。画像42は、ISO13482も含めたピラミッド型の安全規格体型だ。このピラミッド型は「ISO/IECガイド51」と呼ばれるもので、ISO13482が含まれるのが底辺のC規格「個別製品安全規格」だ。ちなみにここには、工作機械、化学プラント、溶接機、FAロボット、無人搬送機、プレス機、自動車などの規格も含まれる。

画像42。各種機械に関する国際安全規格体系

その上のB規格「グループ規格」は、「ISO13849」のシステム安全規格、「ISO13855」の安全距離規格、「IEC61508」の機能安全規格、「IEC61496」のセンサ安全規格が含まれる。この内、機能安全規格はわかりそうでわからない言葉なので少し触れておくと、よく例に出されるのが、今回の会場となったつくば市役所のすぐ近くも通っているつくばエクスプレスだ。

つくばエクスプレスの地上部分はすべて高架となっており、踏切は一切ない。高架にすることで日照権問題とか、街中に死角が生じることで犯罪が起きやすくなるとかのデメリットもあるわけだが、踏切事故は一切なくなる。これを「本質安全」という。踏切事故に対して、踏切を一切なくすことで踏切での事故が絶対に起きなくしてしまうという考え方である。

それに対し、踏切に遮断機を設け、列車の接近時に警報とともに遮断桿が下りるようにして通行を制限するなどなどの仕組みを設けることを、機能安全という。踏切そのものはあるわけで、踏切での事故が起きる可能性をゼロにはできないが、可能な限り事故が起きないようにするという考え方である。

なので、サービスロボットを利用する上で、さまざまな事故が考えられるわけだが、例えばアームなどがあって関節に指を挟んでケガしてしまう可能性が考えられる場合、本質安全でいったら「関節をなくす」ということになる。それだと機能面で問題が出てくる可能性があれば、関節部分は子どもの指ですら挟む心配がないような仕組みを作るとか、挟んでも痛くない程度の低出力のサーボモータを使用するとか、そういうことが機能安全になるというわけだ。機能安全規格とは、そうしたどのぐらいの事故が考えられて、どのぐらいの機能的な安全性を考慮すればよいかというものを定めたものである。

なお、安全に関しての考え方は3段階あるという。まずは本質安全設計として、モータなどの出力を下げるなど、なるべくケガをさせない方向で考えることからスタートさせる。しかし、モータの出力を下げてしまうとロボットとして役割を果たせないこともあり、それを避けるためにはどうしてももっと出力のあるモータを使うケースが出てくるので、そういう時は機能安全設計を行うというわけだ。そうやってケガしないように備えても、残留リスクというのはどうしても出てしまうので、それは運用で対応していくことになる。マニュアルでしっかり明記して、してはいけない使い方とか、こういうことをするとケガをする危険性があるといったことを書くわけだ。さらに、運用の中には教育・講習などもある。

そして頂上のA規格「基本安全規格」には、「ISO12100」の基本安全規格、「ISO14121」のリスクアセスメント(特定、分析、評価の3要素をまとめたリスクマネジメントに関するプロセス全体のこと)規格が含まれ、まさに安全の基本、原理、原則を定めたものというわけだ。