「ウイルス作成罪」とは、悪意を持って不正プログラムなどを作成(そのほか、提供、取得、保管)した際に罰せられる犯罪のこと。2011年に可決、施行された「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律」(いわゆる「サイバー刑法」)に盛り込まれている。

「ウイルス作成罪」の正式名称は「不正指令電磁的記録に関する罪」で、コンピュータウイルスを「意図に沿った動作をさせず、不正な指令を与える電磁的記録」と定義。研究など正当な理由がないのにもかかわらず、「作成・提供」した場合は3年以下の懲役または50万円以下の罰金刑、「取得・保管」した場合は2年以下の懲役または30万円以下の罰金刑となっている。

「ウイルス作成罪」が成立する以前、日本国内には犯罪目的のウイルス作成や配布を直接取り締まる法律がなかった。例えば、2008年に作成者が逮捕された「原田ウイルス」では、ウイルスにテレビアニメの画像を使用した「著作権法違反」、個人の写真などを使用した「名誉棄損罪」が適用された。

また、同一人物が執行猶予期間中に作成した「タコイカウイルス」では、被害者のパソコンのハードディスクを使用不能にする点から「器物損壊罪」との判断が下されている。このような経緯を経て、ようやく犯罪目的のウイルス作成を罪として問えるようになったのだ。

2012年1月、コンピュータウイルスを作成して知人を陥れようとしたとして、大阪府警が「ウイルス作成罪」を適用する事例が発生した。報道によれば、容疑者が運営するWebサイトに誹謗中傷を書き込む不正プログラムを作成し、他のWebサイトに埋め込んだ疑いがあるという。容疑者がプログラムの作成を認めたことから「ウイルス作成罪」の適用に至っている。

近年、コンピュータウイルスによる攻撃やネットワークを悪用した犯罪など、サイバー犯罪は増加の一途をたどっている。セキュリティ対策が急務となる中、「ウイルス作成罪」の新設は、ユーザーにとって心強い味方となってくれるのか。今後の動向に注目したい。