みなさまはSAPコンサルタントという職種をご存じでしょうか。NTTデータ グローバルソリューションズ(以下、NTTデータGSL)は、NTTデータグループ内のSAPソリューションの中核企業として2012年に設立され、多くのSAPコンサルタントやエンジニアを擁して、特に製造業のお客様を中心にサービスを提供してきました。

本連載では、NTTデータGSLの中で培われてきたSAPコンサルタントの強さや特徴をお伝えしていきます。日本の製造業のお客様をご支援する魅力を少しでも感じていただけると幸いです。

なぜコンサルタントが必要なのか?

SAPソリューションは、ERP製品をはじめとしたパッケージソフトウェアと、HANA Enterprise Cloudに代表されるインフラサービスがあります。本稿では、SAPの代表的ソリューションであるERPの導入を前提とします。

SAPのERPソリューションには、大規模での展開もカバーする「SAP S/4HANA」と、中堅中小企業向けの「SAP Business ByDesign」がありますが、いずれもパッケージとして位置づけられています。これらはグローバルにおいてデファクトともいえるシェアを誇るとともに、日本企業、特に製造業において多くの顧客を獲得しています。

しかしながら、ERPソリューションには業務プロセスが内包されており、さらに会計などでは法的に要求される機能も実装しなければならず、導入の際には企業の業務プロセスへどう適用すべきか、どのように法的な対応すべきかなど、検討するべき点が多岐にわたります。そのため、解決すべき経営課題を明確にし、業務要件とERPソリューションの特性を理解したうえで、いかに実現するかを設計する必要があります。

ERPのメリットを生かす形で実装するためには、単にシステム設計の知識があるだけでは十分な検討を行えず、お客様の業務や法的な側面を理解し、ERPソリューションをどのように適合させるかを検討しなければなりません。ここにコンサルタントが求められる要素があるのです。

ファーム系コンサルタントとSAPコンサルタントの違い

コンサルタントというと、いわゆるコンサルティングファームのコンサルタントを思い浮かべる方も多いでしょう。では、コンサルティングファームのコンサルタントとSAPコンサルタントはなにが違うのでしょうか?。

端的にいうと、コンサルティングファームのコンサルタントは、純粋に経営課題や戦略から検討し、それを実現する手段を当初から想定しないのに対し、SAPコンサルタントはより具体的な業務要件をSAP ERPソリューションで実現することを前提に最適な設計、実装、そして運用までをカバーするという点で違いがあります。前述のようにSAP ERPソリューションはデファクトスタンダードとなっており、システムの検討はSAP ERPソリューションの検討ともいえます。そのため、当初からSAP ERPソリューションに対する検討を行ったほうが、よりよい実現手段に至る可能性は高いといえるのです。

従来は既存の業務をそのままERPパッケージに反映させようとし、個別のアドオンの開発やカスタマイズを行った結果、SAPソリューションのメリットを十分に享受できなくなったという経緯もありますが、日本においてもERPが普及してすでに20年以上が経過し、同時にERPソリューションの機能は充実してきています。標準機能でも日本企業が求める要件に十分対応できるようになり、現在では「Fit To Standard」のアプローチで、世界中の企業のベストプラクティスが反映されているともいえるERPパッケージの標準機能を可能な限り活用するという考え方が一般的になってきています。

これからのシステム化において、ERPのパワーを100%発揮するためには、SAPソリューションを熟知したコンサルタントが支援することがなお一層求められてきているのです。システムの導入や、その後の運用までを常に念頭に置いた業務要件の見直しをすることで、投資効果を最大化することができるのです。

NTTデータGSLのSAPコンサルタントの特徴

以上のように、SAPコンサルタントはコンサルティングファームのコンサルタントとは異なる役割と価値を提供しますが、NTTデータGSLのSAPコンサルタントはどのような特徴を持つのでしょうか。以下にポイントをまとめてみます。

1:グローバル展開に強い

多くの日本企業は業種を問わずグローバルでビジネスを展開しています。例えば製造業では生産拠点だけでなく、各地域の市場に合わせた設計、開発から調達、生産、販売までを行う拠点も増えています。また、海外での販売比率が日本よりも高いということも珍しくありません。

それはコロナ禍の現在およびその後のニューノーマル時代においても同じであり、むしろより柔軟なグローバル経営が求められます。しかしながら、グローバルにおける各拠点のビジネスデータを一元管理し、様々な状況に応じて迅速な対応ができる環境にある企業はまだまだ少ないのが現状です。

NTTデータGSLのSAPコンサルタントは、自身のグローバルビジネスの経験とともに、グローバルのNTTグループのSAPコンサルタントと連携し、グローバルビジネスの最適化を支援します。また、NTTデータGSLでは米国が本社の外資系コンサルティングファームと異なり。日本主導でのグローバル展開が可能になります。

2:周辺ソリューションにも強い

企業の情報システムはERPだけで完結するわけではありません。設計やPLMから物流や顧客管理など、その範囲は多岐にわたります。また、それらのシステムは異なるメーカーによるパッケージソフトウェアや、内製のアプリケーションなど多様です。これらを連携して業務プロセスを統合するとともに、蓄積されたデータを活用するための基盤を構築することで、迅速で正確な意思決定の支援も行います。

ERPソリューションの枠組みだけでなく、アプリケーション、データ、インフラストラクチャの各レイヤにおいて、各システムのセキュリティを担保しながら連携し、活用する基盤を構築するのも大きな特徴です。NTTデータグループの他の企業と連携を行うことで、幅広い対応を行うことも可能です。

3:運用も想定した設計

設計、構築フェーズでは運用フェーズのことを想定して進めることが求められます。ERPソリューションは導入して終わりではなく、業務プロセスの変更や法改正への対応などのアプリケーションの保守や、インフラの運用などの長期にわたる運用保守のフェーズが始まります。

導入時のシステム設計において運用保守を想定していないと、実運用のフェーズに入ってから運用費用が大きくなったり、業務に支障が出たりこともあり得ます。

NTTデータGSLは導入から運用保守までをワンストップで支援するため、設計時にも運用保守に関するノウハウを盛り込みながら、円滑な運用フェーズへの移行を実現します。SAPコンサルタントは導入だけではなく、実際にお客様に価値をもたらす運用保守フェーズも含めた知見を持っているのです。

以上のように、SAPコンサルタントはコンサルティングファームのコンサルタントとは異なる立ち位置と知見により、より現実的な経営上の意思決定や業務課題の解決を支援し、真のデジタルトランスフォーメーションの礎を築く支援をするのです。

次回以降は、実際のコンサルタントの事例をもとに、より具体的な側面をお伝えしていきます。

著者プロフィール

𡌶俊介(はが しゅんすけ)
大学卒業後、1994年、日系の監査法人系コンサルティング会社に入社。SEとして会計システム構築および社内システムの構築を担当。
2001年、日本マイクロソフト(現)に入社、主に製造業向けプリセールスや製品マーケティングを約10年にわたり担当。
2010年、デスクトップ仮想化やアプリケーション仮想化ソリューションを提供している最大手のシトリックス・システムズ・ジャパンに入社、約7年間にわたり、アライアンスやマーケティングを担当。
2018年より、NTTデータグローバルソリューションズに入社し、事業戦略推進部副推進部長として、マーケティング全般、人材育成に携わる。現在に至る。