こんにちは。アートユニットのゼロバイゼロです。メンバー全員が会社で働くかたわらで活動していて、光や水、音など自然物をテーマに作品を作っています。

これまで作ってきた作品の一部。腰掛けると揺れて波紋が広がるベンチ「Isles」(左)、THERMOSから発売されたスピーカー「VECLOS」ムービーの製作に参加(右)

デザイン界隈では毎年話題になる一大イベント「ミラノ・サローネ国際家具見本市(以下、ミラノ・サローネ)」。海外のデザインイベントの代表格として知られてはいますが、実際に参加したという人はあまり多くないかもしれません。僕たちは今年、ミラノ・サローネの1イベントで、若手デザイナーの登竜門「サローネ・サテリテ」に縁あって出展させていただきました。

日本にいてもミラノ・サローネの情報は入ってきますが、やはり現地に行ってみて初めて分かること、デザイナーがミラノに足を運ぶことの意義も非常に多くありました(そこにたどり着くまでに、日本では遭遇したことのない壁にぶち当たりましたが…)。

そこでこの連載では、僕たちが出展者目線で綴ったミラノ・サローネレポートを4回に分けてお届けします。

ミラノ・サローネとは

ミラノ・サローネとは、4月にイタリア・ミラノ市で開かれる、世界最大の家具の見本市です。家具に限らず生活に関わるありとあらゆるものが集まるデザインの見本市とも呼べる展示会です(詳しくはこの記事を参照)。

サローネ・サテリテとは

サローネサテリテ(以下サテリテ)とは、ミラノ・サローネ国際家具見本市(以下サローネ)に含まれるイベントの1つです。

そもそも、サローネはカッシーナ、カルテルなど世界的な大企業のブースがひしめくビジネス展示会で、出展のハードルは非常に高く、僕らのような活動規模で参加にこぎつけるのはまず不可能です。そこで、若い才能のための登竜門として、サローネ会場の一部を開放して行われているのがサローネ・サテリテ(以下サテリテ)です。

実は昨年も僕たちはミラノに来ていたのですが、この時は日本のデザインイベント「Tokyo Design Week」のミラノ・サローネ出張版への参加でした(会場も別)。この時ご一緒したデザイナーの先輩・AUN2H4の稲垣さんから勧められたのがきっかけです。かつて稲垣さんもサテリテに出展したことがあり、経験に基づく出展のメリットと、「35歳まで」という年齢制限を教えてもらったのが大きなインパクトでした。

何せ、僕たちはメンバー全員が30代で、挑戦できるリミットが近かったんです。また、ちょうど世に出して行こうとしていた製品のプロトタイプをブラッシュアップしていた段階だったので、この時「2016年はサテリテに出したい」と思うようになりました。

音に反応するスティック型照明「Kvel」。グラスに立てることで光のゆらめきを楽しむことができるようにしたもので、この時はプロトタイプを展示していました

佐藤オオキ氏も受賞した「世界にはばたくためのアワード」

サテリテでは、会期中にサローネ・サテリテ・アワード(以下アワード)という、出展者の中から1位~3位を決定するイベントがあります。これを受賞したデザイナーはメディアに大きく取り上げられるほか、商品化の補助など、デザイナーとして独立するための大きな援助を受けられます。受賞が一流デザイナーの仲間入りを意味するといっても過言ではなく、そのために世界中から若きデザイナーが集まるのです。

これまでに受賞した日本人もたくさんいます。例えば、今年のサローネでは世界的家具メーカーのカルテルとコラボレーションしていたデザインオフィスnendoの佐藤オオキさんをはじめ、デザイン事務所のトネリコやYOYなどが代表的なところ。現在はデザイナーとして世間を賑わしている彼らも、サテリテアワードを契機に世界へ羽ばたいていったのです。僕たちは、このアワードでチャンスをつかむことを一番の目的として申し込みました。

次回は、イタリア・ミラノという場で展示するにあたってぶち当たった「壁」についてお話します。