本連載では、小売や製造、飲食などさまざまな業界で取り組んでいる「映像データによる“現場DX”」の具体例を現場担当者の声と共にご紹介していきます。各業界にはどのような課題があるのか、そこで映像データを活用し、どのような効果が見られたのか。今回は、飲食店とサービス業の現場です。

“3分提供”を映像で確認し、オペレーションを磨き上げる焼肉ライク

“焼き肉のファストフード” をコンセプトに新規出店数を伸ばし続けている一人焼肉の先駆け「焼肉ライク」。首都圏を中心に国内86店舗 (2022年8月現在)を展開するなど、コロナ禍でも成長著しい同社は、映像データの活用による業務効率化を実現している飲食店です。

焼肉ライクでは1人1台の無煙ロースターが用意されており、自分のペースで自由に一人焼肉を楽しめることを売りにしています。店舗によってはセルフカウンター方式を採用し、会計もセルフレジで行えるため、周囲の目が気にならないというメリットもあります。

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同社では、クラウド録画カメラをレジや金庫などセキュリティが重要な箇所だけでなく、厨房やホール全体を見渡せる場所にも複数台設置しています。撮影した映像データは音声と共にインターネット経由でクラウドにリアルタイムで保管され、PCやスマホで確認できます。クラウド録画カメラの導入は、2店舗目以降を展開する際に検討し始めたそうです。

「1店舗目は代表からマネージャーまで総動員でブランドをつくりますが、2店舗目以降は人に任せなければいけません。2店舗目を展開するタイミングで、現場で店舗の状況を把握することに限界を感じ、遠隔からでも様子を確認できるカメラの導入を検討し始めました」(同社マネージャー)

マネージャーは日々の業務の空き時間にスマホから、開店時にスタッフが揃っているか、お客さまが来ているか、閉店作業がきちんと終えられているかなどを確認。リモートで店舗スタッフを見守っています。

  • セキュリティ重点箇所だけでなく、厨房やホール全体にもクラウド録画式カメラを設置

焼肉ライクのコンセプトの1つに「注文を受けてから3分以内に提供する」というものがあり、オペレーションの徹底と、従業員の接客内容のさらなる向上を目的に映像を活用しています。本部で開催される店長会議では、映像データを検証し、その週の各店舗のお客さまへの平均料理提供時間を算出してランキングを作成。ランチ時の忙しい時間帯など、同日同時間帯に各店舗の映像を切り取り、部署のメンバーが計測を担当しています。

「会議で確認するのは、“3分提供”ができているかどうか、接客トークに抜け漏れがないかといった点です。自席だけで完結するセルフオペレーションシステムなので、お水の位置などの説明が徹底できているかを確認する必要があるのです」(マネージャー)

また、同社ではアンケートを活用しお客さまの声を収集。回答内容を基に、現場映像データを確認することで、接客の向上に活かしています。

「映像が記録されていれば、お客さまからのクレームがあった際に事実確認ができます。映像は従業員を守る役割を果たしてくれます。またクレームばかりではなく、『◯◯さんの接客が良かった』とお褒めの言葉をいただくこともあり、それは従業員にフィードバックしています」(マネージャー)

このように、現場映像データは、オペレーションや接客の向上のみならず、店舗スタッフを守ることや、店舗スタッフとのより良いコミュニケーション実現にも活用されています。