「研究費」と聞いて若手研究者や学生の方が頭に思い浮かべるのは、一番馴染みのある科研費ではないでしょうか。しかしながら、研究費と一口に言っても実はさまざまな種類のものがあります。そこで本連載では、日本国内における各種研究費について紹介していきます。

第2回は、府省庁および国立研究開発法人からのトップダウン型の研究費について、前回に引き続き、学振・科研費書類の書き方のコツをまとめたサイト「科研費.com」を運営されている方に解説いただきます。


研究費には、研究者が自由にテーマを設定できるボトムアップ型と国の方針により研究テーマがあらかじめ決まっているトップダウン型に大別できます。前者の代表は科研費であり、後者は「さきがけ」「CREST」などがあります。

科研費は最も身近な研究費ですが、平成28年度の科学技術振興費、約1兆3000億円のうち2300億円にすぎません。つまり、1兆円以上の研究費は科研費以外です。また、全体の額だけでなく1件あたりの配分額が高いのも、トップダウン型の研究費の特徴です。特に近年は、ひとつのプロジェクトで科研費の規模を超えるような超大型プロジェクトも現れています。

代表的なトップダウン型の研究費

これらの研究費も科研費と共に府省共通研究開発管理システム(e-Rad)を通じて応募できます。ここでは平成27年度の競争的資金制度のうち代表的なものに限って紹介しますが、それでも膨大な量です(表1)。

<表1> 平成27年度の競争的資金制度

かつての内閣府の「ImPACT」「FIRST」「NEXT」などのように、単年度もしくは数年の間だけ募集するような打ち上げ花火的な研究費も多いうえに、研究目標が決まっているので応募するためにはタイミングも重要となります。トップ研究者ともなると、自ら省庁訪問をして自分の研究に合うプロジェクトを立ち上げてもらうよう働きかけるそうですが、大半の研究者にはそういう芸当はできませんので、自分の研究分野に関する募集が出ていないかアンテナを常に張り巡らせることが重要です。

とはいえ、これだけ種類があるとチェックするだけでも大変ですので、自分の研究分野の研究者がどのような研究費を得ているかを把握し、それらを重点的にフォローするとよいでしょう。

ここでは、20年以上も継続しており、採択課題数が多く、若手研究者が応募可能な「さきがけ」とその医療系版の「AMED-prime」について説明します。

さきがけ

科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業のひとつである「さきがけ」は、我が国で運営されているあらゆる研究制度の中でも、多方面に工夫が行き渡り、若手研究者の育成および世界レベルの研究の両面で非常に高い成果を出し続けている個人型の研究支援制度です。

さきがけに採択されると3年半の研究期間で3000万円~4000万円の研究費を貰うことができます。採択者の平均年齢は約36歳であり、これまでの最年少は博士課程の大学院生だったようです。博士研究員(ポストドクター)でさきがけを取る人は珍しくありません。大体の職位で言うと、博士研究員~准教授くらいまでがほとんどです。

ちなみに、戦略的創造研究推進事業の別プロジェクトである「CREST」の採択者の平均年齢は50歳弱ですので、准教授~教授がほとんどであり、若手が代表となることは、稀です。

AMED-prime

日本医療研究開発機構(AMED)は日本版NIHの創設を目指し作られた独立行政法人です。これに伴い、JST「さきがけ」や「CREST」などを始めとする医療事業はAMEDに移管されました。

そのため、JSTは工学(技術開発)・農学、AMEDは医学・薬学というような役割分担となっています。基礎生命科学(ライフサイエンス)がどちらに属するかは非常に微妙であり、現時点ではJST・AMEDどちらにも領域が立っていませんが、こうした混乱は落ち着いていくことと予想されます。

AMED-primeはさきがけのAMED版ともいうべきもので、トップダウン型である点、期間が3年半で3000万円~4000万円の研究費がもらえる点など、多くの点で類似しています。

著者プロフィール

生物学系・旧帝大教員
2016年4月より科研費.comを運営。
科研費.comでは、大学院生・応募経験が浅い若手研究者・なかなか採択されない方を対象として、科研費をはじめ、学振や海外学振・奨学金・教員公募書類などの申請書の書き方のコツを解説しています。ちょっとしたコツを学ぶことで、採択の可能性は大きく上昇します。