樹脂パーツに表面仕上げを施す理由はさまざまな機能を実現するためです。例えば、しっかりしたグリップ感を実現するとか、指紋が 目立たないようにする、塗装の「のり」を良くするなどがあります。Protomold射出成形では、7種類の表面仕上げから選ぶことができます。7種類のうちの5種類が金型の磨き、2種類がシボ加工によるものです。マシン加工されたままの粗い状態から、手作業での磨きによる鏡面磨きまで5種類を選択でき、シボ加工の場合には、600番のグリッドストーン仕上げの後、ビーズブラストによる処理をします。

Protomold射出成形のシボ加工では、軽いビーズブラストによる処理(T1) と中程度のビーズブラストによる処理 (T2)を選択できます。シボ加工を行う上では、さまざまな要素を考慮する必要があります。代表的な要素は、パーツに求められる機能です。シボ加工をすることで、反射を抑えた、きれいな表面に仕上げることができます。必要とされるグリップ感の程度によって、シボ加工のレベルを選択することになります。他の 要素もあります。他のパーツと組み合わせるために、パーツの外観に2次加工を施す必要がある場合などもそうです。

使用する材料によってはシボの選択にも影響してきます。例えば、ポリプロピレンのようなオレフィン樹脂は、ろうのような感触になり、湿度が高いと滑りやすくなることがあります。この状態は、表面に適切なシボ加工をすることで、改善することができます。つまり、樹脂の選択肢を広げることにも繋がるのです。 もう一つ、樹脂の選定とシボを関係付けるものは、「ヒケ」です。ほとんどの場合、微妙なヒケであれば、一般的にはそれほど深刻な問題にはなりませんが、シボ加工を施ことによって、さらにヒケを目立たなくさせ、見栄えをよくすることができます。ヒケを改善するには、以下のいずれかの形で対処することができます。

  1. パーツの肉厚を薄くしてヒケが出ないようにする。
  2. 収縮率の低い材料を選びできるだけヒケが起きないようにする。
  3. シボ加工を施し、ヒケを目立たないようにする。

最も深刻な問題となりえるのは、シボ加工を施した表面が、型に張り付いてしまうことです。金型が開く方向に対して直角、またはほとんど直角なシボ加工面であれば、この心配をする必要はありません。しかし、金型が開く方向と平行な場合には、シボの細かいデコボコが、細かなアンダーカットのように作用し、このようなパーツは無理に抜くことになるため、金型のシボ加工面の尖った部分がパーツの表面を引っ掻いて、傷をつけてしまいます。Protomoldで、このようなかじりを防止するには、T1のシボ加工の場合には抜き勾配を少なくとも3度、T2のシボ加工の場合には、5度の抜き勾配 をつける必要があります。(スライドを使用する場合には、この抜き勾配は必要ありませんが、スライドを動かす方向に対する抜き勾配が必要になります。)

図1:オプションの選択と同時にリアルタイムで価格が更新されるProtoQuote。(サンプルを参照)

ProtoQuote見積りでは、3D CADデータを解析して成形性を図解した結果を提示します。シボ加工面を認識しませんが、シボ加工に対して必要な抜き勾配がついているかどうかを判別します。抜き勾配が充分でない面に対しては、3度以下は赤で、3度以上5度以下の場合には黄色でハイライトします(図2参照)。これにより選択したシボ加工に対して充分な抜き勾配 がついているかがわかるのです。例えば、パーツの面の中に黄色い面があれば、それはT1のシボ加工であればOKだが、T2は不可ということになります。赤い面が存在していれば、パーツの設計を見直すか、または、その領域ではシボ加工を行わない、という選択をする必要があります。

図2:赤で示された領域の抜き勾配は3度以下であるため、シボ加工を施すことはできません。

上記も含め、樹脂に関する基本情報は、プロトラブズ樹脂部品設計ガイドの「樹脂の選定」でも紹介しています。

シボ加工について、もう2点ほど留意していただきたいことがあります。まず、一般的にいって、パーツの一部分だけに、シボ加工を することはできないということです。(固定側と可動側は、別々に表面仕上げを指定できますが) ただ、シボ加工をしたくない領域をマスキングした上でビーズブラストをすれば、パーツの一部だけにシボ加工ができる可能性があります。もう一点は、ビーズ ブラストができない領域にシボ加工をすることはできない、ということです。

本コラムは、プロトラブズ合同会社から毎月配信されているメールマガジン「Protomold Design Tips」より転載したものです。