Q
部下の報告の仕方に困っています。一生懸命話をしているのはわかるのですが、お世辞にもうまい報告とは言い難く、話を聞いているうちにイライラしてくる自分に気付いて反省することもあります。そんな気持ちを抑えて指導してはいるのですが、なかなかうまくいかず、どうすればいいのかなぁ……と考えているうちに部下の報告が終わってしまう、ということを繰り返しています。報告下手な部下に対するいい指導方法はあるのでしょうか?(埼玉県 TYさん)
トレーニングを続ける
報告とは、相手の知りたいことで欠落している情報を埋める、ということで成立します。そこで、上司がどのような情報を欲しているのかを常に部下に教える、ということも必要になってきます。これは一種のトレーニングです。情報の重要性、報告時の優先順位というものを判断するトレーニングを、"報告"というアウトプットに向けてトレーニングしていくわけです。
具体的なトレーニング方法ですが、非常に効果のある手法として、報告時間を3分に限って話させるというものがあります。もちろん、その後で充分な時間をとって構わないのですが、まずは毎回3分でまとめることで、話すスキルを向上させます。
訓練のための時間などなかなか取れないはずですから、OJTでの指導を工夫することで、よい緊張感を持たせるべきです。ストップウォッチで時間を計るといったことを行ってもいいかもしれません。ちょっと露骨でやりにくいかもしれませんが、あらかじめ意図を伝えておけば、部下も受け入れてくれるのではないでしょうか。
最近ではICレコーダーの普及もあり、誰でも手軽に録音をすることができるようになっています。3分間の報告を録音し、それを部下と一緒に聞き、どこを直せばいいのかを部下自身に考えさせてみてはいかがでしょう。これは、上司が一方的に「○○を直せ」と指摘するよりも効果的です。
やや大掛かりになりますが、ビデオで収録する方法も客観視できるという観点からお勧めです。会議室などを使いながら「時間を重要視している」という演出をすることで、トレーニング効果を高めます。
忙しい中でイライラしてしまうという気持ちは理解できます。しかし、「自分は評価するだけ」というスタンスではなく、部下に対して「上司としてできる限りの支援をする」という心構えでいる方が、長い目で見ると良い結果を生むことを頭に入れておいてください。
メンバーの報告のスキルを上げるには、上司、部下の歩み寄りやメンバー間の協力が必要です。リレーション強化、タイミング最適化、トレーニング反復の3つを意識して、職場のチーム全体で取り組んでみてはいかがでしょうか。
おススメの1冊
論理的な話し方が身につく本 ストーリーの組み立てから説得テクニックまで 西村克己著 PHP研究所刊
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本書は、話し方からプレゼンまで、ビジネスマンにとって身に付けておくべき技術が数多く取り上げられています。報告に限ったものではありませんが、「話す」ということはまず、「話す内容自体を自分がどう考えるか」ということから始まります。次に「表現をどうするか」という順序になるのですが、このような話し方の基本を学ぶことで、ストーリーの組み立て方に変化を持たせることができるようになります。35の小テーマに分かれているので、1つずつ指導に生かしてもいいかもしれませんね。
執筆者プロフィール
佐藤高史 (Takashi Sato)
株式会社コラージュ代表取締役。ビジネスコンサルタントとして人材教育・研修などで活躍する傍ら、実はプロのミュージシャンとしても活動中。
『出典:システム開発ジャーナル Vol.6(2008年9月発刊)』
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。