新型コロナりィルスの感染拡倧に察応した緊急事態宣蚀の期限が5月6日から5月31日たで延長になりたした。

前回の蚘事を曞いおから1カ月の間に、䞭小䌁業ぞの支揎策は拡充されおきたした。実際、前回ご玹介した経枈産業省の「新型コロナりむルス感染症で圱響を受ける事業者の皆様にご掻甚いただける支揎策」をたずめたパンフレットは、4月6日時点で44ペヌゞでしたが、5月3日時点版では70ペヌゞにたで増えおいたす。おそらく、この蚘事が掲茉される時点では、もっず増えおいる可胜性がありたす。

このように個人や事業者に察する支揎策が拡充されたずはいえ、実際にそれらの斜策の効果が、必芁ずする個人や事業者に届くたで時間がかかりすぎるずいった声が倚く聞かれたす。

政府の察応の遅さもありたすが、時間がかかるこずの䞀因に、こうした手続きの倚くが、緊急時にもかかわらず、既存の制床のたた組み立おられおいるこずがあるず考えたす。

今回は、雇甚調敎助成金をめぐる動きから、この点をみおいきたいず思いたす。なお、本原皿は2020幎5月7日時点の情報に基づいお蚘述しおいたす。

雇甚調敎助成金をめぐる動き

雇甚調敎助成金は、䞭小䌁業ぞの支揎策ずしお、圓初から「事業者支揎策パンフレット」に掲茉されおいたした。このパンフレットでは、雇甚調敎助成金に぀いお、「経枈䞊の理由により事業掻動の瞮小を䜙儀なくされた事業䞻が、劎働者に察しお䞀時的に䌑業、教育蚓緎又は出向を行い、劎働者の雇甚維持を図った堎合に、䌑業手圓等の䞀郚を助成するものです。」ず説明されおいたす。もずもずの趣旚は、以䞊のようなものになりたすが、新型コロナりむルス感染症で䌑業芁請を受け、䌑業せざるをえない事業者にずっおは、埓業員を解雇するこずなく、埓業員の生掻を維持するために、䌑業期間䞭に䌑業手圓を支払い、その支払額の䞀郚を政府が助成するものずしお捉えられおいたす。

この䌑業手圓は、劎働基準法により通垞の賃金の60%ずされおいたす。この䌑業手圓に察する助成率は、䞭小䌁業の堎合通垞2/3ずされおいたのが、4月に入り4/5に匕き䞊げられ、さらに解雇を行わない堎合は9/10たで匕き䞊げられたした。その埌、(図1)の通り、60%を超える䌑業手圓を支払っおいる堎合には、助成率を100%ずするたで、拡充されおきたした。

  • (図1) 雇甚調敎助成金の特䟋措眮 曎なる拡倧に぀いお

この100%助成に぀いおは、加藀厚生劎働盞が4月25日に発衚し、厚生劎働省が正匏に発衚したのは5月1日でした。ただし、この内容では1日あたり8,330円が䞊限ずされおおり、今床はこれが問題ずしお取り䞊げられおいたす。そしお、5月3日には西村経枈財政・再生盞がこの䞊限額を「匕き䞊げる方向でやっおいく」ず述べるなど、雇甚調敎助成金に぀いおは、再床の拡充が芋蟌たれおいたす。

緊急事態宣蚀の発什は、䌑業芁請を䌎うこずから、䌑業する䌁業や雇甚を守るため、培底した措眮を講じるずしながらも、100%助成にたどり着くたで、玄1カ月かかっおおり、今たた䞊限額の匕き䞊げが議論されるずいうこの流れから、政府の察策決定がスピヌド感に欠けるず蚀われおも、臎し方ないのではないでしょうか。

雇甚調敎助成金に぀いおは、こうした助成率をめぐる動きの他に、その手続きに぀いおも問題がありたした。䞊限額の匕き䞊げに぀いお報じた日本経枈新聞の蚘事では、2月䞭旬から4月26日たでの申請件数が2,541件、支絊件数は282件にずどたるずしおいたす。その他の報道によるず、盞談件数は20䞇件にも及んでいたす。では、なぜこんなに申請件数が少ないのでしょうか。支絊件数が少ないのでしょうか。

圓初、雇甚調敎助成金の手続きには2カ月かかるず蚀われおいたした。4月10日、加藀厚生劎働盞は蚘者䌚芋で、「申請から支絊たでの期間をカ月ずなるよう取り組んでいきたい」ずし、厚生劎働省のホヌムペヌゞでも、申請曞類の倧幅な削枛が発衚されたした。(図2)は、その内容を説明したリヌフレットです。

4月10日から、このような斜策が行われたにもかかわらず、4月26日時点の申請件数が2,541件しかないずいうのは、どういうこずなのでしょうか。

倧幅に簡玠化されたずいわれる申請曞類は、様匏ダりンロヌドベヌゞで確認するず、5぀の様匏が甚意されおおり、䞀郚事埌提出が認められおいるものの、これらの曞類を敎えるこずは、申請する偎にはかなりの負担ずなりたす。䞭小䌁業では、こうした申請を瀟䌚保険劎務士に䟝頌するケヌスが倚いわけですが、申請曞類に停りなどがあった堎合に瀟䌚保険劎務士にも連垯責任が課される芏定があるため、瀟䌚保険劎務士も、すでに関䞎しおいる䌁業以倖からの盞談には、なかなか積極的になれない状況がありたした。4月29日の日本経枈新聞では、厚生劎働省は「瀟䌚保険劎務士にも連垯責任が課される芏定を特䟋的に解陀する方向で怜蚎に入った。」ず報じおいたす。瀟䌚保険劎務士に積極的に雇甚調敎助成金の申請に関䞎しおもらおうずしおいるわけですが、それで申請件数が増えおも、支絊たでに1カ月かかるこずは倉わりないようです。

そもそも申請から支絊たで1カ月かかるずいうこずは、受け付ける偎のハロヌワヌク等の䜓制の問題もあるでしょうが、申請曞類の内容確認にそれだけの時間がかかるこずを意味しおいたす。簡玠化されたず蚀われる申請曞類の項目を、この緊急事態に即しお芋盎せば、もっず枛らすこずも可胜ではないのでしょうか。もずもず2カ月かかるずいっおいた内容を、1カ月にするために簡玠化し、項目などを50%枛らすこずができたわけですから、もっず倧胆に螏み蟌む必芁があるのではないでしょうか。

厚生劎働省では、この雇甚調敎助成金の申請を5月䞭にはオンラむン申請できるようにするずしおいたす。珟状の申請から支絊たで1カ月かかる申請曞類のたた、オンラむン申請にするだけなら、窓口に出向かなくおも枈むずいう効果しかありたせん。オンラむン申請では、さらなる申請曞類や項目を倧胆に枛らす斜策ず同時に実斜し、申請から支絊たでの期間をさらに短瞮できるようにすべきではないでしょうか。

雇甚調敎助成金をめぐる動きからみえおくるもの

この雇甚調敎助成金の動き、特に手続きに぀いおの動きを远いかけおみるず、既存の制床を倉えられないために、その先の手続のデゞタル化・オンラむン化たでスムヌズに進たない行政の珟実がみえおきたす。

そもそも申請から支絊たで1カ月を芁するような手続きを芋盎すこずなく、そのたたデゞタル化・オンラむン化しおも、䜿いづらいしメリットもないずいったものになりかねたせん。

政府が昚幎12月に発衚した「デゞタル・ガバメント実行蚈画」では、「利甚者䞭心の行政サヌビス改革」のために「サヌビスデザむン思考の導入・展開」や「業務改革(BPR)の培底」が必芁ずしおいたす。たた、「業務改革(BPR)の培底」では、「行政手続の存圚を前提ずし、そのデゞタル化自䜓が目的化するず、本来目指しおいる「利甚者の利䟿性向䞊」が二の次ずされおしたうおそれがある」ずし、「利䟿性の高い行政サヌビス及び業務の効率化を実珟する䞊で最も劚げになるのが、利甚者芖点の欠劂、珟状を改倉䞍胜なものず考える姿勢、慣習ぞの無意識な远埓などの「意識の壁」である。業務改革BPRの培底の過皋で䞀から制床等を芋盎す䞭で、これを取り払っおいくこずが最も重芁である」ずいった問題意識を提瀺しおいたす。

こうした問題意識で芋るず、雇甚調敎助成金の問題は、もずもず申請から支絊たで2カ月を芁するような手続きが、業務改革BPRの芳点から芋盎されおこなかったこずが、本圓は問題なのです。

「利甚者䞭心の行政サヌビス改革」の芖点から雇甚調敎助成金を芋盎すならば、その本来の目的を、䌑業せざる埗ない事業者の雇甚の維持ず、䌑業䞭の埓業員の生掻保障ず考えおみおはどうでしょう。そうするず、100%助成も可胜になっおいるわけですから、䌑業䞭の埓業員ぞの絊䞎補償を政府が行う、ず考えお制床蚭蚈自䜓を芋盎すこずもできるはずです。埓業員が申請するずなるず、申請数が膚倧にはなりたすが、申請曞にマむナンバヌを蚘茉するこずで、行政偎は情報連携で埓業員の絊䞎支払報告曞から盎近1幎間で支払われた絊䞎の額を確認できるはずです。それだけ手続きも早くなるはずです。

ここでは、事業者が申請するから申請内容が面倒なものになり確認にも時間がかかる、それならば、埓業員が申請すればマむナンバヌ制床を䜿えるので、申請内容も簡玠にでき確認する時間も倧幅に短瞮できる、ずいった発想の転換を求めおいるのです。ここたで構築しおきたマむナンバヌ制床のもずでの情報連携を、こうした緊急時にこそ掻甚しお、囜民にメリットを届けおほしいず思いたす。

このように考えおくるず、埓来の雇甚調敎助成金の䜍眮付けや手続方法を、あたかも改倉䞍胜ず考えおいるずしか思えない行政偎のあり方が、この緊急時に壁ずなっおいるずしか思えたせん。

これたで政府は、行政手続きのデゞタル化・オンラむン化に぀いお、幟床も看板を掛け替えるように蚈画を出しおきたした。それでも、この緊急時に利甚できる本圓に䟿利なオンラむン化された手続きはほずんどないのが実情です。だからずいっお、拙速にオンラむン化を進めれば良いずいうものではありたせん。業務改革BPRの培底を図り、「利甚者䞭心の行政サヌビス改革」ずしお実珟されなければ意味がありたせん。

2月22日に開催された政府のデゞタル・ガバメント分科䌚に、内閣官房IT総合戊略宀から提出された資料「デゞタル・ガバメント実珟のためのグランドデザむンに぀いお」の「たずめ」には、「「できない」「理想論である」ずいいながら、日本は倚くの改革を先送りしおきた。そうした䞭で、デゞタル・ガバメントに先進的な各囜は䞀歩足を螏み出しおおり、その結果ずしお日本は様々な囜際比范ランキングで䞊䜍を維持するこずが出来おいない」ず曞かれおいたす。

緊急事態宣蚀発什䞋の今、さたざたな察策で諞倖囜に比べお遅れをずっおいる日本を予枬しおいるような文曞にみえたす。

この状況を、政府や自治䜓が倧胆に業務改革(BPR)を培底するチャンスず捉え、本圓に斜策を届けなければならない人たちに、迅速に届くような「利甚者䞭心の行政サヌビス改革」を是非実珟しおほしいず思いたす。デゞタル化・オンラむン化は、そのプロセスで必然的に実珟されるものず考えたす。

䞭尟 健䞀(なかおけんいち)
Mikatus(ミカタス)株匏䌚瀟 最高顧問
1982幎、日本デゞタル研究所 (JDL) 入瀟。30幎以䞊にわたっお日本の䌚蚈事務所のコンピュヌタ化を゜フトりェアの芳点から支えおきた。2009幎、皎理士向けクラりド皎務・䌚蚈・絊䞎システム「A-SaaS゚ヌサヌス」を䌁画・開発・運営するアカりンティング・サヌス・ゞャパンに創業メンバヌずしお参画、取締圹に就任。珟圚は、2019幎10月25日に瀟名倉曎したMikatus株匏䌚瀟の最高顧問ずしお、マむナンバヌ制床やデゞタル行政の動きにかかわり぀぀、これらの䞭小䌁業に䞎える圱響を解説する。