今回は、進行中のテーマから外れて、時事ネタに近い話を取り上げてみたい。

海軍分野において、特に無人装備の普及が先行していたのが、対機雷戦(MCM : Mine Countermeasures)である。なぜか。

まず、時間がかかる辛気くさい作業で、しかもそれを敵地に近いところで行わなければならない。つまり危険性が高い任務である。しかも、機雷の掃討を行う場面では、発見した機雷ごとに、いちいち爆薬を仕掛けて吹き飛ばさなければならない。そんな物騒な作業なら、無人化したいと思うのは当然の展開である。

  • 米海軍の沿海域戦闘艦(LCS : Littoral Combat Ship)は、MCMミッション・パッケージのひとつとして、USVを用いるUISS(Unmanned Influence Sweep System)を備える。これはその名の通り、感応掃海を担当する Photo : US Navy

    米海軍の沿海域戦闘艦(LCS : Littoral Combat Ship)は、MCMミッション・パッケージのひとつとして、USVを用いるUISS(Unmanned Influence Sweep System)を備える。これはその名の通り、感応掃海を担当する Photo : US Navy

なぜ機雷捜索はUSVとUUVを併用するのか

もちろん、「無人化したい」と思っても、それを実現できる技術的基盤が整わなければ画餅で終わってしまう。だから、MCM分野の無人化は、まずROV(Remotely Operated Vehicle)による掃討あたりから本格化した。

ROVは母船とケーブルでつながれているから、自律制御の能力はなくても済む。母船に乗っているオペレーターが、ROVが備えるカメラの映像を見ながら操縦すれば良い。その代わり、ROVと母船を結ぶケーブルの長さによって、行動可能な範囲が制約される。よって、母船はそれなりに敵地に踏み込まなければならない。

その問題を解決するには、長時間の連続自律航行ができる無人ヴィークルが必要になる。そこで鍵を握るのは、測位・航法技術と、そこから得た情報に基づいてヴィークルを操縦する技術ということになる。

機雷が賢くなって、簡単にはだまされてくれなくなった。そのため、今は機雷を探し出して破壊する、機雷掃討が主流になっている。機雷の捜索では高周波の音波を出す機雷探知ソナーを使用するが、USVなら機雷探知ソナーを引っ張って対象海面を走り回る。UUVなら、ヴィークル自体に機雷探知ソナーを組み込んで対象海面を走り回る。

ただ、UUVの方が速度が遅い傾向にあるため、捜索には時間がかかる。低速で航行するから加速度の変化は少ないと考えられ、しかも航行時間が相応に長い。これは慣性航法システム(INS : Inertial Navigation System)の測位精度という観点からするとありがたくない。

また、海中を航行するUUVは無線通信を行えず、航行中のデータ送信は実現困難になる。だから、データを溜め込んでおいて帰還後に吸い上げるのが現実的となり、いささかリアルタイム性に欠ける。

  • 無人ヴィークルを活用するMCMのイメージ 引用 : US Navy PEO LCS

    無人ヴィークルを活用するMCMのイメージ 引用 : US Navy PEO LCS

米欧で進むUSVソナー搭載の最新試験

さて。2025年12月に相次いで、USVと機雷探知ソナーの組み合わせに関する発表が2件あった。

航空機用ソナーをUSVに転用(ノースロップ・グラマン)

ひとつは、ノースロップ・グラマンがAN/AQS-24機雷探知ソナーをMCM USV(Mine Countermeasures Unmanned Surface Vessel)に載せる取り組みを進めている件。この話の初出は2020年頃で、まず手始めとしてソナーの水中試験を実施した。そして2025年の秋にフロリダ州パナマシティで、実際にUSVにソナーを載せて実証試験を実施した。

AN/AQS-24は、プラットフォームを示す記号が“A”になっていることでお分かりの通り、本来は航空機搭載用の製品である。掃海ヘリコプターであれば、後部ランプから海面にAN/AQS-24を降ろして海中に没した状態として、それを曳航しながら走り回る。その仕掛けをUSVの後部甲板に移設すれば、USVでも同じことができる理屈となる。

AN/AQS-24が搭載するセンサーは、合成開口ソナー・HSSAS(High Speed Synthetic Aperture Sonar)と、レーザー・ライン・スキャナ。

このうちHSSASは、速力18ktまで対応できるとされる。それならUUVよりはるかに速いから、その分だけ迅速に捜索を実施できる。レーザー・ライン・スキャナの方は具体的な数字は示されていないが、やはり「高速オペレーションに対応」と謳われている。ソナーは凸凹を調べることしかできないが、レーザー・ライン・スキャナは識別のための光学映像を得られるとされる。

欧州連合チームが高解像度ソナーを実証

一方ヨーロッパでは、TKMSアトラスUK(旧社名アトラス・エレクトロニクUK)とクラケン・ロボティクスが組んで、2025年12月10日にイギリスのポートランドで試験を実施した。

こちらは、TKMSアトラスUKの11m級USV・ARCIMS(Atlas Remote Capability Integration Mission Suite)をプラットフォームとして、そこにクラケンの合成開口ソナーを、LARS(Launch and Recovery System)を介して載せた。使用したクラケンのソナーは、探知可能距離200m、深度300mまで対応、解像度は3m×3mとされる。小さな機雷を探すのに3m×3mの解像度で足りるのか、という心配はあるが。

  • 無人ヴィークルのうち、USVに関する構想を示した米海軍の説明資料。中段に、USVにAN/AQS-24などの機雷探知ソナーを載せることを示す図が含まれている。 引用 : US Navy PEO LCS

    無人ヴィークルのうち、USVに関する構想を示した米海軍の説明資料。中段に、USVにAN/AQS-24などの機雷探知ソナーを載せることを示す図が含まれている。 引用 : US Navy PEO LCS

なぜ“あえてUSV”を使うのか

もちろん、USVは海面を走り回るわけだから、存在は丸見えとなる(夜間行動に限定すれば、いくらか見つかりにくくはなるが)。隠密性ならUUVの方が優れているが、そこでUSVを使用することのメリットは何か。

まず、USVはUUVより速度が速いから、対象海面をより速く調べて回れる。そして、海面上を航行するから無線通信もできる。つまりデータのリアルタイム送信も可能である。もし敵に見つかって撃沈されることになっても、その前に収集したデータは受け取れると期待できる。

また、海面上を航行するUSVならGPS(Global Positioning System)みたいなGNSS(Global Navigation Satellite System)による測位もできるから、測位精度の向上も期待できる。ただしGNSSが妨害・欺瞞のターゲットになる可能性は考慮しなければならないが。

そしてヴィークルとソナーが別個になっていれば、AN/AQS-24がそうしているように、有人プラットフォームとセンサーを共用できる利点も出てくる。そしてUSVは、ソナーを降ろして別の用途に転用できる可能性も期待できる。

と考えると、機雷捜索にUSVを使用することにも相応の合理性があると思える。

井上孝司


鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。
マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナ4ビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。このほど、本連載「軍事とIT」の単行本第6弾『軍用通信 (わかりやすい防衛テクノロジー)』が刊行された。