今回も前回に引き続き、BAEシステムズでHMD(Helmet Mounted Display)付きのヘルメット製品を担当しているフィル・バーナバ氏に伺ったお話をもとに進めてみたい。第582回で、「2024国際航空宇宙展」(以下JA2024)においてBAEシステムズが展示していたHMDを紹介しているので、そちらも併せて御覧いただければと思う。
HMDでなければできないこと
前回にも説明したように、HMDには「どちらを向いていても情報を得られる」という利点がある。しかもその際に背景の映像と重畳できるから、状況認識の面でもメリットがある。
格闘戦用空対空ミサイルでは、シーカーの視野角を拡げて、オフボアサイト能力、つまり前方だけでなくもっと広い範囲で敵機を捕捉・交戦できる能力を持たせるのが一般的になった。すると、真正面ではないところにいる目標を指示する機能が必要になる。
そこでHMDが役に立つ。パイロットが敵機の方を見て、「HMDに表示されたレチクルを敵機に合わせたところでロックオン・発射」とすれば解決できる。これはすでに一般化している技術。
こうした事情からすると、将来の戦闘機ではHUDよりHMDという方向に進むと考えられる。その便利なHMDは、果たして戦闘機だけのものなのか。