本連載では日本ヒューレット・パッカード(HPE)のさまざまな社員の「こぼれ話」を綴ります。→過去の「マシンルームとブランケット」の回はこちらを参照。

夏の暑い時でも自動車を快調に走らせるための装備の1つにラジエータがあります。ラジエータは車のボンネットの中にあり、エンジンを冷却するための装置です。

前面から空気を吸引して金属の格子状の放熱板で、エンジンの熱で温度が上昇した液体を冷やして、またエンジンを冷却するという循環型の冷却装置です。ラジエータが不具合を起こすと、エンジンがオーバーヒートしてしまって、車は動かなくなってしまいます。

みなさんが使っているPCでも、時たまファンがブンブン回って冷却をしていることが分かると思いますが同じ原理です。実はこの機能は、サーバーでも空冷としてすでに標準的に使われており、CPU上にヒートシンクという金属の羽を付けて、サーバーの裏側にあるファンで風を送って冷やすものが一般的です。

  • マシンルームとブランケット 第19回

サーバーの冷却方法

サーバーを冷やす方法は、大きく分けるとヒートシンクによる空冷、水を循環させることによる水冷、サーバー自身を特殊な液につける液浸などがあります。

どれだけ冷やさないといけないのか?冷やすための装置の規模や費用はどれくらいか?エコシステムであるのはどれか?性能や用途、条件に応じて選択される冷却方法が違ってきます。

サーバーをラックに収納して運用している場合は、ヒートシンクによる空冷などが一般的で、スーパーコンピューターの世界では水冷が一般的なものとなっております。

しかし昨今サーバーでは、高性能化に伴いサーバーのエンジンであるCPUから放出される熱量が高くなってきて、今までのヒートシンクによる空冷の冷却方法では冷やしきれない状況となってきており、ますますこの傾向が強くなっています。また、一方で地球温暖化に配慮する必要があり、サステナビリティの観点も考慮された冷却方法が求められています。

HPEでは、スーパーコンピューターの水冷ノウハウや、通常サーバーで使われているヒートシンクによる空冷のノウハウを持っています。本連載の第1回の「米国人だけで行くとナメられるから来てくれ」~冷却ファン開発秘話 - 前編で、どのように冷却効果を上げるかのノウハウの1つです。もっと冷却を強めるにはということで、ジェットエンジンのような冷却ファンにまで開発するというこだわりようです。

スマートクーリングソリューションってどんなもの?

最新のサーバーでは、車のラジエータ技術と同様に、空冷でありながら液体を冷やして冷却する“スマートクーリングソリューション”という新しい冷却技術をHPEがリリースしました。この技術は、まさに車で使われているラジエータのような機能で、液体ループ型のソリューションです。

今までのサーバーではCPUに放熱板を付けて冷やす方法でしたが、この新しい製品ではCPUには冷却用のパッドがつけられ、サーバーの前面ベゼルの後ろにセットされる格子状の放熱板とそのCPU部分のパッド装置がチューブでつながっており、チューブの中には冷却液が入っています。

液体は、CPUの熱を吸収し格子状の放熱板で冷やされ、再度CPUの熱を吸収するといった循環型の仕組みになっています。この仕組みを取り入れることにより、高性能のCPUの発熱を、大きな設備投資をする必要もなく、簡単にしかもお手ごろな費用で導入できるところが魅力的です。

また、通常サーバーで導入する同じ環境でこの冷却方法が採用できますので、サーバーに取り付けるオプションだけで、外部の冷却装置は不要です。さらに、スマートクーリングによりファンの回転数を少なくでき、結果的に消費電力やCO2排出量の削減にもつなげることが可能です。

組込みソリューションでも利用可能

このソリューションは、みなさんの社内で利用されているITシステムに簡単に利用できるだけでなく、最近はエッジ環境ではカメラなどの画像を取り込み、現場のサーバーでリアルタイムでAI分析をするために高性能なCPUやGPUを搭載することが必要となっている傾向があります。

オプション追加できるスマートクーリングソリューションは、みなさんが開発・製造・販売しているソリューションで高機能なサーバーの冷却にお困りがございましたら、一度このスマートクーリングソリューションのサーバーオプションをご検討いただいても良いかもしれません。

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