本連載では日本ヒューレット・パッカード(HPE)のさまざまな社員の「こぼれ話」を綴ります。今回はWorkstyle Transformation(WX)についてです。

そもそもWXってなに?

皆さんはWorkstyleをTransformすると聞いて、どんなことを思い浮かべますでしょうか?

WXはWorkstyleとTransformationの造語で、日本語に直訳すると「働き方を大きく変化させる」という意味になります。要は、今の働き方を大きく変えて時代に合った新しい働き方を実現しましょう、ということです。

実は、ここには働くための環境の変化もそうですが、同時に“働く従業員一人一人の意識も大きく変化させましょう”、そんなメッセージが込められています。

時代とともに変化する環境

日本における働き方はここ数年で大きく変化してきています。そして働き方にはその時代の流行りや、社会状況に応じた特徴があります。

  • マシンルームとブランケット 第2回

    働き方の変遷

例えば、今から10年前では従業員はオフィスに出社することが前提で、自分自身の固定の席があったと思います。

毎朝9時に出社して決まった自分の席に着席し、定時の17時までオフィスで働く。ごく一部の特別な事情がある従業員のみ、週に1、2度テレワークが認められている企業もありましたが、基本的には“仕事はオフィスでするもの”という共通認識がありました。

また、仕事で利用するデータやアプリケーションは社内に閉じた環境でのみ利用が可能だったため、出社せざるを得ない大きな要因の1つとなっていました。こういった時代を働き方の原点として「創世期」と呼ぶことにしましょう。

ところが、2013年に7年後のTOKYO2020オリンピック・パラリンピックが決定し「働き方改革法案」が採択されてから、働き方にも徐々に変化が現れ始めます。創成期から脱却し「成長期」へと移っていきます。多くの企業がフレックスタイムを導入して時差出勤を推奨したり、テレワークも一部の社員のみならず、ほとんどの従業員が利用できるようになったりし始めました。

当然、従業員がテレワークをできるようにするためには、その環境も整えなければなりません。クラウドの台頭は、こういった働き方を支えるITの課題を解決してくれる大きな要因となりました。

具体的には、Microsoft Office 365のようなクラウドで利用できるオフィスアプリケーション、Microsoft TeamsやZoomなどのWeb会議ツール、いわゆるSaaS(Software as a Service)の活用が一気に浸透してきたのです。

さらに成長期からはオフィス、物理的な働く環境にも変化がもたらされます。フリーアドレスを導入することで、オフィス内においてもシーンに応じた最適な環境が選択できるようになりました。

1人で集中したい、複数人でディスカッションしたい、そういったシーンごとに生産性を高めるためのオフィスの仕組みが注目されています。

例えば、全従業員が同時に出社しないという想定により、座席の数を減らす一方で、そのスペースを活用して会議室を増やすことで、オフィスの目的を従業員同士のコミュニケーションをより活性化させる場へと変化させるような動きがあります。

強いられるテレワーク

2020年2月ごろから日本でも広がり始めたCOVID-19は、こうした働き方の時代に沿ったゆるやかな変化を急激に変化させることになります。人流・移動が制限されることでオフィスは一時的にクローズせざるを得なくなりました。

さらに、パンデミックが長期化するなかで、これまでテレワークを検討していなかった企業も、なんとかテレワークができるようにとビジョンや十分な検討時間もない中で環境を整備し始めました。

しかし、その場しのぎの対応は、そううまくはいきません。使い慣れないツールは時間をとるばかりで、ひとたび会議をすれば、ネットワークの問題で接続できないこともしばしば。今まで5分でできたことが場合によっては30分、1時間を要し、生産性を大きく損ねることになりました。

さて、こうした環境は本当に皆さんが望んでいたものだったのでしょうか?

せっかく企業として整えた環境もうまく活用できなければ意味がありません。企業としてビジョンをしっかり示した上での環境と、周りの環境に変化させられた環境では大きく異なります。

ここで1つ言いたいのは、冒頭でお話ししたように、働く環境の変化により“従業員一人一人の意識に大きく差が出てくる”ということです。

ここに企業側の大きな問題があると考えます。企業は、自社がどうあるべきかの方向性を示し、それに向かって環境を整備していかなければなりません。

そして従業員に自社のビジョンを理解させ、適応させる準備をしなければなりません。しかし、今回のようなCOVID-19という外部要因から“仕方なく”提供されるテレワーク環境は、従業員からするとただただ使いづらいものとなってしまいます。

結果としてCOVID-19の終息が見え始めると、生産性の観点からオフィス回帰(Back to Office)が自然な流れとなり、せっかく整えたテレワーク環境も活用されなくなってしまったのです。

  • マシンルームとブランケット 第2回

    生産性の観点からオフィス回帰の流れになっているという

WX実現に向けて

決してオフィスで仕事をすること、以前のような働き方に戻ることを否定しているわけではありません。

オフィスで対面により、仕事をすることには十二分にメリットがあります。しかし、今の時代のニーズ、社会情勢においてそれだけになってしまうのは、働く環境としての柔軟性に欠けていると言わざるを得ません。

例えば、今後COVID-19の第6波やそれ相当の災害が起こった際、再び同じこと、仕方なくテレワークをするようなことを繰り返す可能性があります。

災害だけではありません。育児や介護、通勤時間など従業員個々の生活の変化にも考慮する必要があります。それぞれの事情において、オフィスよりもテレワークの方が効率的、かつ効果的な場合があるはずです。

加えて、企業としては事業存続という観点も忘れてはいけません。働き方の高い柔軟性、多様性はサステナビリティ、事業継続につながります。

例えば、ある就活支援サイトで昨年実施した調査では、企業選びの軸に「希望の働き方ができるか(テレワーク)」が1位にランクインしています。

優秀な人材を確保していくことは事業存続において、とても重要なポイントであることは言わずもがなですが、企業価値を高めるためにはこうしたことにも目を向ける必要があるのではないでしょうか?

  • マシンルームとブランケット 第2回

    WXの概要

企業は従業員一人一人がいかに活躍できる環境かを考えビジョンを示した上で柔軟に働くことができる環境を提供し、従業員もそれをしっかり理解した上で意識を変えて活用していく。この2つが合わさって初めてWXが実現できるのではないでしょうか。

選択可能なハイブリッドワークを

これからはテレワークとオフィスのハイブリッドな働き方が主流になっていくと思われます。これがまさに働き方の「転換期」です。

SaaSの活用もさらに加速し、テレワークとオフィスのコラボレーションと同時に複数SaaSを使いこなしながら生産性を高めるということが求められます。そのためには、オフィスの在り方の見直しや、ゼロトラストといった新たなセキュリティ対策の必要性など、ますますWXを実現する要素が複雑化してきています。

そうした複雑な状況の中で、企業は従業員がそのシーンに併せて生産性の高い状況を作り出すための、“選択可能な働く環境”を提供することが重要となります。

  • マシンルームとブランケット 第2回

    今後は選択可能なハイブリッドワークが必要となる

弊社ではそうした皆様の課題を解決すべく、ビジョンの策定から導入支援まで幅広いソリューションをご用意しております。

今こそ改めて自社の働き方に目を向け、企業それぞれに適したWXの実現に向けて動き出すタイミングです。少しでも悩みや課題があればまずは弊社にご相談いただき、我々の経験が皆様のWX実現の一助になれば幸いです。

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