Flashアニメ作家・青池良輔がクリエイターになる方法を熱く伝授する連載「創作番長クリエイタ」。連載第10回では制作に使用するアプリケーションについて考える。

紙からデジタルへ

アイデアを形にする方法(第2回)キャラクターデザイン(第4回)脚本(第8回)、と考えてきましたが、そろそろ具体的に形にする方法を取り上げてゆきたいと思います。

アニメーションを製作するにあたり、パソコンを使えば個人でもかなりの物をつくれるようになりましたが、そこで使用するアニメーション制作用アプリケーションの種類はいろいろとあります。何を選ぶかというチョイスが将来的に「自分の作風」に影響を与えてくると言っても過言ではありません。なんにしろ使い初めるきっかけは「学校で習った」とか「初めて買ったアプリケーションがそれだった」とか「仕事で使ってた」とか受動的な場合が多い様です。一つのソフトにこだわらず、なんでもかんでも使いこなせればそれはそれでかっこいいのですが、全部使える環境を揃えるにはお金もかかりますし、思いどおりに使いこなせるようになるには時間がかかります。

制作アプリケーションはなにを選ぶべきか?

ざっと主立ったアプリケーションを考えてみても、大きく分けて2D、3Dというのはわかりやすいのですが、それぞれの特色まではすぐには判断しにくいはずです。僕自身、3Dはほとんどやらないので「Maya」だの、「lightWave」だの、「3D max」だの言われてもどれがいいのかわかりません。わかる範囲で、2Dでアニメーションが作れるメジャーなアプリケーションを上げてみましょう。

「表現の幅は無限大! 映像系王道!」 Adobe AfterEffects

Photoshopで作画して、AfterEffectsでアニメーションとして仕上げる方法が一般的。映像表現の可能性は幅広く、アート系のアニメーションが多く作られている。

「カジュアルなマルチプレイヤー!」 Adobe Flash

ウェブリッチコンテンツを作るというアプリケーション。タイムラインを利用してアニメーションを制作する。ネット等に向けたライトテイストのアニメーションが多い。

「プロに直結! アニメ専門!」 セルシス Retas Studio

アニメーションスタジオの制作過程をデジタル化したアプリケーション。工程別に準備された4つのツールを使い作品を完成させる。いわゆる「アニメ」制作ソフト。

と、それぞれに違いがあります。この他にも、日本ではあまりメジャーではないものや、フリーの物まで入れてゆくとむちゃくちゃいろいろあると思います。アプリケーションごとにそれぞれ特徴があり、「何が自分の作風に合うのか?」という事をちょっと考えてから使い始めても良いのではないかと思います。ただ、ぶっちゃけていえば、アプリケーションとユーザーの出会いは「一期一会」です。サイコロで決めても、「好きなあの子が使ってる」という理由で決めても、最終的には「諦めずに使い倒して自分のものにする」という点に集約されると思います。面白いコンセプトさえあれば「弘法筆を選ばず」なんてハッタリもかませるのではないでしょうか。

ただ学生の方達は就職に直結する場合も考えられますので、明確に希望する職種があるのであれば、そこで使われているツールを調べてマスターしてゆくのは賢い処世術でしょう。映像表現ならAftereffects、Web系ならFlash、アニメスタジオならRetas Studioという決め方でいいと思います。

ツールを使えるようになる一番の近道とは

参考までに書いておくと、僕のメインツールはFlashです。初めは「Director」というアプリケーションでアニメを作っていましたが、初めてのお仕事で『Flashでやってね』と言われたのがきっかけで、それから10年近くほとんどの作業にFlashを使っています。ただTV向けの仕事等では仕上げにAfter Effectsや「Motion」を、一部3Dには「Swift 3D」を使用しています。経験的にいうと、どのアプリケーションにしろある程度使える様になる一番の近道は『それしか持ってない』、『それを使わないとしょうがない』というにっちもさっちもいかない状況で使っていれば、いつのまにかなんとかなっているものだと思います。そういうプロセスを繰り返し、少しづつ使えるツールと表現方法の幅を広げてゆけばよいでしょう。

青池良輔


1972年、山口県出身。大阪芸術大学映像学科卒業後、カナダに渡り映像ディレクター、プロデューサーとして活動。その後、Flashアニメで様々な作品を発表。短編アニメやCFを多数手がける。最新作はDVD『CATMAN』(2008年)、『ペレストロイカ ハラペコトリオの満腹革命』(2008年)。『藤子・F・不二雄のパラレル・スペース DVD-BOX』(2009年)では、 谷村美月主演の実写作品「征地球論」の監督と脚本を担当。森永アロエヨーグルトのWebサイトで、最新Flashアニメ『GIRLS BATTLE アロ恵』公開中。