前回は仏教の哲学が考える、煩悩の仕組みとその扱い方について紹介しましたが、今回は「煩悩に対処する」という目的を支える心掛けのお話です。
煩悩から生じるさまざまな苦しみ。ブッダはそれらにまつわる4つの真理(四諦)を発見しました。(第68回)四諦の4つ目「道諦」は「自分の考え方や執着心をコントロールし、苦の原因となる煩悩に対処する方法がある」という内容でしたが、その具体的な方法をブッダは「八正道」という下記の8つのポイントにまとめて説明しています。
- 正見:物事やその変化(無常)をありのままに見る
- 正思惟:欲望や感情に振り回されるのではなく、論理的・合理的に思考する
- 正語:嘘や悪口、飾り立てた言葉や誤解を招く表現を離れ、役立つことや語るべきことだけを伝える
- 正業:他人の迷惑になることをしない・生命を害さない
- 正命:生活を正しく整える・他人の役に立つ行いをする
- 正精進:自分の良くないところは克服し良いところを伸ばすというような、心を鍛える努力をすること
- 正念:「こういう欲望がある」「こういう感情がある」といったように、自分の心や感覚の変化に気付く
- 正定:目標を正しく定め、集中して物事を行う(精神統一する)
「八正道」は悟りを開く修行方法として考えられたものですが、日常生活においても取り組むべき物事や周囲の人との関係を円滑に進め目的を達成する方法として、意識しておくと良さそうな要素が凝縮されているように思われます。
この中に特別な人しかできないような凄まじい苦行や、超人的な行いは1つもないからです。正しいレシピに沿って進めればおいしい料理が出来上がるように、正しい心構えの積み重ねで自分を良い方向に変えていくことができるというのが仏教の考え方です。
哲学ならではの普遍性や汎用性を持った「八正道」という教え。来年の目標を定めたら、その達成を支える行いとしてこれらも意識してみてはいかがでしょう。
■こむぎこをこねたもの、とは?
■著者紹介
Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。その後、「こむぎこをこねたもの その2」、「こむぎこをこねたもの その3」、「こむぎこをこねたもの その4」をリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。
「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。