今回は、プラグイン「krewSheet」のXrossモードについて紹介していこう。リスト形式で記録されているデータを「クロス集計表」に変換して、さまざまな分析を行う場合などに活用できる。Excelのピボットテーブルに慣れている方なら、すぐに使い方を覚えられるだろう。そのほか、シフト表の運用などにも応用できる。
データの一覧をクロス集計表(ピボットテーブル)に変換
kintoneのプラグイン「krewSheet」には、「Sheetモード」と「Xrossモード」の2種類のモードが用意されている。前回で紹介したのは「Sheetモード」に分類される機能だ。今回は「Xrossモード」の概要や使い方を紹介していこう。
「Xrossモード」は、データの一覧を「クロス集計表」に変換するときに利用するモードとなる。「Excelのピボットテーブルと同じような機能」と考えれば、その概要を理解しやすいだろう。
今回は、以下の図に示したアプリを使って、具体的な操作手順を紹介していこう。このアプリには、Tシャツの「販売数」がデザイン/色/サイズ/販売店で区分して記録されている。
これらのデータをもとに、「白色のTシャツは何着くらい売れているか?」、「各店舗における販売数は?」などを分析するには、データをクロス集計表に変換しなければならない。この作業を一瞬で行ってくれるのが、krewSheetの「Xrossモード」だ。
例えば、行に「色」と「サイズ」、列に「店舗」を配置して、それぞれのデータを集計すると、以下の図のような結果を得ることができる。
このように、各アプリに記録されているデータをもとに「クロス集計表」を作成してくれる機能が「Xrossモード」の概要となる。
「Xrossモード」の使用するための準備
それでは、具体的な操作手順を紹介していこう。「Xrossモード」を使用するときも、あらかじめ「krewSheet用の一覧」を作成しておく必要がある。今回の例では「クロス集計」という名前で、表示形式が「カスタマイズ」の一覧を作成した。
続いて、アプリにプラグイン「krewSheet」を追加し、krewSheetの設定画面を呼び出す。ここまでの操作手順は、これまでの連載で紹介した内容と同じだ。よくわからない方は、先に第1回~第3回を一読しておくとよいだろう。
その後、krewSheetのシリアルナンバーを入力すると、以下の図のような設定画面が表示される。最初は「Sheetモード」の設定画面が表示されているはずだ。これを「Xrossモード」に切り替える。以下の図に示した部分をクリックし、「Xross」を選択する。
すると、設定画面が以下の図のように変化する。「Xrossモード」を使用するときは、この画面で各種設定を行っていけばよい。
クロス集計表(ピボットテーブル)の作成手順
続いては、「Xrossモード」の基本な使い方を紹介していこう。Excelの「ピボットテーブル」とよく似た操作手順になるため、ピボットテーブルに慣れている方なら、すぐに使い方を覚えられるはずだ。
まずは、データを集計するフィールドを「値」エリアに指定する。今回の例では「販売数」の集計表を作成したいので、「販売数」のフィールドを「値」エリアにドラッグ&ドロップする。その後、「歯車」のアイコンをクリックする。
「値」エリアの設定画面が表示されるので、「集計」タブを選択し、集計方法を選択する。集計方法は、合計/個数/平均/最大/最小/一意のデータの個数(重複を無視したデータの個数)の6種類の中から選択できる。今回の例のように「合計」を求めるときは、初期設定のまま「OK」ボタンをクリックすればよい。
続いて、「どのフィールドを基準にデータを区分するか?」を指定する。今回は、Tシャツの「色」と、販売した「店舗」で区分する場合を例に操作手順を紹介していこう。「行」エリアに「色」のフィールドをドラッグ&ドロップする。その後、「列」エリアに「店舗」のフィールドをドラッグ&ドロップする。
これで基本的な設定作業は完了。設定画面に表示されているプレビューを確認し、問題がなければ「アプリを更新」をクリックする。
データの一覧画面に戻ると、「色」と「店舗」で区分したTシャツの「販売数」が集計されているのを確認できる。
これで「どの色のTシャツがよく売れているのか?」、また「店舗によって販売数はどれくらい違うのか?」などを分析できるようになる。
クロス集計表(ピボットテーブル)のカスタマイズ
続いては、作成したクロス集計表(ピボットテーブル)をカスタマイズするときの操作手順を解説していこう。各エリアの書式を変更するときは、krewSheetの設定画面を開き、行/列などに配置したフィールドの「歯車」アイコンをクリックする。
すると、各エリアの設定画面が表示される。行や列に配置する「見出しの文字」を変更したいときは、「全般」タブにある「カスタムラベル」の項目に好きな文字を入力すればよい。
さらに、「書式」タブで表示形式を指定したり、「フォント」タブで文字の書式や背景色を変更したりすることも可能となっている。
もちろん、行や列にフィールドを追加して、階層のあるクロス集計表にすることも可能だ。例えば、行に「size」のフィールドを追加すると、行の区分を「色」→「size」に階層化したクロス集計表を作成できる。
最後に「アプリを更新」をクリックすると、クロス集計表のカスタマイズは完了となる。行や列を階層化した場合は、「+」や「-」のボタンで下位レベルの表示/非表示を切り替えられるようになる。以下の図は、「白」、「紺」、「緑」のデータだけを展開して表示した例だ。
このように、クロス集計表をカスタマイズするための設定画面も用意されている。もちろん、分析する内容に応じて、行や列に配置するフィールドを入れ替えても構わない。
集計元データの表示
クロス集計表の各セル(集計値)を選択した際に、その「集計元データ」を表示する機能も用意されている。続いては「集計元データ」の表示方法を紹介していこう。この場合は、krewSheetの設定画面で「デザイン」タブにある「詳細の表示」をONにしておく必要がある。
すると、プレビューが上下に2分割され、上に「クロス集計表」、下に「集計元データ」の領域が表示されるようになる。「集計元データ」として表示する内容は、下側のプレビューをクリックして選択し、各フィールドをドラッグ&ドロップして配置していけばよい。
その後、「アプリを更新」をクリックすると、「集計元データ」を表示可能なクロス集計表にカスタマイズできる。
以下の図は、「緑色、Mサイズ」&「Web」の販売データを選択した様子だ。画面の下部に、その集計元データが表示されているのを確認できるだろう。この集計元データにある「フィルター」ボタンをクリックして、集計元データを並べ替えることも可能となっている。
このように、区分別の「集計値」だけでなく、その集計元となるデータも手軽に一覧表示できるようになっている。Excelにもピボットテーブルを作成したり、各集計値の詳細データを表示したりする機能が用意されているが、それと同等の処理をkintoneでも実現可能になる。
「行列変換ビュー」の活用
最後に「行列変換ビュー」について簡単に触れておこう。こちらは、データを集計しないで、一覧表の配置だけを変換するときに活用できる機能となる。言葉で説明するだけでは理解しにくいと思うので、具体的な例を紹介しておこう。
以下の図は、社用車の予約管理を行うアプリを作成した例だ。それぞれの車両を「誰が、いつ使用する予定か?」を予約・管理するアプリとして運用したいが、このままではうまく機能してくれない。
というのも、「どの車両に、いつ予約が入っているか?」を一目で確認できないからだ。このままでは予約が重複してしまう可能性も十分に考えられる。そこで、krewSheetを使って、これらのデータをカレンダー形式の一覧表にカスタマイズしてみよう。
この場合も「Xrossモード」を使用する。今回はデータを集計する(合計や平均などを算出する)必要がないので、「行列変換ビュー」を選択する。あとは、行/列/値に適切なフィールドを配置していけばよい。
続いて、「デザイン」タブにある「小計」や「総計」をクリックし、集計行や集計列を表示しないように設定を変更する。これで基本的な設定は完了となる。
よりカレンダーらしく表示されるように、もう少しだけ設定を変更しておこう。列(日付のフィールド)の設定画面を開き、「データのないアイテムを表示する」をONにする。すると、データが登録されていない日付も一覧に表示されるようになる。そのほか、この画面には、一覧に表示する日付の「期間」を指定したり、年/月/日を分けて日付を「多段表示」にしたりする項目も用意されている。
さらに、各フィールドに書式を指定し、「縞模様(行)」と「条件付き書式」(空白以外のデータを黄色の背景にする)を指定すると、データを以下の図のように一覧表示することが可能となる。
これなら「どの車両を、誰が、いつ使用する予定か?」を一目で確認できるはずだ。さらに、この画面のままデータ(予約者)を変更したり、新しい予約を登録したりすることも可能となっている。
その操作手順は、各セルの▼をクリックして「変更後のデータ」を選択し、「保存」をクリックするだけ。これで「変更後のデータ」をアプリに反映させることができる。
このように、状況を一目で確認できるように「データの一覧」をカスタマイズする場合にもkrewSheetが活用できる。社員やアルバイトの「シフト表」などにも応用できるだろう。
ということで、計4回にわたってプラグイン「krewSheet」の概要や使い方を紹介してきた。kintoneをExcelのように扱えるだけでなく、アプリの運用方法も大きく変えてくれるプラグインであることを実感できたはずだ。気になる方は、krewSheetの公式サイトでも情報を集めてみるとよいだろう。