2023年1月20日、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)は、レーザを活用した誘雷技術の開発に成功したというプレスリリースを発表した。では、レーザによる誘雷とはどのようなものだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。
EPFLが開発した「レーザ誘雷技術」とは?
レーザ誘雷技術とは何だろうか? その紹介をする前に、まず誘雷について紹介したい。
積乱雲から雷が落ち、停電や森林火災を引き起こしたり、人の命を奪ったり。そんなニュースを耳にすることがあるだろう。実に年間で約2400人が、雷によって命を落としているというデータもあるという。もし雷を回避できれば、このような惨劇は減少させることができる。では、どのように雷を回避するか。誘雷技術とは、言うなれば"雷を落としたい時に落としたい場所に落とす"という技術だ。
これまでにも誘雷のテクノロジーは開発されてきた。例えば、ワイヤーに繋がれたロケットを雷雲めがけて打ち上げることで、雷雲はロケットを介してワイヤーで繋がれるので、地上と通電した状態を作ることができる。この状態で雷をワイヤーで誘導することで、落雷の前に事前に落としてしまうことによって、雷雲は放電され、他の場所への落雷は回避されるというものだ。
しかし、今回紹介するEPFLのテクノロジーは一味違う。彼らは誘電技術にレーザを用いているのだ。では、どのような原理だろうか。
簡単に説明すると、高出力のレーザによって大気を電離させ、雷雲とレーザ周辺の電離した気体を通電した状態にし、そして誘雷させるという原理だ。EPFLはこの技術にピコ秒のパルスレーザを活用していて、スイスの標高2500mの場所にある高さ124mの通信塔で実験を行ったという。
そして、まだ誘雷が実行された機会は少ないというが、その貴重な瞬間を捉えた画像が公開されている。以下の画像をご覧いただきたい。上空に向かって一直線に伸びるレーザと、上空から降り注ぐ雷が通信塔に落ちている様子がご覧いただけるだろう。
この研究成果は、EPFLが公開している動画でも確認することができるのでぜひご覧いただきたい。
なおこの研究成果は、2023年1月6日にNature photonicsに掲載されている。
いかがだったろうか。EPFLによると、今後はこのレーザをさらにハイパワーなものにするなど、活用に向けてより強力なものにする必要があるという。そうすれば未来では、雷を完全にコントロールできる、安全で安心な社会となることだろう。非常に興味深い研究成果だ。