2022年12月15日、香港城市大学は、手のひらに貼り付けるような薄い皮膚のような触覚デバイスを開発したと発表した。では、この触覚デバイスはどのようなものだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。
皮膚のように貼り付ける触覚デバイス「WeTac」とは?
これまで開発されてきたVRグローブは、小型の振動モータタイプや空圧を利用したものが多い。香港市立大学の准教授であるYu Xinge博士は、サイズや薄くて柔らかく、よりコンパクトで軽いVRグローブを開発したいと考えてきたという。そして今般、電気的刺激によって触覚を表現する仕組みを考案。完成したのが「WeTac」だ。このWeTacは、VRグローブというよりも、どちらかというと"VRスキン"だ。
上の画像をご覧いただきたい。手のひらに乗っている透明なフィルム状のものはハイドロゲルベースのハンドパッチで、金色に輝くのは電極。こちらは円形状のものや波形のものまで、32個あるという。この電極を通じた電気刺激で、指先から手のひらまで幅広く触覚を与えるのだ。手の甲には特に装着するものはなく、手首部分にソフトドライバーユニットという電源やソフトウェアが装着される。ちなみに、手のひらを覆うこのフィルムの厚さは、およそ220μm~1mm。重さはたった19.2gだという。
そして驚くべきなのは、このWeTacのソフトウェア機能。触覚である電気的刺激の電圧値を、個人にパーソナライズされるように設計されているのだ。そのため、電気信号が強すぎて痛い、とか、弱すぎて感じない、といった事態が無いように設計されている。
またこのデバイスは、温度が27℃から35.5℃に保たれていて、手のひらが蒸れるなど不快感がないような配慮もなされているという。
YouTubeで公開されているWeTacの動画をご覧いただきたい。とても興味深いシーンがある。それは、VRゴーグルを装着した状態で手のひらの上を小さなねずみが這うシーンだ。WeTacを装着した手のひらには、この小さなねずみが這う箇所に繊細かつ緻密に電気的信号がしっかりと印加されていて、あたかもネズミが這っているかのような感覚を得ることができる。また、サボテンのトゲに触ったかのような微小面積での痛みも再現することができるのだという。
なお、この研究成果は科学雑誌『Nature Machine Intelligence』に掲載されている。
いかがだったろうか。人の五感とVRとのインタフェースが、ものすごいスピードで進化していることに気付かされる、とても興味深いテクノロジーだった。もちろん、ゲームなどのエンタメ領域でも活用されるだろうが、おそらく医療のリハビリテーションにもとても効果的なのではないだろうか。数年後には、この触覚デバイスがどれくらい発展しているのか、楽しみだ。