2023年1月11日、東洋製罐グループとフィールドアシスタントは、組み立て式ダンボール製テント「DAN DAN DOME」を活用した、宇宙開発向け生活環境検証ユニット「DAN DAN DOME EXP. STATION」を開発したと発表した。では、この宇宙開発向け生活環境検証ユニットとは、どのようなものだろうか。そして、なぜ彼らは開発したのだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。

  • 「DAN DAN DOME EXP. STATION」の内装イメージ

    「DAN DAN DOME EXP. STATION」の内装イメージ(出典:東洋製罐グループ)

段ボール製の生活環境検証ユニット「DAN DAN DOME EXP. STATION」とは?

今回発表された「DAN DAN DOME EXP. STATION」は、東洋製罐グループと、極地建築家として知られる村上祐資氏が代表を務めるNPO法人のフィールドアシスタントが、共同で開発した。

では、この段ボール製の宇宙開発向け生活環境検証ユニットとは、どのようなものだろうか。

まず、その前身となったDAN DAN DOMEから紹介したい。このドームは以下のイラストで、Art Model・Space Unit・Entrance Parts、Inner Roof Unitの4区分に分けて説明されている。Art Modelは、屋外で使える独自ラミネート技術を施し、高い耐水性を持たせたドーム型の構造物。外壁もホワイトだ。また、Space Unitは複数のモデルを連結させる際の通路ユニットで、Entrance Partsはその名の通りエントランスであり、扉にも窓にもすることができる。天井部分のInner Roof Unitは、白色でリブがない構造となっていて、プロジェクタによる投影も可能だという。

そして驚くことに、これらのユニットの組み立てには、ネジや釘などを一切使用していないという。ダンボール同士を簡易的に接続するだけで、このように組み立てることができるのだ。

  • 「DAN DAN DOME」の説明図

    「DAN DAN DOME」の説明図(出典:東洋製罐グループ)

  • 段ボール製のパーツはそれぞれネジや釘などを使わない方法で組み立てられている

    段ボール製のパーツはそれぞれネジや釘などを使わない方法で組み立てられている(出典:東洋製罐グループ)

そして今回、宇宙開発用途向けに開発された生活環境検証ユニットは、DAN DAN DOMEを9棟組み合わせて構成されたものだ。ちなみに名前の末尾にある"EXP"とは、「EXPEDITION」(探検)、「EXPERIMENT 」(実験)、「EXPERIENCE」(経験)に共通する文字列で、失敗をなくす・洗い出す・ふれるといった目標に対し、トライ&エラーを実行できる場所にしたいという意味が込められているという。

  • 「DAN DAN DOME EXP. STATION」のプロダクト構成イメージ

    「DAN DAN DOME EXP. STATION」のプロダクト構成イメージ(出典:東洋製罐グループ)

では、なぜ彼らはこのようなユニットを開発したのだろうか。

昨今、宇宙の有人プログラムが民間企業を主導として盛んになってきている。その内容は、民間の宇宙ステーション計画であったり、月面着陸プロジェクトであるアルテミス計画であったり、火星移住プロジェクトであったりとさまざまだ。しかし現在、宇宙空間における生活についての検証が行われているのは、専門施設や自然の洞窟などの限定的な環境であり、その整備や利用機会などに多くの時間とコストがかかってしまう課題がある。しかし、段ボールでできたこの環境を利用すれば、上述の課題がクリアされ、宇宙空間での生活における検証の機会を増やすことができるのだ。

なお、DAN DAN DOME EXP. STATIONでは、内閣府が主導する「宇宙開発利用加速化プログラム(スターダストプログラム)」の一環として、QOLマネジメントシステムの検証も実施されている。このドームについては、利用の目的や開発者の想いなどが込められた興味深い動画が公開されているので、ぜひご覧いただきたい。

宇宙開発向け生活環境検証ユニット「DAN DAN DOME EXP. STATION」の動画はこちら(出典:東洋製罐グループ)

いかがだっただろうか。人が宇宙で生活する様子を検証できる環境は、確かに限定的であり豊富ではない。このDAN DAN DOME EXP. STATIONは、その課題を見事に解決する素晴らしいアイデアを含んだものだと感じる。今後、数多くの有人宇宙プログラムで活用されることを期待したい。