1950年代後半、白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫が電化製品の"三種の神器"と呼ばれた時代がありました。いまやどの家庭にもある一般的な家電製品のひとつですが、いずれも当時の人々の暮らしを変えた高度成長期を象徴する商品でした。
そして共働き世帯が増えた昨今、働く主婦の間でロボット掃除機、乾燥機能付き洗濯機と並んで"新・三種の神器"と称されているのが食洗機です。
そんな食洗機(電動式)が世の中に初めて登場したのは1909年。アメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)社が発売しました。
一方、日本では1960年3月に松下電器(現パナソニック)が発売した「MR-500」が最初の製品でした。サイズは高さ80センチ、幅49センチ、奥行き51センチの直方体で、見た目はまるで縦型洗濯機そのもの。容量は5~7人家庭用向けだったとのことです。現代の家庭用食洗機と言うと、ビルトインタイプはシステムキッチンに収めるキャビネット型、据え置きタイプは卓上型が主流ですが、日本初のこの製品は床置きタイプでした。
使い方は、上面のフタを開いて、中に上から順番に食器を収める仕組み。給水も上から行っていたとのことで、やはり洗濯機を彷彿させます。パナソニックによると、製造していたのはやはり洗濯機事業部で、本体部分は洗濯機のアルミボディを利用して作っていたそうです。
ちなみに販売価格は5万9,000円。当時の大卒の初任給1万6000円の約4倍と高価な上に、大型なこともあって、あまり普及はしなかったとか。
一方、1968年には初の卓上型食洗機「NP-100」が発売されました。4人用で、本体は直径44センチ、高さ58センチの円筒状で大幅にサイズダウン。見た目から"オバQ"の愛称が付けられていたそうです。
簡易型のため、価格も2万9500円と床置きタイプの半値ほど。当時、急速に普及が進んでいた瞬間湯沸かし器を接続してお湯洗いができるというのも特長でした。
ちなみに、ビルトインタイプの現在の基本型となったのは、1969年に発売された「NP-1000」という機種。防水構造や上部のカゴの洗浄方式・設計、洗剤の投入方法など、技術的な多くの課題を解決した床置き型の製品で、その後の食洗機の基本構造となっています。ただし、見た目はまさにドラム式洗濯機のようで、洗濯機のイメージはまだまだ払拭されていません。
現在、食洗機を展開している国内メーカーは、実はパナソニックを含めて3社のみ。日本の普及率は3割ほどで、全世帯の7割以上が所有する欧米の先進国に比べて、極めて低い数値です。今でも普及しているとは言えない製品カテゴリーながら、60年近く前には日本初の製品がすでに発売されていたというのは意外ですね。
取材協力・画像提供 : パナソニック