自社の商品やサービスを「その企業ならでは」と認識してもらう企業ブランディングへの注目が集まっている。その背景には、国内外の競争激化や物価の上昇などがある。しかし、大企業と違い、中小企業がブランド戦略を打ち出すのは容易ではないとされる。こうした中で、インターネットを活用してコストを抑制しつつ、効果的なブランディングを実施する中小企業やB to B(企業間取引)企業も出始めている。本連載では、ITなどを活用してブランディングを行っている事例を紹介する。

第18回は、オーダーユニフォーム事業などを手掛けるHARADA(山口県 防府市)を取り上げる。同社は、インターネット上に動画サイト「UNIFORMERS(ユニフォーマーズ)」を運営し、自社商品のブランディングに成功している。原田栄造社長は「資金に十分な余裕のない中小企業でも、ターゲットを絞れば効率の良いブランディングができる」と話す。聞き手はZenkenの本村丹努琉(もとむら・たつる)氏。

  • HARADA 代表取締役 原田栄造氏

HARADA株式会社 代表取締役 原田栄造氏
1973年3月生まれ。1997年大学経済学部卒業、同年、株式会社イストに入社し営業のノウハウを学ぶ。
2001年、父が経営する原田株式会社(現 HARADA株式会社)に入社。2005年、代表取締役に就任。作業服店舗では非常に珍しい内装、什器などにこだわった新業態店舗ワークフィッターをオープン。
プレミアムワークウェアの開発や、業界初となる小ロットで作る世界で一つのオリジナルユニフォームブランド「オーダーユニフォームカンパニー」を立ち上げる。コロナ禍にあっても立ち上げから5年で売上2倍に。またドリカムの中村正人氏とコラボしたMSTオーダーユニフォームカンパニーを発表。
「ユニフォームに誇りを!」を掲げ、企業ブランディングに繋げていくユニフォーム提案に取り組んでいる。「最幸の100億円企業」を合言葉に、「強くて優しいファミリーカンパニー」を全従業員で目指す。

ポイント

①ブランディングは企業イメージを高め、営業や採用力の向上や離職率の低下などに効果
②資金力に乏しい中小企業は不利だが、ターゲットを絞れば効率の良いブランディングが可能
③動画サイトを立ち上げ、顧客企業を紹介。自社商品のブランディングに成功
④YouTubeで社長の番組を配信し、社内外で親しみ増す

本村:御社はカタログユニフォームやオーダーユニフォーム事業を手掛けています。事業の概要と強みを教えてください。

原田:当社は、軍手の製造販売会社として私の父が創業しました。その後、作業服やユニフォームを手掛けるようになりました。私の代になって、全国に進出し、スタイリッシュなオーダーユニフォームを製造・販売するようになりました。

強みは比較的少量の注文にも対応できることです。オーダーユニフォームは綿密なデザインの打ち合わせなどが必要で、人的、時間的コストがかかります。このため、一般的には、少なくとも上下500セット程度から受け付けますが、当社は100セットからです。料金も1セット2万円未満です。このため、中小企業でも導入できます。

6年間で運送会社など400社以上の中小企業が当社のオーダーユニフォームを採用してくれ、売り上げのうち半分を占める事業の柱に育ちました。

  • HARADAの東京本社

    HARADAの東京本社

本村:ユニフォームを通して社員の結束力が強まり、アイデンティティも確立しやすくなります。御社の事業自体が、企業ブランディングのサポートだとも言えます。ブランディングが企業に果たす役割をどう考えていますか。

原田:ブランディングは企業の印象やイメージを形作るものだと考えています。誰でも他の人から良く思われたいですし、良い印象の方が営業面でもプラスになります。結果としてイメージの良い企業は離職率も下がり、有能な社員の採用力も向上します。社員の愛社精神も高まり、仕事へのモチベーションが上がることを通じて、生産性も改善するというわけです。

ただ、ブランディングもターゲットを明確にすることが重要です。当社の場合は、建設業や運送業、製造業などユニフォームを採用してくれる業界がターゲットとなります。ブランディングの対象を絞ることによって当社の専門性も強調できます。もちろん、同じ建設・運送・製造業でもすべての企業が対象となるわけではありません。企業イメージやファッションにこだわりがあったり、ユニフォームを通じて安全性や視認性、チームワークなどを高めたりしたいといった会社がターゲットとなります。

本村:人口減少で人材の確保が難しくなってきた今、インナーブランディングは重要性を増しています。毎日着るユニフォームを「誇らしい」と思えるのは、インナーブランディングに大きな効果があるように思います。

原田:クライアント企業からは、「従業員の『見られる意識や会社の看板を背負う意識』が高まった」と聞きます。オーダーユニフォームに変えたことで、一般的な作業服の時よりも大事に扱ってくれているという声もありました。

本村:中小企業のブランディングは大企業に比べて難しいとも言われます。HARADAの場合はどうですか。

原田:確かに、中小企業のブランディングは簡単ではありません。大企業は資金力があり、テレビCMなど大規模な広告を実施できます。中小企業にはそこまでの資金的な余裕がなく、広告を通じて一般的な知名度を引き上げるのは容易ではありません。

もっとも、売り上げ規模の小さい中小企業は、大企業に比べて潜在顧客の対象が少ないのも事実です。このため大企業ほどブランディングの対象を広げる必要がないとも言えます。ターゲットをきちんと絞って上手に情報を発信すれば、必要な方々に効率よくブランディングができると思います。中小企業もやり方、考え方次第で効果をあげることができのではないでしょうか。

本村:御社のブランディングで成功例はありますか。

原田:当社では2022年から、ブランディングのために「UNIFORMERS(ユニフォーマーズ)」という動画サイトを作っています。当社のオーダーユニフォームで自社の「個性」や「特徴」を打ち出して、ブランド・イノベーションを成功させた企業をピックアップし、ユニフォームを着て働いている社員たちの映像を配信しています。1分程度の動画ですが、当社のブランディングになるだけでなく、顧客企業のアピールにもなっています。

すでに、UNIFORMERSのサイトを通じて約20社から問い合わせがきています。このほか、営業担当者が商談の際にサイトを見せるときに潜在顧客が興味をもってくれ、成約につながるという効果も多くありました。

  • UNIFORMERSでクライアントを紹介している

    UNIFORMERSでクライアントを紹介している

本村:御社の動画サイトは企業ブランディングにもなり、営業面でも効果を発揮しているということですね。

原田:動画サイトでは複数のクライアントを取り上げています。当社が自分のことをアピールするよりも、実際にユニフォームを採用してくれた企業の経営者の方々の話を聞いてもらった方が、説得力を持つ場合もあります。

  • 動画が企業ブランディングに寄与

    動画が企業ブランディングに寄与

このほかに、動画投稿サイト「YouTube」で「はらだ本気チャンネル(はらチャン!)」を配信しています。私自身が出演し、取引先の社長らとゴルフ対決などをする企画です。これにより、従業員から私自身や会社に親しみを持ってもらえました。社員やクライアントの中には「話のきっかけになる」と言ってくれる人もいます。結果として社内外のブランディングにつながりました。

本村:YouTubeの番組は、社長の人柄を知る機会にもなりますね。ただ、多くの企業でブランディングに失敗することもしばしばです。御社でも失敗例はありますか。

原田:3年前から毎年2~3回、展示会にブースを出してきましたが、あまり効果がありませんでした。展示会はブースを出すだけで100万円以上のコストが掛かります。出展するならきちんと投資をして、多くの方々が来てくれるブースにしなければならないと思います。今後どうするかは検討中ですが、展示会への出展はいったん取りやめて、そのほかのマーケティングやブランディングに注力することも1つのやり方だと考えています。

本村:Zenkenのサイトに御社が掲載されています。

原田:2022年12月から掲載してもらっており、少しずつ効果が出てきていると感じています。ユニフォーム事業に携わる代表的な会社が取り上げられており、公平に比較できるようになっています。

このサイトを通じて潜在顧客から当社に月3~4件の問い合わせがあり、すでに1件が成約しました。また、来年3月に成約予定の企業もあり、今後も期待しています。

(編集協力 P&Rコンサルティング)

本村 丹努琉(もとむら・たつる)

Zenken株式会社 取締役 eマーケティング事業本部長

通信機器販売やエネルギーコンサルティングなどのベンチャー企業3社で営業責任者として組織構築に従事。1人のカリスマだけに頼らない組織営業スタイルを確立し、収益増に貢献した。2009年に全研本社株式会社に入社し、ウェブマーケティングを担当する「バリューイノベーション事業部(現:グローバルニッチトップ事業部)」の立ち上げに参画。コンテンツマーケティング黎明期から、オウンドメディアを基軸としたWEBブランディングを提唱し、14年間で約8000社のインサイドセールスを構築した。