仙台七夕まつりが8月6日から始まった。青森ねぶた祭、秋田竿燈まつりと並ぶ東北三大祭りの1つである。今年は震災で開催が危ぶまれたが、「復興と鎮魂」をテーマに開催されることになった。たとえ規模を縮小したとしても、何とか祭りで東北を活気づけたいとの強い思いの結果である。祭りは仙台だけではない。被災地の各地で、まだ瓦礫が残った津波の跡を山車が練り歩いている。テレビで見ていても"これぞ本物の祭り"という力強さを感じる。やはり日本の夏は祭りが似合うようだ。
織姫と彦星がインド、中国、日本をつなぐ
さて、その七夕の話である。
現在の日本では、七夕は夏祭りだが、元々は織姫と彦星の話である。お隣の中国や台湾では、この日を「情人節」と呼ぶ。織姫と彦星の再会にあやかった恋人たちの日である。もっとも最近ではバレンタインデーも情人節と呼ぶようで、中国の織姫たちは年2回の逢瀬を重ねているようだ。
昨年のこの時期、筆者の独自コラム「インド・中国IT見聞録」で七夕に関する記事を書いたのだが、この七夕伝説は中国が起源なのではなく、タイから雲南省を経由して中国に伝わった話のようだ。
それだけではない。タイの神話には「異郷訪問神話」というものがあり、実はインドが起源とのことである。そこからいくつかの話に枝分かれし、織姫と彦星、浦島太郎、羽衣伝説が生まれたらしい。つまり、南アジアから東アジア全域に伝わった民話のようである。
ところが起源のインドでは七夕の話を聞かない。いつかインドに七夕の行事の話が残っていないかどうかを調べたいのだが、知っている人がいればお教えを請いたいものである。
大連のIT企業が変わる
前置きが長くなったが本題……大連の話の続きである。
前回も書いたように、食べるためだけに大連に行ったわけではない。今回は日本の大手ネット企業の担当者を案内した。大連ソフトウェアパークで開催されていた日本のオフショア開発の関係者によるセミナーにも出席してきた。日本各地や大連のIT企業、中国各地から多数が参加していた。
大連IT企業も何社か訪問した。ただしトップ数社は対象外。インドIT大手と同じで、トップ企業は話を聞いても面白くもなんともない。規模が拡大するのはいいのだが、顧客ニーズからは遠くなる一方である。だから今回は二番手企業を中心にまわった。
もっとも、二番手企業といっても新たな大手顧客を獲得してさらに大きくなった企業やリーマンショックによる落ち込みがまだ続いている企業など様々だ。
しかし規模の大小は問題ではない。今回、一番印象に残ったのは、どの企業も以前と比べて洗練されてきた感じであるということだ。1990年代後半、インドITが飛躍する直前のジェネラルマネージャ層を見ているようだった。
筆者の顧客に関係する話なので具体的なやり取りの内容は書けないが、プレゼンテーションや質疑応答に至るまで、どれを取っても変わってきた。
もはや「安さ」を売りにしてきたこれまでの大連ソフトウェア産業ではない。そんなのは怖くも何もない。最初にインドを訪問した時に感じた「怖さ」を今回の大連で初めて感じた。
企業による学生向けコンテスト
大学も訪問した。大連理工大学、海事大学、そして大連外国語学院である。まずは理工大と海事大の話題を。
面白かったのは中国ネット企業や欧米企業による大学生向けコンテストである。
「1等賞金3万元」等々……こんなポスターが大学のあちこちに貼られている。インターン募集のポスターもある。この雰囲気は良い。
真面目な話、このままでは日本は負ける。
日本語教育に予習・復習はいらない!
大連外国語学院のエラい先生にも会ってきた。この大学は、中国における日本語教育の最高峰である。
筆者はこの大学の何人かの先生とは面識があったのだが、特に3年前に会った先生(女性)には驚かされた。この先生と30分間話した際の印象は「日本の若い女性のプレゼンテーション能力も凄くなったもんだ」だった。
でもその後、名刺交換した時に驚かされた。筆者が日本人の女性講師だと思っていた彼女は中国人だった。信じられなかった。日本には半年ほど滞在したことがあるそうだが、日本語を覚えたのは大連外国語学院だそうだ。
今回会ったエラい先生も彼女のことを知っていた。「彼女は一流だ、でも超一流ではない」らしい。もっと上がいるということか。
このエラい先生の教育論を紹介しよう。
「中国人に日本語を教えるには会話が最重要である。だから予習とか復習をする必要はない。いや、しない方がいい。授業だけで覚えるべきだ。最初の教育は喉の筋肉の使い方だ。中国語と日本語では筋肉の使い方が違う。この違いを理解して、筋肉を自由に動かせなければ日本語の発音は上達しない」
教えられることが多いものだ。
しかし日本人も負けてはいない。次回は大連で活躍している若き日本人経営者を紹介しよう。
著者紹介
竹田孝治 (Koji Takeda)
エターナル・テクノロジーズ(ET)社社長。日本システムウエア(NSW)にてソフトウェア開発業務に従事。1996年にインドオフショア開発と日本で初となる自社社員に対するインド研修を立ち上げる。2004年、ET社設立。グローバル人材育成のためのインド研修をメイン事業とする。2006年、インドに子会社を設立。日本、インド、中国の技術者を結び付けることを目指す。独自コラム「(続)インド・中国IT見聞録」も掲載中。
Twitter:Zhutian0312 Facebook:Zhutian0312でもインド、中国情報を発信中。