ソフトバンクは2025年11月19日に「ギジュツノチカラ センチ波編」を開催し、次世代の通信規格「6G」で主要な周波数帯の1つになると見られている「センチメートル波」の1つ、7GHz帯の実証実験の様子を公開しました。その様子から、なぜセンチメートル波が6Gで注目されているのか、そして日本での割り当てに向けどのような課題があるのかを確認していきましょう。→「ネットワーク進化論 - モバイルとブロードバンドでビジネス変革」の過去回はこちらを参照。
7GHz帯が注目される理由は「ミリ波」にあり
日本で「5G」の商用サービスが始まってからおよそ5年が経過したこともあり、5Gの次のモバイル通信規格「6G」関連の取り組みが、徐々に増えつつあります。中でも最近の動きで大きなものとなるのが、ソフトバンクが2025年11月19日に実施した、同社の最新技術をアピールするイベント「ギジュツノチカラ」です。
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ソフトバンクは2025年11月19日に、「ギジュツノチカラ センチ波編」と6Gの開発に関する技術カンファレンスを実施。6Gで有力候補とされる「センチメートル波」の活用に関する講演や実証実験が披露された
同イベントではこれまでさまざまな技術のアピールがなされてきましたが、今回は「センチ波編」と題し、明確なテーマを掲げて実施されています。
この「センチ波」とは「センチメートル波」のことを指すのですが、センチメートル波は電波の波長が1~10cmの周波数、具体的には3~30GHzと、5Gで使われている6GHz以下の「サブ6」と、30GHz以上の「ミリ波」の中間の周波数帯となります。
そのセンチメートル波の中で、6G向けの新たな周波数帯として注目されているのが、「7GHz帯」と呼ばれる6.425~7.125GHzの周波数。6Gに向けては、100GHz以上のサブテラヘルツ波の割り当てなども検討され、ソフトバンクもその研究に力を入れてきました。
ここにきて、なぜ7GHz帯に注目するようになったのかといいますと、理由は帯域幅が広く、それでいて周波数が低いからです。
なぜ低い周波数にこだわるのかといえば、5Gにおけるミリ波の失敗が非常に大きく影響しているでしょう。ミリ波はサブ6と同様、5G向けに割り当てられた新しい周波数帯であり、周波数が高く空きが大きいこともあって大容量通信のニーズ開拓が期待されていました。
しかし、実際に使ってみると、周波数が高いが故に直進性が強く、障害物に非常に弱いなど、想定以上に遠くに飛びにくいことから、多数の基地局を設置しなければ面でエリアをカバーできないことが明らかとなりました。それゆえミリ波は米国など一部を除いて基地局整備が一向に進まず、対応するデバイスも増えないので活用されない……という悪循環に陥っているのが実情です。
しかしながら今後、AIの活用が増えるなどして通信トラフィックは増加の一途をたどると見られており、比較的大容量通信に強いサブ6を使ってもなお、トラフィックを吸収できなくなると予想されています。
そこで、サブ6より大きな帯域幅を確保でき、なおかつ周波数が可能な限り低く、サブ6に近い特性を持つ7GHz帯に、大きな期待が寄せられるようになった訳です。
周波数共用だけではない、7GHz帯割り当ての課題
とはいえ、これまで7GHz帯をモバイル通信で利用したことはないので、本当にサブ6と同じ感覚で基地局を整備し、快適な通信を提供できるのか?ということは、実際にネットワークを整備してみないと分かりません。
そのため、ソフトバンクは2025年6月からノキアと協力して、7GHz帯の屋外実証実験を実施しており、今回のイベントではその様子も披露されていました。
実証実験では、ソフトバンクが7GHz帯(100MHz幅)の実験試験局免許を取得し、東京・銀座のビル屋上に設置している3.9GHz帯(3.7GHz帯)の商用5G基地局に並べる形で、ノキアが開発した7GHz帯の基地局を設置。
やはりノキアが開発した専用端末を車に搭載し、エリアカバーや通信品質などを測定する形となります。
その結果、「思ったより電波が飛ぶ」というのがソフトバンクの評価となるようです。7GHz帯は3.9GHz帯と比べ周波数が高いことから、遠くに行くほど電波の受信電力が低下しやすいと見られていたのですが、銀座という都市部ではビルに囲まれており、電波が建物に反射して飛ぶことから、想定よりも遠くに飛ぶ結果となったようです。
また、3カ所に基地局を設置してエリアを構築した時のエリアカバーに関しても、200×500mの範囲をエリア化して圏外となる範囲は0.5%以下であったほか、通信が途切れるエリアは0%、複数のアンテナを用いて高速化する技術「MIMO」が効果を発揮するエリアも、23.5%に上るなど、高い通信品質を確保できたとのこと。
以上の結果から、7GHz帯はサブ6と同様の活用がしやすく、効率的な6Gの展開を図る上でも重要な存在だと結論付けています。
ただモバイル通信に有用という結果が出たとしても、実際に7GHz帯をモバイル通信に割り当てる上では多くの課題があるようです。その1つは、多くの国で7GHz帯が既に他の用途に使われていること。日本では放送用の無線局(FPU)、そして衛星通信に既に割り当てられていることから、そのままモバイル通信向けに割り当てることはできません。
かといって、既存の利用者に移動してもらって7GHz帯を空けるには、相手側の了承が必要な上に時間もかかってしまいます。それゆえソフトバンクは、既存の事業者と周波数帯を共用するためのさまざまな技術を活用することで、7GHz帯をモバイル通信でも活用できるようにしたい考えを示していました。
そして、もう1つの大きな課題は、7GHz帯の利用を検討しているのはモバイル通信だけではないこと。実際、米国などではこの帯域をWi-Fiに割り当てており、日本でもモバイル通信だけでなく、Wi-Fi向けに割り当てることも検討されているようです。
一方。欧州ではこの周波数帯をモバイル通信向けに割り当てる動きが進んでおり、タイやベトナムなど、アジアのいくつかの国もそれに同調する動きが出てきているようです。ノキアが実施した実証実験では、7GHz帯のモバイル通信とWi-Fiとの周波数は「無理」という結果が出ているだけに、各国にはどちらの用途に7GHz帯を割り当てるべきかという、明確な判断が求められているのです。
そこでソフトバンクやノキアでは、今回の実証実験などを機として7GHz帯の6G向け割り当てを日本政府に働きかけ、モバイル通信への割り当てを実現させたい考えのようですが、Wi-Fi陣営がそれに対抗する動きを見せることも予想されます。それだけに7GHz帯を巡る関連各社の攻防が、今後大きな注目を集めることになりそうです。







