年の瀬が刻一刻と近付いてきている今日このごろ。日本では、おそらく2007年の流行語が話題になっていることでしょう。昨年はめずらしく(?)IT関連である「ミクシィ」が流行語のひとつになっていたようですが、今年はどうでしょうか。

ミクシィのようなSNSは米国なら圧倒的にMySpaceですが、最近、Facebookが登場して世間を賑わしています。10月にはFacebook獲得をめぐり、MicrosoftとGoogleが熱い戦いを繰り広げていましたが、このニュースを興味深く聞いた方もいらっしゃるかもしれません。ですが、大多数の方は聞いたことはあるけれど、海の向こうの関係のない話…と思われたのではないでしょうか。米国では大きく取り上げられているけれど、日本ではあまり興味を引かないIT関連の話題は少なくありません。今回は、なぜ日本と米国ではインターネット関連のサービスへの反応が違うのかについて話をしましょう。

あなたのご両親はGoogleを知っていますか?

米国で大流行している一般大衆向けIT関連サービスが、必ずしも日本でも流行るとはいえない一番の理由は、日本人には異文化を受け入れられない体質があるからでしょう。この記事の読者なら「そんなことはない。米国のソフトウェアはよく使っている」と思うかもしれませんが、IT関連に従事していない"一般の日本人"には、日本語のメニューとヘルプがあるだけでは使う気になれないはずです。日本人は何かあったときの話し相手が日本人じゃないと、"自分の思う通りにことが運ばない"と、ストレスや苛立ちを感じる人が多いようです。異文化との葛藤を経験することが極端に少ないので、やむを得ないことではないかと思います。もしも、MySpaceやFacebookが日本に会社を作り、日本人を雇ってサービスを提供したとすると、米国モノへの憧れも手伝って日本でも流行るではないかと、勝手に想像しています。

ところが、日本に会社もあり日本人社員もいるにもかかわらず、不思議なほど日本では知名度が低いのがGoogleです。ITに従事していればGoogleを知らない人はいないのですが、"一般の日本人"、たとえば読者の方々のご両親や叔父さん、叔母さんという人達はGoogleでインターネット検索をしているでしょうか。Googleを知らなくてもYahoo!を知っている人が多いのはYahoo!BBの宣伝が街角のすみずみまで行きわたっているからかもしれません。米国で人々がGoogleを知った経緯はおそらくメディアが頻繁に取り上げたからではないかと思いますが、日本では米国ほど取り上げられていないことが知名度の差かもしれません。

さて、読者のみなさまのご両親のような年齢層で日々インターネットを使っている人々、その人口は米国と日本ではまるで違います。米国社会へのインターネットの浸透度は携帯電話と同じではないかと思われるほど、よく使われています。学校の先生は校長先生をはじめ、理数系ばかりではなく、文科系や芸術系の先生まで誰もが「何かあればEメールで連絡をください」と言います。どこの学校もWebページがあり、学校からのお知らせはWebページに掲載されます。子供の成績が今どの程度なのかを確認するのも、そのためのWebサイトがあり、パスワードを入力して見るようになっています。"Ask Google."という先生も少なくありません。

TVニュースや新聞などの一般のメディアで取り上げられる度合も日本とはまるで違うので、IT関連企業の知名度は高く、人々の関心も集まります。比較的最近、USA TODAYではMySpaceのCEO、Chris DeWolfe氏の大きな写真ととももにかなりの紙面を割いてMySpaceの記事を掲載していました。冒頭で触れたFacebook買収では巨額のお金が動くので自然に人々の関心を集め、オンラインのニュースサイトも含めるとかなりのメディアが熱く報じていました。

もっともMySpaceに関連する報道はかならずしも輝かしいものばかりではありません。MySpaceに問題があるわけではないのですが、MySpaceへの書き込みに端を発する事件は頻繁にメディアに登場しています。最近では、ボーイフレンドだと信じていた人が突然態度を変えてきて罵り合いになった結果、自殺してしまった高校生(http://www.nytimes.com/2007/11/28/us/28hoax.html)について報道されていました。また、母親が身分を隠して、娘のページを読んだり、書き込みしたりしているのをプライバシーの侵害として娘が母親とみなされるユーザを排除しようとしているという報道もありました。

国土が広すぎるからこそネットが流行った!?

良くも悪くも、インターネットが米国社会に浸透しているのは、おそらく米国が田舎ばかりの国だからではないかと思っています。たしかにニューヨークやボストン、ロサンゼルス、サンフランシスコといった都会があるにはあるのですが、広大な国土のなかではほんとうに限られたところのみで、限られた人達だけが行けるところです。このような都会へ行こうとすると、直行便のある空港まで高速道路を数時間走らないといけない土地に住んでいる人は珍しくありません。地図上に大きく名前が載っているシティでも、行ってみるとこじんまりとした田舎町がある程度で、とてもアップルストアを期待できる街ではないこともよくあります。わずかにある大都会ですらも、東京に比べるとはるかに小さいので、新宿で入手できなかったら池袋へ行く、アキバであっちの店、こっちの店と歩き回ってみるようなことはまずできません。

また、国土が広いとそれなりの使い方をするので、どこへ行くにも徒歩ではいけない距離で、加えて公共の交通機関はまったくないので、車を運転できない人は友人に会いにいくことすらできません。子供がとなり近所ではない友達の家に遊びに行くといったら、親が車で送り迎えです。こんな国ですですから買いものをするにも、近所にいない人と連絡を取り合うにもインターネットはとても便利な手段として浸透しはじめ、現在のようにだれもがインターネットのサービスを使うようになったのではないかと思います。

米国発のインターネット関連サービスは多数あり、面白いモノ、よいモノもいろいろあるのですが、何もかも採り入れる必要はないはずです。日本には日本型の日本人にあったよいサービスがあり、米国モノを必要としていないこともあります。よりよいものを知ろうというアンテナは常に立ててあったほうがいいですが、米国で流行っているからといってそのサービス使っていないことを気にする必要はないのではないかと思います。