第1回は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進体制としてのDXMO(Digital Transformation Management Office)が全社変革における旗手となり、全従業員を巻き込みながら、経営層/CxOが掲げるビジョンの着実な実行を体現する推進主体を担うことが肝要であると説明しました。

第2回となる今回は、DXMOをいかにして構築するべきかという観点から、PwCが整理した各企業のデジタル成熟度に応じたDXMOのタイプとその構築に向けて具備すべき機能を、DXが画餅に帰すことを防ぎ、実行力を持たせるスキームを描くためのHow toとして紹介します。

DX推進体制(DXMO)のタイプ

DX推進体制のタイプは、企業のデジタル成熟度に応じて4つのタイプに整理されます。まずは、自社の状況に応じて立ち位置を自己認識し、次のタイプへ進むための議論を行うことが肝要です。

  • デジタル成熟度に応じたDXMOの4タイプ

ここ数年、多くの企業では各事業部等で自己発生的にDXの取り組みを始めており、図1の「①分散&非整合」の状態となっていることが多かったと推察します。DXMOの構築により、この状態を「②中央による整合」ないし「(3)中央による統制」へと変革し、最終的には「④各組織への組込み」へと至ることが、DXを真の意味で企業に定着させるためのステップとなります。

日本の企業にも、昨今のDXを推進する潮流の中で、「②中央による整合」ないし「③中央による統制」へと至った企業や、まさに変革の途上である企業も多いと思います。各社の状況に応じて変革のルートも一様ではないと想定され、例えば「②中央による整合」からトップダウンでガバナンスをきかせることなく「④各組織への組込み」へと至る可能性もあれば、「②中央による整合」という状態を経ずに「③中央による統制」へと至る可能性もあると考えます。

  • DXMOの変革ステップ

例えば、DXの知見や成功体験が少なかったり、伝統的に現場の声が強く、ガバナンスをきかせるのが難しい組織風土であったりといった理由で、迅速にトップダウンで統制をかけることが難しい企業においては、まず「②中央による整合」という形で、緩やかにガバナンスをきかせながらもコミュニケーションを密にすることで、部門横断での横連携促進、DXレベル感の共通認識化、DXが全社活動であることの意識醸成を図ることが先決であると考えます。

  • 「中央による整合」タイプのイメージ

DX推進体制(DXMO)の担うべき機能と役割

次に、「③中央による統制」タイプのDX推進体制=DXMOの構築に際して検討すべき役割・機能を紹介します。これらの役割・機能は、ハイレベルには「②中央による整合」でも検討しなければならない事項となりますが、例えばDX活動の結果に関する責任や、あるいは予算に関する権限をどうするのかといった事項は、どの程度のガバナンスをきかせるのかによって、その役割・機能を取捨選択する必要があることに注意が必要です。

「③中央による統制」タイプのDXMOが持つべき機能は、(1)戦略機能、(2)企画機能、(3)ルール形成機能、(4)チェンジマネジメント機能」4つに大別されます。

(1) 戦略機能

全社のDX活動を統括・推進する。DX戦略の策定に始まり、経営メンバーへの示唆出しや問題提起、予算コントロールや人材リソースの最適配分といった意思決定を担う。

具体的なタスクは、DX全体の戦略と方向性の検討、重要課題の特定と対応施策の検討、リソース・投資の優先順位付けと配分、全体アプローチ・ロードマップ策定、取締役会への提言とその報告骨子の作成など。

(2)企画機能

DX施策の起案やアイデアの募集と評価、DXを効果的に推進するための風土・意識改革に関する企画を行う。

具体的なタスクは、新規DX施策の立ち上げ、DX施策間の整合性担保、風土・意識改革・コミュニケーションに関する改善活動の企画など。

(3)ルール形成機能

DX活動を円滑に推進するための各種仕組み・ルール作りを行う。具体的なタスクは、DX施策の起案/募集・DX施策のゲート管理、DX活動の会議体/コミュニケーション方法、進捗/課題管理、DXMOの組織KPI/個人KPI、決裁管理といったルールおよびプロセスの整備。

(4)チェンジマネジメント機能

ルール形成機能で設計されたルール・プロセスに則り、日々のDX活動の運用をリードする。具体的なタスクは、DX施策の進捗・課題・ゲート管理、会議体運営、決裁管理、DXMOの組織/個人KPI管理、コンサル・ベンダー管理。

また、こうした機能を具備したDXMOを構築しても、経営および現場のコミットメントなくしては、DXMOがその機能を十分に発揮できません。CxOを中心とした経営層が、DXは経営アジェンダであることにコミットし、現場のステークホルダーや実働メンバーがDX活動に関わる工数を積極的に確保できるような仕組みを構築するよう意思決定することが肝要となります。