自然界の4つの「力」
「力」はいろんな使い方があるのですが、サイエンス、特に物理学の世界で「力」というのは、ものを引きつけたり、反発させたりする能力です。「力」は4種類が知られていて、宇宙を支配しています。そしてその4種類のうちの1つは、日本人が発見しているのでございます。今回は「宇宙を支配する4つの力」について、あっさりとご紹介いたしますね。
自然界には4つしか「力」がありません。「重力」、「電磁気力」、「弱い力」、「強い力」です。このうち「強い力」は、日本人物理学者によってその存在が説明されました。それは湯川さんです。
湯川、え? 探偵ガリレオ? それは湯川学ですな、福山雅治の印象が強すぎて名前がでてこないですが。いや、そちらではなく、湯川秀樹でございます。湯川秀樹は、日本人初のノーベル物理学賞受賞者、いや、他のノーベル賞を含めて日本人で1949年に初めて受賞した人でございます。1949年といえば、1945年に日本が太平洋戦争に敗戦してからまだ4年ほどしかたっていません。敗戦で打ちのめされていたなか、欧米の並み居る物理学者ではなく、日本人が世界トップにたったという事実は、相当人々に勇気を与えたようとされているのですが……うーん、新聞記事とかゆるいネット検索ではヒットしないなあ……まあそうなんだそうですよ。
湯川秀樹が見つけた「強い力」
さて、湯川秀樹のノーベル物理学賞受賞理由は、ノーベル財団公式によると“for his prediction of the existence of mesons on the basis of theoretical work on nuclear forces” まあ「核における力の理論研究に基づく、中間子の存在の予言」となりますか。予言した中間子が、実際に発見されたために湯川秀樹はノーベル賞を受賞することになったわけです。
ところで、さらっと中間子といいましたが、これは、原子核を形作る陽子と中性子をくっつける存在です。糊のようなのでグルーオン(グルーは糊)といったりします。くっついていると非常に強く作用するのですが、少し離れるとくっつける力を発揮しないという性質があります。この中間子が作用して発生する力を「強い力」と言っています。湯川秀樹は「強い力」の存在理由を突き止めた人なわけですな。
強い力は、それまでも「ないと困るよなあ」とされていました。原子核は水素なら陽子一個ですが、ヘリウムになると陽子二個と中性子二個です。陽子と陽子は+の電荷を持っているので、電磁気力によって反発します。中性子は電気的には名前の通り中性ですから、くっつける力がありません。電磁気力以外にくっつける力というと重力があります。ただ、この重力ですが、巨大な地球が発揮する重力が、小さな磁石によって簡単にものが持ち上がってしまうように、非常に弱い力で、電磁気力が作用している場で打ち勝つなど到底無理なのでございますな。
そこで「何かしらんけど、強い力があるとしか考えられん」ということになっていたのですが、糊みたいな力といっても、「でも、そんなへんちくりんな力は説明できないよなあ」というというのが、湯川秀樹の理論以前でございました。それをこんな力やでと解明した湯川秀樹(ちなみに大阪帝国大学に在籍時に提唱)。そりゃまあノーベル物理学賞にふさわしいわけです。ちなみに彼のアイデアですが、ヨーロッパに渡って研究会に参加しようというとき、周囲の科学者と議論して自信を深め、日本に戻って発表した内容が世界に評価されるということになったのです。
すべてが重要な「4つの力」
そして「強い力」の他に、物理学の世界では「弱い力」というのもあります。ワインバーグとサラムの二人の科学者がそのありようを解明したものです。
こちらは、ベータ崩壊といって、原子核から電子が飛び出すという、わけわかんない現象の源になっているものです。原子核には陽子と中性子しかないのであって、なんで電子が出てくるのというと、陽子から電子が飛び出し中性子になるという、えっと陽子はそれ以上割れないんですよね、に反する現象です。ここに搭乗するのが反発力となる「弱い力」です。
さて、残る2つは重力と電磁気力です。重力がなぜ発生するのかは、ヒッグス粒子によるらしく、電磁気力はワインバーグとサラムによって、弱い力と源は同じであるという説明がされています。ありようということならニュートンとマクスウェルが整理し、重力はアインシュタインがニュートンを説明しつつ上書きする一般相対性理論でカタを付けております。
さて、そんな中で日本人、湯川秀樹が登場するってなにげにスゴイことでございます。4つの力はすべて重要です。「強い力」がないと原子核はバラバラになり「弱い力」がないと太陽が熱を発生させる核反応がおこらないのです。
日常生活では、宇宙を支配する4つの力のうち、重力と電磁気力しか目につかないわけですが、もう2つあり、そのうち1つ「強い力」は日本人湯川秀樹が関わっているということは、ぜひぜひ頭の片隅にでもおいておいてほしい事実なのでございます。

