6月中旬。北海道や沖縄を除き、日本の大部分では梅雨です。延々と天気が悪く、カビが元気になり、日照が恋しいこの時期。世界的にはどうなんでしょうか。北極とかにはなさそうだけど、ヨーロッパとかアメリカではどうなんでしょー? ふと疑問に思ったので、そこに梅雨はあるんか? を調べてみた話です。

梅雨。体感7:3で不人気なシーズンですな。気象庁によると「晩春から夏にかけて雨や曇りの日が多く現れる現象、またはその期間」とあります。えー、雲画像をアニメで再生する動画があるんですが、他の時期とはリズミカルに雲-晴れ-雲-晴れと入れ替わるのに6月頃だけ雲がベターっとどんどん発生している様子がわかりますな。

ちなみに梅雨の定義、雨が多いとかだと台風一発で負けますし、晴れないということだと冬の日本海側も相当なものですが「晩春から夏にかけて雨や曇りの日が多く現れる現象、またはその期間」ですか。ああ、なんとも練られた表現ですな。一説では東大理学部より入るのが難しいといわれる気象大出身の英才が集う国家機関なだけのことはあります。あ、気象大学8月に毎年オープンキャンパスあるんですな。これはチェックやな。

おっと、さておき、梅雨(つゆ)でございます。今年2021年は西日本の梅雨入りが異常に早く、大阪やら広島やら福岡やらの知り合いは「かなわんですわー」と申しておりましたな。

で、この梅雨ですが、なーんで起こるかというと、冬から夏へ、季節が変わる途中で、北のオホーツク海から吹き出す冷たい空気が、南の太平洋の暖かく湿った空気とぶつかり、そのせめぎ合いの前線が日本列島のあたりに東西に停滞するからでございます。

外の空気で冷やされた窓に暖かく湿った息を吹きかけると、とたんに結露します。つまりこの窓=前線なのでして、結露=雨ということになるわけですな。

で、前線なんてそれはいつでもできるのですが、それが長期にわたって日本列島のあたりに停滞しちゃうところが梅雨のヤーなところです。他の季節だと、リズミカルに変化するのがベターっとなるのは、北の冷たいオホーツク海の高気圧が安定して空気を送り込んでくるからでございます。こいつが強まると梅雨になり、弱まると梅雨明けとなるわけですな。

さて、この北の高気圧が強いのは、日本上空を吹く偏西風の影響です。偏西風は地球の自転によって引き起こされる風で、北極でもなく赤道でもなく、日本のような中緯度で強くなります。こいつのせいでハワイ行きの飛行機が遅くなったり早くなったりする話をえーっと、この連載の第67回でしていますな。ただ、一方向に吹く風なら西から東に高気圧や低気圧が移動していくわけで、実際いつもはそうです。ただ梅雨時だけ違うのは、偏西風が2本にわかれ、オホーツク海のあたりで合流する時期だからなのですな。

じゃあなんで偏西風が2本にわかれるかというと、風上にあるヒマラヤやチベット高原のためです。高さ4000m以上のこの地球のこぶが偏西風をわけ、それが山がなくなるあたりで合流。ダブルで風が吹きつけるために高気圧となり、風が送り出される。その風の合流点が日本列島の北ということなのでございます。ざっくり絵をかくとこんな感じ。

  • 2つに分かれた偏西風

さて、ということで南に海。北にヒマラヤのせいでつくられる偏西風の合流点ができるので梅雨ができるのですが、あのー、ヒマラヤって世界一なわけです。それが西側にある中緯度なんて場所、日本付近しか世界にないのでございます。

ということで、海外では「晩春から夏にかけて雨や曇りの日が多く現れる現象、またはその期間」は基本ないのです。

ただ、ちょっと近いのがアメリカの東海岸からイギリスですね。ヒマラヤにあたる大山脈はないですが北が大陸、南が海で海には温かいメキシコからの海流がある。大西洋上にえんえんと雲が出ている時期がありますな。ちなみにイギリスだとひたすら霧が多くなり、霧の都とかいわれるわけです。

世界の雲の流れを1年分見られる米国ウィスコンシン大学のサイトがあります。ちょっと読み込みに時間はかかりますが、おもしろいですよー。

赤道では年がら年中雲がわいていますが、どんどん消えています。ベターっと雲がいるのは梅雨時の日本付近くらいなのでございます。

いやー、世界唯一、日本スゲー……と思える幸せな人でいたいものです。そのうち夏が来ますから。