太陽の未来は暗いです。太陽は将来、輝かなくなることがわかっています。しかも現在の100万分の1くらいまで縮みます。これは冗談ではありません。太陽は「死」にむかって進んでいるのです…とはいっても、これはざっと70億年後の話です。もちろん、死ぬ間際には劇的な変化があるのですが、それも最後の1億年くらいのことです。でも、小さな変動は常にあります。人類はそれでも結構影響を受けます。そんな気になる太陽の未来の話をいたしますね。

太陽は、とっても安定した天体です。年中一定のパワーで光と熱を出し続けていて、その変化は0.1%しかありません。実際、20世紀も後半になって人工衛星を使って測定するまで、太陽の明るさが変化しているかどうかわからなかったくらいです。

0.1%の変化はほぼ11年の周期があることがわかっています。この11年周期で、太陽の表面のシミ、黒点が増えたり減ったりしています。ちなみに、今は黒点が最も多い時期になっています。そして0.1%太陽は明るいのです。そう、シミが増えるのに明るいんですねー。

まあ、これは順番が逆です。太陽にシミ=黒点ができるのは、太陽の中からのエネルギーのわきだしが効率よくなるからです。青春のニキビみたいなもんですな。なので黒点そのものは、たしかにまわりより暗いのですが、それをおぎなってあまりある光が黒点の周囲からでています。ただ、それでも太陽全体となると0.1%の変化におさまっているんですねー。

ところで、この11年周期、最近ちょっと変調をきたしています。前回の最盛期は実は13年前で、11年周期が明らかに崩れました。また、黒点の数や大きさなどを評価しても、いまいちぱっとしない。つまりニキビがあんまりでない。ということで、全般に太陽の活動が、まあ、0.1%以内の話ですが、弱まっているんじゃないのー。という話になっております。

で、そんなことあるのか? ということなんですが、あったんですね。300年くらい前、日本だと江戸時代の前半がそうで、黒点の数が少なく、しかも太陽の片方の半球に集中するってなことが起こったのです。「マウンダ―極小期」といわれているので、ググっていただくとええんですけれど、ロンドンでは河川が凍りつき、日本では雨が多い異常気象が続いたとされております。火山の噴火などのダブルパンチで、飢饉が起きたともされていますが、何が主な原因かはまだ研究が必要なんですって。

こうした「極小期」は過去8000年に18回あったとされています。これは太陽のパワーが落ちると、宇宙放射線の量も変化し、それに影響される自然の放射性物質の過去の生成率を調べればわかるんです。まあ、長生きしている樹木の被ばく具合を、年輪から調べるのですね。

じゃあ、未来はどうなるの? というと、これがなんとも言えないのでございます。とりあえず、極小期と極小期の区間は、何年周期っていいにくいんですね。平均からすると、今はまだ極小期まで期間があるはずなんですけれど、最近の太陽の様子を見ていると、安心もできない。とこんな話になっています。とりあえず、ここ80年ばかりは太陽がかなり元気な時期だったのはわかっていて、それが並みの状態にもどるだけでも影響があるんじゃないの? と研究者たちは言っているわけです。

もうちょっといえば、1万年とか2万年とかいう期間だと、地球に氷河期があった時期になるんですね。ただ、この氷河期は太陽そのものの明るさの変化というより、雪が積もると太陽光を反射して、さらに温度が下がる…というようなフィードバックで起こるんじゃないかといわれているようでございます。預金利子に利子がついて、いつのまにか大儲け(大損?)みたいなもんですな。

ところで、太陽は70億年後に輝かなくなると最初に書いたんですが、それまでにもいろいろあることがわかっています。まあ、全般的には安定しているんですが、太陽はジワジワと明るくなっているのでございます。

太陽は誕生から46億年たっていると、太陽と同時に誕生した月や地球、隕石の岩石の研究からわかっています。その間に、理論上は3割くらい明るくなってきているのですね。46億年かけて3割ですから、100年や200年では関知できないような超のんびりペースです。でも、このペースでいくと10億年もたつと、地球の海は蒸発して、とてもではないけれども人類は地球に住めなくなってしまいます。まあ、そのあたりは色々な計算があって、25億年後だとか6.5億年後だとかいろいろあるんですけれども、太陽がすごくのんびりだけど、ジワジワ明るく、熱くなっているというのはまちがいないんですね。

そして50億年たつと、そのペースがギュインとあがります。その後の10億年で明るさは10倍にもなるんですね。50億年に3割が、10億年で100割ですな。これは、反応エンジンの燃料が枯渇した水素からヘリウムに切り替わるためです。そして、太陽は膨大なエネルギーの放射にバランスするために大きくふくれあがり、赤っぽい巨大な星になります。そして、地球はそれによって焼き尽くされ、蒸発してしまいます。まあ、50億年とか60億年といった遠い未来の話です。

そしてさらに巨大になっていくと、膨らむペースが強すぎて、太陽は宇宙空間にビュービューと自分の身体を吹き出すようになります。ついには、中心のエンジン部分だけ残る感じになりますが、反応燃料がなくなると、どんどん縮みます。そして、それ以上縮めなくなったところで、白色矮星(はくしょくわいせい)という種類の星になります。大きさは現在の太陽の100万分の1。重さは6割ということで、カッチカチに詰まった星になるんですな。これがざっくり70億年後のことです。その後は、さらに冷えて、太陽は暗く見えない星になっていきます。 あ、あのー、太陽は爆発しませんよ。爆発するのは、太陽の8倍以上の重さがある星で、反応が猛烈にすすんで、突然止まるという、全力疾走急停止型の大型の星のみです。そんな星はめったにないんですけれど、有名なところでは、オリオン座のベテルギウスと、さそり座のアンタレスって星があります。でも、宇宙にある星のほとんどは、太陽のようなショボンとした最後を迎えるんですねー。

このほかにも、数十万年とか数千万年に1回くらい、太陽から猛烈な放射線が放出される「スーパーフレア」が起こるなんていうこともあるとされています。ただ、これはどういうときに起きるのか、そもそも起きうるのか、まだ議論が分かれているようですね。ただ、太陽と同じような星では、そうした観測がされているので、もしかしたらあるのかもしれません。そうしたことによって、古代の生物大量絶滅がおこったのかもしれない、なんて学説もあります。

実際に、そんなことに遭遇したら、ただではすみませんけど、遠い未来とか過去だと、これがロマンっぽく感じるのがサイエンスの不思議なところでございますね。

2002年に撮影された太陽。 (C)Science@NASA

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。