データソリューション統合に伴うコストを負担するのは誰?

突然ですが、皆さんに質問があります。データの利活⽤において、データソリューションの統合に伴うコスト(ここでは「インテグレーションタックス」と呼びます)を負担しているのは、いったい誰でしょうか?

インテグレーションタックスとは、各種データソリューションを統合するためにかかる、「隠れたコスト」のことです。統合は、本質的に異なるソースからのデータを多様なニーズに合わせて処理するために行われます。組織で生成されるデータの量は増加の一途をたどっていますが、多くの組織はデータストリーミングからデータエンジニアリング、機械学習といった機能すべてを最大限利用しようとして、機能が限定された単一目的のソリューションを複数併用する状態に陥っています。

また、データから洞察や価値を引き出すには、ライフサイクル全体にわたりデータを効果的に管理する必要もあります。ライフサイクルの各ステージの呼び名はそれぞれ異なるかもしれませんが、決め手となるのは、すべてのデータの収集、加工、レポーティング、提供、モデリングをする能力です。

単一目的のソリューションは、特定のデータ処理に対してはきわめて有効で、価値を得るための早道になり得るかもしれません。しかし、後々「インテグレーションタックス」を負担しなければならない可能性に注意する必要があります。トータルの投資利益率(ROI)を予測する際は、インテグレーションタックスを計算に入れるべきです。機能が限定された単一目的のソリューションをすべて統合することは複雑な作業となり、多くの時間とコストがかかる場合があります。

Cloudera米国本社の製品マーケティング担当ディレクターであるウィム・ストゥープ(Wim Stoop)は、インテグレーションタックスについてこう語っています。

「インテグレーションタックスはさまざまな姿で現れます。例えば、統合プロセスを管理するために必要な高スキル人材の採用にかかるコスト、統合前のデータ加工に要する時間と労力、さらに統合テクノロジーの導入と保守にかかるコストなどです」

データ統合には、リスクという別の要素も考慮すべきです。もし、データ統合についてあらゆる領域にわたる高度な専門知識がなければ、セキュリティやガバナンス、コンプライアンスが損なわれるリスクを負うことになるからです。

これは、いい加減な税金の申告をしていると税務署が調査にやってくるようなものです。とりわけ金融業界、医療業界、公共セクターで事業をしていれば、より高いレベルのコンプライアンスが求められます。そのため、単一目的のソリューションを寄せ集めて済まそうという企ては、ますますリスクの高い行為となります。

インテグレーションタックスを減らす取り組み

では、インテグレーションタックスを減らすことはできるのでしょうか?

その方法として、まず挙げられるのは、データ統合プロセスをアウトソーシングすることです。これにより、統合プロセスの管理にかかる時間と労力を減らせると同時に、さまざまなソースのデータを統合することに経験のあるプロフェッショナルにアクセスできます。しかし、この方法にはそれなりの代価が必要になります。

単一目的のソリューションが積み重なってできたスタックを小さくすることも選択肢の一つです。単一目的のソリューションの併用を止め、あらゆる目的に対応できるソリューションに一本化すれば、インテグレーションタックスを払う必要がなくなり、セキュリティレイヤーは安全基準を満たした状態で確保されます。

この場合、統合のために特別な作業を必要としない、あらかじめ準備が整っているエンド・ツー・エンドのプラットフォームを選んでください。そうすれば、コストを大幅に削減するとともにリスクを低減して、データの価値を速やかに促進することに集中できるようになります。

その他、体制面で行える別のアプローチもあります。データの扱い方を各チームがばらばらに判断している状態を解消し、自社全体のあらゆるチームのニーズを捉えた一元的なデータ戦略を策定しましょう。

データの形式や構造に関する基準を組織全体で共有し、強力なガバナンスを確立してください。それにより、データのマッピングや変換にかかる時間と労力を削減できるほか、統合後のデータの一貫性と品質を向上することもできます。

このような先を見越した積極的なアプローチでガバナンスを計画すれば、社内のあらゆるデータを把握できるようになり、コンプライアンスに準拠した安全な形でデータを利用できるようになります。

著者プロフィール

大澤 毅(おおさわ たけし) Cloudera株式会社 社長執行役員


IT業界を中心に大手独立系メーカー、大手SIer、外資系 IT企業のマネジメントや数々の新規事業の立ち上げに携わり、20年以上の豊富な経験と実績を持つ。Cloudera入社以前は、SAPジャパン株式会社 SAP Fieldglass事業本部長として、製品のローカル化、事業開発、マーケティング、営業、パートナー戦略、コンサルティング、サポートなど数多くのマネジメントを担当。2020年10月にCloudera株式会社の社長執行役員に就任。