コンピュータビジョン分野で活躍中の企業、フリーランサーへのインタビュー記事 第一弾です! 今回は東京都目黒区に本拠を置くQoncept(以下、コンセプト)という会社に伺いました。Webサービスや、スマートフォンアプリを主に開発している会社ではないため、コンセプトという社名を日常生活であまり目にすることはありませんが、テレビの生放送におけるCG合成技術や、スポーツ映像解析、ゲームや教育向けのAR技術など魅力的な事業を展開している会社です。"研究レベルの技術を、実用レベルにする"を目標に開発を進めているそうです。

CEO・CTO プロフィール

左: CEO 森川氏、右: CTO 林氏

CEO 森川和正氏
コンセプト代表取締役社長。08年にコンセプト創業。コンセプト創業前はみんなの株式を運営するみんかぶ創業、電通にて事業開発に従事。

CTO 林建一氏
2009年、大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了。現在、コンセプト取締役 CTOとしてAR技術、画像トラッキング技術の研究開発に従事。

企業のビジョンを教えてください

「最新技術で人の生活を豊かに」です。

コア技術は何ですか?

コンセプトのコア技術は、Visual Odometry(カメラの位置・姿勢推定)とトラッキング技術です。動いているカメラで撮影した映像に文字やCGを重畳表示するためには、動画像から逐次的にカメラの位置姿勢を求めるVisual Odometry技術が重要です(動画1、2)。また、人の位置に合わせて文字やCGなどを重畳表示するためには、人を追跡する技術が必須となります(動画3、4)。これらの技術は、ドローンの自動操縦などさまざまな製品・サービスに応用できるため、今後も開発を進めていく予定です。

<動画1: Visual Odometry>

<動画2: Visual Odometry>

<動画3: トラッキング技術>

<動画4: トラッキング技術>

主要な事業を教えてください

コンセプトでは、既存のビジネス+テクノロジーをテーマに開発を進めています。最近では、スポーツ+テクノロジーの事例として世界陸上100mの位置/速度計測(図1:選手をトラッキングし足元に線を描画)、福岡国際マラソンでのCG合成などを手掛けました(動画5)。またこの分野については特に2020年の東京オリンピックに向けて多くのプロジェクトが同時に進行しています。教育+テクノロジーの例としては,教科書向けのAR技術の開発などがあります(動画6)。

図1 スポーツ+テクノロジー(位置、速度計測)

<動画5: スポーツ + テクノロジーの例>

<動画6: 教材+テクノロジー(AR)の例>

将来的にコンピュータビジョンはどうなると思いますか

人間の目や脳の機能に近づけるべく発展していく素直なコンピュータビジョン技術の進化のほかに、より感性的な、たとえば芸術分野などへ応用されて、人間の創造性を超えた絵画作品、映像作品を生み出す技術なども一方で出てくるのではないかと思っています。

* * *

コンセプトでは、今後もBtoBビジネスを中心に、最新テクノロジーの実用化を進めていくそうです。コンピュータビジョンは、Webサービス、スマートフォンアプリだけでなく、テレビ映像から教育まで幅広くビジネスチャンスがあります。ぜひ、コンピュータビジョン分野に足を踏み入れてみてください!

インタビュー記事 第二弾では、コンピュータビジョン分野のフリーランサーの方にインタビューする予定です。

著者プロフィール

樋口未来(ひぐち・みらい)
日立製作所 日立研究所に入社後、自動車向けステレオカメラ、監視カメラの研究開発に従事。2011年から1年間、米国カーネギーメロン大学にて客員研究員としてカメラキャリブレーション技術の研究に携わる。

現在は、日立製作所を退職し、東京大学大学院博士課程に在学中。一人称視点映像(First-person vision, Egocentric vision)の解析に関する研究を行っている。具体的には、頭部に装着したカメラで撮影した一人称視点映像を用いて、人と人のインタラクション時の非言語コミュニケーション(うなずき等)を観測し、機械学習の枠組みでカメラ装着者がどのような人物かを推定する技術の研究に取り組んでいる。また、大学院での研究の傍ら、フリーランスとしてコンピュータビジョン技術の研究開発に従事している。

専門:コンピュータビジョン、機械学習