ガートナージャパンは10月31日~11月2日、「Gartner IT Symposium/Xpo 2022」を開催した。それに伴うかたちで10月31日に実施されたプレス向け説明会では、同社アナリストでバイスプレジデントの池田武史氏が登壇。「戦略的テクノロジのトップ・トレンド」と題して、2023年に企業や組織にとってインパクトを持つであろうトレンドを紹介した。
3つの中心テーマ - 最適化(Optimize)、拡張(Scale)、開拓(Pioneer)
池田氏は冒頭、2022年は世界的に経済や社会の混乱が続いたことを挙げ、経営層は引き続き、節約(コストマネジメント)、成長、変革にフォーカスをすべきだと説明した。その上で、変化に対応し、組織を強化するためには、「デジタルトランスフォーメーションを加速させながら、新たな形態のオペレーショナル・エクセレンスを模索しなければならない」と強調する。
そのような視点から、ガートナーの2023年の戦略的テクノロジーのトップ・トレンドにおける中心テーマには「最適化(Optimize)」「拡張(Scale)」「開拓(Pioneer)」が据えられた。各テーマにおけるトレンドとしては、以下が挙げられている。
最適化(Optimize)
そしてこれらを下支えするかたちであるのが「持続可能なテクノロジー」だ。池田氏は、「新しいテクノロジーを今の目的のためだけにデリバリするだけでは十分とは言えない」と説く。
「今後企業は、『サステナビリティ・バイ・デフォルト』を目指す必要性が増しており、その際には『持続可能なテクノロジー』が必須になります」(池田氏)
以降では、池田氏がこれら3つのテーマの各トレンドと持続可能なテクノロジーについて解説した内容を見ていこう。
最適化の3つのトレンド
「デジタル免疫システム」とは、オブザーバビリティ(可観測性)、AI拡張型テスト、自動修復、カオス・エンジニアリング、サイト・リライアビリティ・エンジニアリング(SRE)、アプリのサプライチェーン・セキュリティを組み合わせ、システムのレジリエンスを最適化するものだと言う。
池田氏は、現在、デジタルプロダクトを担当するチームの多くが売上創出の責任も担っていることを例に挙げ、CIOはリスクを軽減しつつ、高いビジネス価値を提供するためのプラクティスやアプローチを模索しており、その取り組みを後押しするのがデジタル免疫システムであると解説。ガートナーでは、2025年までにデジタル免疫システムに投資する組織ではダウンタイムを最大80%削減でき、直接的に売り上げを拡大させるという仮説を立てている。
また、「オブザーバビリティの応用」とは、ソフトウエア・エンジニアリングで注目されているオブザーバビリティ(可観測性)をビジネスの最適化に応用することを指す。
「オブザーバビリティの応用によって、企業は、ユーザーの行動データに基づき、適切なタイミングで適切なデータの戦略的重要性を高め、迅速な行動につなげることができるようになります。これらを戦略的に用いることで、企業は、競争優位を獲得できます。すなわち、これは、企業にとって、データ・ドリブンな意思決定の最も強力な源泉となります」(池田氏)
さらに、「AI TRiSM(AI Trust,Risk and Security Management: AIの信頼性/リスク/セキュリティ管理) 」について、池田氏はまずドイツで実施したガートナーの調査結果を示した。それによると、AIのプライバシー侵害やセキュリティインシデントを経験したことのある組織は41%に上るそうだ。しかし、多くの組織ではAIのリスクに対し十分な管理ができているとは言い難い。同氏は「これからの企業は、AI TRiSMの観点で、AIの確実性、信頼性、セキュリティ、データ保護といった新しい能力を獲得する必要がある」と提言した。